第22話 見つけてしまった……、
夜中に突然、真冬の眼は醒めた。
真っ暗な部屋の中で、体を起こす。
「ハァ……どうして……」
ケガをした頬に手を当て、考え込む。
「新しい、敵。か……」
今日戦ったグンジョウは強かった。臭いと言い続けたら何とか助かったが。
夏美のとっさの作戦が思ったより効果的で、グンジョウはやる気をなくして撤退していったが、またあんな冗談のような手が通じるわけがない。
「フフ……」
あの時の夏美の本当に臭そうな顔は面白かった。思いだすだけで笑みがこぼれる。
「まぁ、あの時本当に臭かったものなぁ、タバコ臭くもあったし、あの人相当オヤジよ……でも、エンシェントステッキが使えないと、次は本当にやられちゃうかもしれない」
フェアリージュエルを手に取る。
あの時は妖精の力が不調だっただけで今は出るかもしれないと、真冬はエンシェントステッキを呼びだそうと宝石を握る手に力を込めた。
「エンシェントステッキ!」
やはり出ない。
残念そうに手を見つめるが、その瞬間、フェアリージュエルが輝きだした。
一条の光のラインが壁に向かって伸びる。
初めての現象に真冬は目を丸くする。
「ラピュタでもあるのかな……」
布団から抜け、部屋を出る。
壁の先にあるのは確か父の部屋だが、恐らくその先をさしているのだろう。
「ほうほう、それで何で君の国は、帝国になったんだい?」
「元々は王国だったんだけど、ミケラン国と戦っているときに神の帝って書いてシンテイってよむ現人神が現れてね。その人のもとで自由に平等に暮らしていきましょうってなったのさ」
リビングの方から話声が聞こえる。
「え……?」
声は二つとも真冬にとって聞き馴染みのある声だった。
だが、その二人が会話をしているはずがない。会っていいはずがない二人が会話していた。
階段を降りて、そっとリビングを覗き込む。
「その話あまり外にはしないでくれよ。妖精の国が戦争してるなんて、夢が壊れるってもんじゃない」
「外ではしないよぉ……おっさんに聞かれたから、しただけだよ」
エプロンを付けて家事をしながら、空を飛ぶイルカと話している父の姿があった。
「どうして……?」
湊には見つからないようにネオは隠していたはずなのに、どうしてあんなに親し気に話しているのだろうか。
「おっさんじゃない、湊さんと呼びなさい。仮も僕は君の相棒なのだから」
「本当に仮だけどね。僕が魔法少女の仲間と認めているのは、真冬と夏美だけなんだから」
「…………???」
真冬の頭に疑問符がいくつも浮かぶ。
あの二人の関係性がさっぱりわからない。そしてどうして相棒と呼ぶのかが分からない。
「見なかったことにしよう」
いろいろ面倒臭くなってそっと扉を閉じた。
気を取り直して光が指し示す場所へ向かう。
二階に上がり、廊下を歩くと、やはり光は父の部屋を指し示していた。
てっきり外だと思ったが、部屋の前を通り過ぎると光のラインが湊の部屋に絡み盗られるように指し示していた。
「お父さんの部屋? ネオちゃんが話していたことと関係あるのかしら」
部屋の扉を開けて中へ入る。
「!」
部屋に入った途端なんともいない気分になる。
不快なような懐かしいような臭い。
「これが、これが加齢臭」
顔をしかめつつ、光が差す場所、押し入れへ向かう。
そっと開けてみる。
「……あった」
父の押し入れに、エンシェントステッキがあった。
そして真ん中からパッキリ折られていた。
「…………」
折れたエンシェントステッキを握りしめながら、コキッと真冬の首が真横に倒れた。
死んだ目をしながら。
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