第2話
ジローは小さく生まれました。
タローの時の出産が特殊で、二人目の出産はリスクが高いからということで、少し早めに産休に入らせてもらった。
そして、産休に入る直前の受診で、血圧が高くなってきてるから気を付けて、と主治医に言われ、家でも血圧を測るように指示されていた。
「血圧、上がったら入院ね。すぐ来て。」
その次の日から産休に入り、血圧を測ってみたらなんか病院で測ったのより少し高い。
「妊娠高血圧症候群、本当に怖いからね。軽く見てたらダメだよ。」
主治医の言葉が頭をよぎる。
「妊娠高血圧症候群は、脳出血起こしたり、最悪の場合もあるからね。お母さんも赤ちゃんも助からないっていうことは、医療が発達した現在でも、昔と変わらないからね。」
なんだけど…タローがいるし…こんな急に入院て言われたら困る。
安静にして、明日また測ってみてから病院に行こう、と思いながら夕食を食べる。
その時、お腹になんかピキッて感触があった。
え…なんか、ヤバい?
いや、気のせいかな?
ちょっと変な感触だったけど、血圧は145くらいだし、なんか体がベタベタして気持ち悪かったので、恐る恐る、でも急いでシャワーを浴びた。
そしてまた血圧を測る。
『175』
マジかー
なんか、やっぱりまずい事になってる予感がして、病院に電話したら、「すぐに来て」と言われた。
時間は夜の9時を過ぎていた。
たまたまダンナが休みの日で家にいたので、ダンナに車で送ってもらうことにした。
入院覚悟で、すでに寝ていたタローを起こして、急いで準備してから3人で病院に行く。
車で30分かかる所に病院がある。
家を出る頃から雪がいっぱい降り出して、みるみる間に積もっていく。
「こんな日に雪めっちゃ降るなんてね。あーあ、入院かぁ。出産までにランチとか行きたかったなぁ。」
とか言いながら、病院へ向かう。
病院に着いたのが10時半頃。
土曜日で職員の数が少なかったからか、
「もっと早く来てほしかった。」と看護師さんに言われる。
ですよね、と恐縮してたら当直の先生が来てくれた。
診察に入るので、ダンナとタローには待合室にいてもらった。
まずは血圧測定。
上は思ったより高くなく、140程度だった。
なんだ、これなら家で様子を見てても良かったかな?と思ったら、
「あー、高いね。」と看護師さんが言う。
「え?でも家で測った時より低いですよ。」
「上はそうでもないんだけど、下が90越えてるから、だいぶ高いよ。」
へー、今まで血圧って上だけ気にしてたけど、下の数値も関係あるんだ。
「これは、やっぱり入院だね。今は夜中で他の人の迷惑になるから、個室になるよ。」
と、先生。
やっぱりかー。
次に診察のベットに横になり、エコーで赤ちゃんの様子を見てもらう。
「んー、赤ちゃんは今のところ大丈夫そうかなー。何か気になることある?」
「そういえば、なんとなく赤ちゃんがあんまり動いてないような気がします。」
実は今日は赤ちゃんの動きも少ない気がしてて、それも気になっていた。
「じゃあ、もうちょっと見てみようか。」
割と時間をかけてエコーをしてもらってたけど、そのうち胸が苦しくなってきた。
パット付きの肌着を着ていたが、胸の部分のゴムがすごくキツく感じた。
ちょっとゴムを違うところにしようとずらしたら、余計に苦しくなってきて、横になることができなくなってきた。
先生に許可をもらって座った状態でエコーで見てもらったけど、それもキツくて胃痛もしてきた。
「先生、なんかキツい。」
もう一度血圧を測る。
ピーッとエラーが出る。
もう一度測るがまたエラー。何回かやって、やっと数値が出たら、どうやら上が200を越えていたようだ。
ピーッとエラーが出たのは、測定器の数値を振り切ってたのかもしれないと思った。
それから周りがバタバタと慌て出した。
「赤ちゃん、今エコーで見てる間、やっぱりちょっと元気がないみたい。それと母体が危険な状態になってきたので、今から全身麻酔の帝王切開で赤ちゃんを出します。」
今まだ8ヶ月。
タローの時も帝王切開だったし、今回もその予定だったので、手術への抵抗はあまりない。
ただ、こんなに早く出産になるとは…。
それからあっという間に手術室へ移動し、あっという間に出産となった。
私はあっという間という感覚だったが、出産時刻は夜中の1時を過ぎていた。
意外に全体的に時間がかかってたんだとびっくりした。
予定より1ヶ月半早く生まれたジローは、体重が1600gの小さな小さな赤ちゃんだった。
1600gって、1.5Lのペットボトルを想像すると、結構大きい?って思うけど、実際は片手すっぽりサイズで本当に小さい。
タローは、連れて帰ってもらえる人もおらず、ダンナは病院で待機しなきゃいけなくて、眠たかっただろうけど、ただならぬ雰囲気を感じていたのか、ずっと起きて待っててくれたそうだ。
ガラガラと保育器に入った赤ちゃんが運ばれてくるのを見て、
「ちっちゃーい。」と一言。
私は全身麻酔だったので、出産直後のジローは見れなかったけど、タローが見てくれて良かったなと思った。
そして2・3日後には、羊水で浮腫んでた水分が抜けて、1500gを切るくらいまで体重が落ちた。
すごく心配になるくらいの小ささだったけど、NICUのスタッフの皆様のおかげで、1ヶ月半後に無事退院することができた。
退院時のジローの体重は2500g。
よくぞここまで大きくなったと感慨深いものがあった。
本当に、本当に、病院の皆様には感謝です!
それでもやっと、今生まれましたっていうくらいの大きさだ。
私は、搾乳した母乳を持ってほぼ毎日病院に行ってはいたけど、1ヶ月半一緒に過ごしてあげられなかった分も、これから目いっぱい頑張って育てていこうと決意した。
ちなみに、この出産の診断名は、重度妊娠高血圧症候群と常位胎盤早期剥離と書いてあった。夕食の時のピキッとした感触はこれだったのだと思う。
補足:私の場合、常位胎盤早期剥離は、一部だけで、進行性のものではなかったとのことでした。これが進行していたら、もっと危険だったようです。
余談ではあるけど、帝王切開の場合、普通分娩に比べてかかる費用は少ないはずなんだけど、今回のこの出産費用は助成金の金額をオーバーしていた。
ジローの出産後の入院費用は、市の助成金が別にあったはずなので、出産が日曜日に変わった夜中だったから加算額が大きかったのかな?
費用の方も予定外で、お腹の傷と懐が痛みました。
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