子供が寝ナイト
ニ光 美徳
第1話
子供が一人で寝てくれたら、やりたいことがいっぱいある。
録画したドラマを見る。
お菓子を食べる。
お肌の手入れをする。
手付かずの部屋を片付ける。
テレビゲームや携帯ゲームをする。
友達とSNSでつながる。
夫婦だけの時間を楽しむ。
上の子タロー3歳、下の子ジロー0歳。
上の子の時は全てが初めてだから、とにかく必死で、抜け殻になってしまうくらい大変だったけど、二人目が産まれる頃にはすっかり記憶が飛んでってしまって、ほとんどその頃のことを憶えていない。
あれー?こんなだっけ?
どうだっけ?
これでよかったかな?
3歳になったばかりのタローに聞いてみる。
「???」
ホヨヨ?って顔をして、首を傾げる仕草が可愛らしい。
3歳の子に赤ちゃんの事を聞いても分かるハズがない。
ダンナは仕事で昼過ぎに出かけ、真夜中に帰宅する。
ご飯を食べてシャワーを浴びて、それから寝て、朝は9時過ぎに起きる。
起きてからまた出勤するまでの4時間程度、夫婦で顔を合わせる貴重な時間だ。
この4時間でやりたい事は、買い物と夕食の準備、それとタローとジローの近況報告。
自慢じゃないけど、私は手際が悪い。要領が悪いとも言う。
何をするにも人より時間がかかる。
買い物も長いとよく怒られる。
4時間なんてあっという間だ。
買い物に出てる間のジローの子守と、部屋の片付けと掃除機がけと、洗濯はダンナがしてくれるので、随分助かってる。
ただ、タローが幼稚園から帰ってきたら、一瞬で部屋はおもちゃだらけになるけどね。
ダンナとの役割分担は、タローの時に確立してきたので、そんなに大変だとは感じない。
大変なのは…
ジローの寝かしつけ。
まあ、寝ない。
泣く。
泣き声も大きいんだよね。
そして、タローの時には無かった、背中スイッチというものを持っていらっしゃる。
最初の頃は無かったんだけど、いつの頃からか出現してきた。
これはなかなか厄介だ。
でもね、私だって伊達にタローを3歳にしたわけじゃあない。
少しだけど、テクニックは持ってるよ。
3人でお風呂に入って、寝る準備をして電気を消す。
私はズボラなので、タローの寝かしつけは2歳を過ぎた頃から優しい子守唄を歌うか、背中トントンくらいしかしなかった。そのうちそれもやめて、ただひたすら寝付くのを待った。
何もしないでただ横にいるだけの添い寝だと、最初はなかなか寝なくて、2時間くらいモゾモゾして、広くもない部屋の行けるところは全部ゴロゴロしていた。
でも、だんだん寝付くまでの時間が短くなってきて、今では上手に寝るようになった。
幼稚園でいっぱい遊んでるからかもしれない。
二人目が生まれた時、何もしない寝かしつけをしていて良かったと思った。
ネットで見かけたけど、それは“ネントレ”の類らしい。
ネントレとは、ねんねトレーニングの略で、自分で寝る力をつけることとのこと。泣いても様子を見ながら何もしないでいると、最初は時間がかかるけど、だんだん自分の力で眠れるようになるらしい。
ただ、集合住宅など住宅事情により、“泣いてもただ見守る”のやり方を、すべての人ができるわけではない。
泣かせっぱなしはご近所迷惑だと思うママの方が多いだろう。
タローが2歳の頃始めたので、寝入りで泣くことがなかったからネントレができたのだ。
生まれたてのジローはもちろんネントレなんてできない。
ジローがもう少し大きくなるまで、タローには申し訳ないが、一人でネンネしてもらう。
隣の部屋の扉を開けて、繋がってはいるが別の部屋で、寂しそうな様子で寝ていく様子は胸が痛くなるが、感傷に浸る余裕はない。
私はジローを横抱き、言い換えるとお姫様抱っこのような感じで、私の腕で首と頭をしっかり固定して、ただひたすらスクワットをする。
スクワットの揺れが好きみたいで、その間は泣き止んでくれる。
30分が平均時間だが、1時間やっても寝ない時もある。
