第13話 炎の鍵の力を借りる話

 ふと目が覚めると真っ暗な部屋にいた。


「ここ......どこ?」


「目が覚めたのね」


後ろから声がしたので振り返ると、ロングヘアーの若い女性が立っていた。赤い髪で、どことなくカーマインに似ているような気もする。


「どなた様ですか?」


「レッドフレシャよ」


「レッドさん」


「そう言ってるのよ」


「はぁ」


《レッド・フレシャ》 さん。よく見ると結構美人だ。カーマインはツンデレなので、可愛さとツンツンとした表情が特徴だけど、レッドさんは美人な感じ。でも大人しすぎない感じもして良い。

それにしてもフレシャという名前、フレシャ家の人間なのか?


「あの......もしかしてフレシャ家の人間でしょうか?」


「そうなのよ」


やっぱり。しかしもうフレシャ家の人間はカーマインのみと思っていたけど。あれ。


「そ、そういえばここってどこですかね?」


「ここは門の狭間なのよ。どの世界でもない、暗黒の地。炎の鍵か魔王に幽閉されない限りは来れないはずだけど」


炎の鍵って、まさか異世界へ行けると噂のエディットのことか!?


「炎の鍵ってあれですか? 異世界へ行けるという複合......エディット?」


「よくご存じのようなのね。正解よ」


そう彼女は言うと右手を差し出した。手のひらには光り輝く鍵がある。


「この鍵は?」


「これこそが炎の鍵。レッドと仲間たちによる技術の結晶なの」


「はぁ」


「ところが!」


急にレッドさんが鍵を強く握り締め出した。えっ何!?


「最近この鍵の調整機能が失われたのよ!」


「調整機能?」


「この鍵は異世界への門を開くための装置なのよ。それを実現する要素の一部にプール管理システムがあるのよ。それが失われたのよ」


「プール?」


「水遊び場のことじゃないのよ。データの管理領域のことよ」


「???」


「わかんないって顔してるけど、あんたのエディットのことよ!」


「ええっ!?」


「あんた、エディットは普通女神様から授かるものだと知ってるの?」


「なんかそうらしいですね」


「そう。ところがあんたは何故かエディットを使えるようになっている。どうやったのかは知らないけど、この鍵から引き抜いたみたいなのよ」


「まじすか」


「嘘言っても仕方がないのよ」


なんと、やっぱ正規の方法でエディットを取得していなかったのか。しかし泥棒みたいに言われるのも心外だな。こっちだって巻き込まれた身なんだし。


「なるほど、しかし返せるなら返したいものですが方法は......」


「あんたってどこから来たのよ?」


「え? モカ王国ですけど」


「その前よ」


その前......転生する前か。


「地球っていう星の日本って国からですね。転生してきたんですよ。いやーびっくりですけどね」


「ふむ。だからあんたは今ここにいるのよ」


「ええっ!?」


「普通人間がこっち......モカ王国がある世界で死んだら、天界に召されるんだけど、あんたはここに来ている」


「はい......ん?」


え、私死んだん!?


「あ、そうそうあんた死んでるわ」


「えええええええ!?」


「うるさいわね」


「デデデ、でもぉ......」


そんな......嫌すぎる。せっかくロック君と良い関係になったばかりなのにぃ!


「安心しすると良いわ。ここに来るってことは女神と魔王の両方の存在から独立していることを示しているわ」


「そ、それは一体......」


「難しい説明は後にするのよ」


そう言われ、炎の鍵を渡された。


「まだ戻れる、だから大丈夫。戻ったら記録の泉に行くのね」


「記録の泉?」


「チャイ国の北部にある場所なのね。それじゃあGOなのね!」


「えっちょ......」


背中を急に押されたと思ったら、強烈な炎と光によって視線と感覚が一気に奪われた。


—-------


「......」


ここは......ゆ......め?


「んっ?」


「えっ......?」


顔をあげると、半獣半人の生き物が私を見下ろしていた。あ......そうか......。


「まさか、まだ生きていたとは」


「(一分間だけ自由にしなよ)」


「!?」


レッドさんの声が聞こえた。よくわかんないけどやるしかない!


「うおおおおおっっっ!!!!!」


「何をする!?」


「加速っ!」


「傷が癒ているだと!?」


「辻斬り!」


「ぐあっ!!!」


「電撃!」


「ぐ......なんだこの術は......」


「神経毒!!!」


「毒か!? しかしどうしてだ!」


「まだまだっ!」


何が有効かはわからない。ただ数を打ち込む。


「寄生の剣」


「ぐ、身体がゾワゾワする......これは!?」


「寄生虫を身体に仕込んだ、それだけよ」


「ぐ......何とグロテスクな発想を......」


「どうせ死ぬんだし良いでしょ」


「ぐぇ......おの......れ......」


「門よ開け......運命とは偶然、偶然とは運命。全ての迷いよ正しき道を示せ!!!」


念を込めた剣は相手の心臓へ自然と誘導され、突き刺さる。


「ぐはっ!」


「そりゃっ!!!」


「ぐあっ!」


「これで、最後っ!!!!!」


「アギャアアアアアアアアアッ!!!!!」


よし、全ての心臓を潰した。そしてあと残り時間は10秒か。


「門よ開け......生命の源となる癒しの泉を、今我らに助けを与えたまえ......」


倒れ込む数秒前に、回復の祈りを捧げた。あとは祈るのみ。どうか間に合いますように......。

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