第14話 チャイ国の秘宝を手に入れる話

 ここは......


「......さん! エニーさん!」


「はぇ......?」


「エニーさんっ!」


「えっロック君!?」


目が覚めるといきなりロック君が抱きついてきた。何だここ天国か!?


「よかった......」


「ろ、ロックきゅんこそ無事でよかった......」


ロック君、見た感じ怪我とかないし良かった。あ、自分ももちろん大丈夫。


「そうそうそれ何ですけど、何ですかあのエディットは?」


知らないものを尋ねる顔のロック君。やはりあれは一般人から見て特殊なエディットなのか。


「あれは炎の鍵っていう複合エディットの効果だよ」


「炎の鍵!? 嘘でしょ?」


カーマインが驚く。


「私がし......気絶してる間に脳内でルビーフレシャって人と会話して一分間だけ炎の鍵を使わしてもらった」


「何それ???」


「いやまあ......普通そうゆう反応するよね」


「てかルビーって私のご先祖様じゃん! どんな人だったの?」


「あーそういえばカーマインに似てたような。でももっと知的そうだった」


「それって馬鹿にしてる?」


「してる」


「こんの!」


「あはは......」


「そういえばここはどこ?」


見渡した感じ、普通の宿屋だが......。


「ここはチャイ国の宿屋だよ。エニーさんがボクたちの傷を癒してくれたおかげで無事にたどり着けたよ」


「おお......それは良かった」


「でもあの猫何だったんだろね、マジ強かったし」


「魔王の側近ニャダル、って名乗ってましたね」


「魔王......う〜ん......」


「魔王についてもレッドさんから何か聞きました?」


「いや全然」


「そ、そうですか......」


う〜ん、全然情報がない。殺しちゃったしなぁ。尋問する余裕なんてとてもなかったし。


「魔王よりあたちはあんたの方が気になるけど」


なんだこのちっこい娘は。


「誰?」


「このかたは 《エックス・アト》 さん。エディターだよ」


「あたちのことはあんたたちの上司? にあたるキャロットさんから聞いているわ。面白いエディターがいるとは聞いていたけどこの茶髪の女のことかしら?」


え、私?


「あ......エニーです。よろしくお願いしやす......」


「その剣、ロータス卿のものっぽいわね」


彼女は私の横にある虹の剣を見て話す。


「わかるんですか?」


「もちろん。なんせこの国ではロータス卿の秘宝がざっくざく眠っているんだから!」


「はあ」


「でも多くの秘宝に制限がかけられていて使い物にならないんですよね?」


「そ、そうね。でもそれが今回、ええと......エニー? の仕事でしょ?」


「名前ちゃんと覚えてくださいよ」


「えーめんどくさいわ」


「をいをい」


この女......。いや、仕事で来てるんだし我慢しないと......。


「そうそう、明日からで良いんだけどあたちの作業場に来てもらうわ」


「それってどこですか?」


「別に大したところじゃないわよ」


エックスさんの作業場は街のはずれにある邸宅らしい。


「あたちのエディットは保存と再生。エディットを限定的だけど液状化させて保存することができるわ。使いたい時は振ってあげれば使える」


「なんか面白いエディットですね」


「でしょでしょ?」


「この国にあとふたりエディターがいるのは既知の情報だと思ってるけど、そのふたりもなかなか面白いエディットを持っているわ。そしてそのエディットはエンチャント装備の製造に欠かせないのよ」


「それってめっちゃ重要じゃないですか?」


「そうよ。まぁよその国にも似たようなエディットを持ってる奴もいないことはないけど、レアなのは否定されないわ」


「すご〜」


「他人事だけどこれからあんたにも協力してもらうんだけど」


そうだった、ロータス卿の秘宝の解明をしなければ。しかし虹の剣以外に何があるのだろうか。


「でも私虹の剣以外知らないんだけど、秘宝」


「そうね......じゃあこれとかどう?」


エックスさんはポケットから指輪を取り出した。


「指輪ですか?」


「虹の指輪よ。おそらく素材はその剣と同じだと思うんだけど......」


淡い虹色の指輪。綺麗だけど、どんな効果があるのだろうか。


「つけてみますね」


指にはめてみた。特に何も起きない。


「何も起きませんね」


「う〜ん......」


「ま、他の秘宝との組み合わせで発動するエンチャントかもしれないので今日はもういいわ」


「役に立てなくてごめんなさい」


「別に良いわよ。ただ明日も役に立たなかったらドラゴン退治にでも行ってもらうわよ」


「扱いもうちょい何とかならんすかね」


「こっちだって生活とかあるから」


「えーでも失礼ながらお金はいっぱいもらってるんじゃないんですか?」


「ぼちぼちだけど......この国自体小さいし政府や貧しい子供に寄付してるのよ。だから贅沢はできないわ」


「偉いっすねぇ」


偉い。この子。私とか贅沢してるぞ。見習いたい。


「ところで夕食はどうする?」


もうそんな時間か。しかしこの国はどんな食べ物があるのだろうか。


「おすすめはなんですかね?」


「ここの宿屋のおすすめ、悪魔アリのスープよ」


な、な、何じゃそりゃ!?

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