第19話 転生の秘密を知る話

 「イリーはどこまでこの世界とエディットのことについて知っているの?」


イリーは絶対何かを知っている。もしかしたら知ってはいけないものを知ってしまっているのかもしれない。


「良い質問だぜ。結論から言うとほぼ全てについて知ってるぜ」


「全て?」


「エニーっちが何故ここに来たのか、女神とは何者なのか」


「そんなことわかるの!?」


「ああ、わかるぜ」


悪そうな顔でイリーはこちらを見つめる。


「まず一つ目の質問、どうして私は転生したの?」


「それはエニーっちが宇宙のバグを抱えているからだぜ」


「???」


「順を追って説明する」


イリーは私のそばに来て、丁寧に説明を始めた。


「まず、宇宙は膨張し続けている。これは知っているよな」


「まあ......」


「その溢れんばかりの行き場のなきエネルギーを、女神は人類に配布している。それがエディットなんだぜ」


「そうなのね」


「エネルギーの増幅と共に人類は繁栄してきた。エディットは多用的で、その能力を他人に配布するエディットも多く出現しはじめたぜ」


「あたちみたいな奴も過去にいたのね」


「エックスさん、過去にはもっと強力なエディターがわんさかいたんだぜ」


「どんな奴よ」


「代表的なのが 《 レッド・フレシャ 》 だぜ」


「私のご先祖様じゃない!」


「そうだぜカーマインさん直系のご先祖様だぜ」


レッドフレシャ、確かにカーマインに似ていた。彼女は過去に何をしたのか気になる。


「レッドさんは他のエディターと協力して異邦の土地に転生する技を編み出した。それこそが【炎の鍵】だぜ」


「やっぱり!」


「やっぱりって何なんだぜ?」


「いや私レッドさんに会ったことがあるのよ......」


「マジか?」


「何か、死にかけた時に会った......説明が難しいけど......」


「それは三途の川的な?」


「ある意味そう。もっとも、真っ暗な空間にレッドさんがいただけだけど」


「なるほど、理解したんだぜ」


え、これで通じるの? イリーは一体......。


「まあ話を戻すけど、炎の鍵によってレッドさんたちは魔王の支配なき宇宙に創りかえようと試みたんだぜ」


「魔王って何者よ」


「魔王ってのは女神と対になる支配者のことだぜ。女神が増幅の性質を持つ宇宙の支配者なのは既知だと思うが、逆に魔王は宇宙の縮小を実行している。知性がなくて宇宙の均衡を保つために存在している装置のような存在だぜ」


既知って、普通に知らなかったけど......。


「あ、まあ突拍子もない話で悪いとは思ってるぜ。ただエニーっちが何故転生したかを説明するには必要な話なんだぜ」


「はぁ、わかったから話しなさいな」


「続けるぜ。レッドさんは好奇心旺盛で、広域にわたり活動し人類を発展させたぜ。ただ人類がある程度発展すると、魔王が魔物を派遣して人類の成長を阻止しようとしてきたぜ」


「そこでレッドさんは炎の鍵を発明し、外の世界への門を開いた。ここに活路を求めてたらしいぜ」


「ただ外の住民はこちらに友好的ではなかったぜ。その上門を閉じる方法もわからず、魔物がそこに流れる始末だぜ」


「その門閉じられないって先に考えなかったのかよ」


「ここだけの話、レッドさんは勢いと座学は優秀だけど先を読むことは苦手なタイプだったらしいぜ。あと同僚曰く、相当な変態だったらしいぜ」


「その情報、いる?」


「まあそれはともかく、外の住民らと戦争することになるんだぜ。その間ちゃっかり魔物は撤退してるぜ。多大な犠牲を払って戦争に勝利をするけど、今度は魔王軍が待っていたかの如くレッドさん率いる貴族軍に宣戦布告してきて大敗北を喫するんだぜ。これが炎の鍵革命事件って奴だぜ」


「魔王軍ってやっぱとんでもなく強い?」


「貴族軍が弱っていた時だったし貴族軍と同じぐらいだったかも。でも貴族軍は日に日に強力になっていたし未来ではわからなかったぜ」


「へえ」


「魔王の使者はエネルギー縮小を女神側に要求し、女神はこれを受領したぜ。更により広域に魔物の居住を許可させた。他にもエディターの弱体化も実施したぜ。これは女神の罪と呼ばれているぜ。もっとも、一部の高僧しか知らないけどな」


「女神の罪、そんなのがあったなんて」


「ロックさんら現地人には気分を害する話かもしれないけど、これは事実何だぜ」


「で、その後は? でもSランクのエディターはいるじゃん」


「エミリーさんだっけ? わかってるぜ。ちゃんと話すぜ」


「で、その後女神は”フルゲート”と呼ばれる宇宙の均衡を保ちつつ人類を安定的に発展させる設定を発見するんだぜ。細かい設定は色々あるが、代表的なのがエディターが18人存在するようにするってものだな」


「......」


「以上だぜ」


え、これで終わり? いきなり歴史の話をされてもわかんないんだけど......。てか肝心の私の話を聞いていない。


「結局私はどうゆう存在なの?」


「だから、宇宙のバグだぜ」


「バグ?」


「女神も完璧な存在じゃ無いってことだぜ。炎の鍵革命事件の収集の時にエネルギーの再分配が行われたが、意図しない形でエニーっちの先祖に配布されたようだぜ。それが今代になって顕在化したんだぜ。バグだからこれ以上の説明はないぜ」


「そう」


「満足したんだぜ?」


「じゃあなんでイリーも転生を使えるのよ」


「いや私は転生できないぜ」


「はぁ?」


「エニーっちの身体を借りて転生したんだぜ。それによって細胞が活性化してエニーっちはエディットに目覚めたけど、その前は私が身体を操作して使わしてもらったんだぜ」


き、きもい顔。よくわかんないけど、こいつも変態だったな......。

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