スクワットを止めると泣く。
だから、だだひたすら、黙々とスクワットをする。
でもやっぱり泣き出す時もあるので、その時はユサユサと揺らす動作も加える。
もちろん頭は揺れないように、下半身を揺らす。
心に余裕がある時は、産後のトレーニングだ!と気合いも入って体も軽い。
でも、メンタルが落ち込んでる日は、ジローと一緒に泣きたくなる。
心に余裕がある時は、泣いてるジローに「寝れないのー?、寝るのは怖くないよ、頑張れー。ネンネは気持ちがいいんだよー。」とか、優しい言葉をかけたりする。
寝る瞬間の感覚が怖いらしいとネットで見かけたから。本当かどうかは分からないけど、何かが嫌だから泣くのだろう。だから、励ますような言葉なんかかけてみる。
メンタルが落ち込んでる時は、「“寝れない”って泣いていないで、寝ればいいじゃん!」と心の中で強く思う。
まあ、思うだけ。
それからもう一つ。
やっぱり泣き声は辛い。
ジローの場合、昼でも起きてる間中、フメフメと泣くのです。
タローもすごく泣いたけど、ここまで泣いたかな?っていうくらい泣く。
授乳をしても、オムツを替えても、体温と空調を確認しても、抱っこをしても、ユラユラしても、全く歯がたたない日もある。
我が子であっても、ずっと大きい声で耳元で泣かれると、心がザワザワして辛い。
特に夜は、自分+タローの睡眠妨害+近所迷惑と、いろいろな要素があるので、本当、泣かないでもらいたい。
でもね、「赤ちゃんは、泣くのが仕事!」とよく言われる。
子育て一段落したような先輩ママは、それしか言いようがないのか、誰と話してもその言葉を言ってくる。
ええ、分かってますよ。
赤ちゃんは泣くしかないことくらい、承知してますよ。
赤ちゃんは泣くのが仕事、その通り。
でもね、その決まり文句に
「大変だね。」
と、一言頂けないでしょうか?
嘘でも、ほんの少しでも、共感してください。
ちょっと弱音を吐きたい時に、上から目線で“当然でしょ”みたいな顔して言わないでほしい…。
と思いながら、私も「だよねー。」と、いつも同じ言葉を返して、その話は終了する。
そして、“言うんじゃなかった…”と後悔し、悶々としながら家に帰る。
私だって、共感されないと分かっていて、「泣くんだー、寝ないんだー」って話、しなきゃいいのに、と思う。でも、ついポロッと心の声が出てしまうんだ(泣)。
後日になるが、ジローの予防接種で小児科に行った時、貼ってあるポスターが目に入った。
『泣きのピークがあります。』
え?
目からウロコの衝撃。
ポスターに書いてあるのは2〜3ヶ月頃とあったが、そういわれたら、タローは3〜4ヶ月頃がピークだったのかもしれない。
個人差はあるだろうけど、確かに『泣きのピーク』ある!!
もっと早く教えて欲しかったー!
タローが1歳前だった時、ベビーマッサージに参加した。
まだ首が座らない赤ちゃんと一緒に参加してるママと話したら、
「この子、おっぱい飲む時以外はずっと寝てて暇なの。楽〜。」
と、そのママが言う。
ああ、タローは結構泣いたりいろいろあってすごく大変だったけど、他の人はこんな楽なんだ…と軽くショックを受けてた。
それからしばらくは、「赤ちゃんのお世話、大変だよね。」と、他の人にあんまり言えなくなってた。
でも、こんなポスターがあるっていうことは、きっと赤ちゃんが泣いて大変な思いしてるママはいっぱいいるんだ!そうだよね、赤ちゃんは泣くんだよ!でも、ピーク過ぎたら泣かなくなってくるんだよ!
このポスターは、この瞬間からずっと、私の心のお守りになりました。
ちなみに、泣きのピークは新生児の頃の泣きで、少し成長してくると夜泣きがあり、もう少し成長するとイヤイヤ期がありで、泣くのは泣くんだけどね。
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