第11話 移動中に襲われる話

 キャロットさん、首相になりたいん?


「アオ、首相になりたいんだよね」


「国王ではなくて?」


「首相だねぇ」


「はあ」


「国王は今まで通り王家に任せるけど、政治のトップは首相に任命する方式が良いかなって」


「なるほど、しかし上手くいきますかね?」


「貴族らを倒すこと自体はどうってことないよ。ただ流血を最小限にしたいのと海外勢力に警戒が必要だね」


「確かに内戦は嫌ですもんね」


「そう。そもそも確かに貴族は酷いが国民全員が暴徒化するほどの事態にはなっていない」


まあ生活はキツいし、貴族たちはエディターを軽視して不快ではあったけど私の前世の世界にはもっと酷い国もあった。それを考えると本気で貴族に立ち向かうのも考えものだ。


「そうですね」


「ただ、やはり国自体は変えていかなくてはともアオは思っているよ」


「同意します」


「そこでまずはエディターの地位向上から。そして次第に権限を奪っていくスタイルにするのさ」


「やはりそこに繋がるんですね」


「そこでエニーさんにはチャイ国に行ってもらいたい」


「どこですかそこ?」


「南にある国だよ。小さい国だけどエディターが3人もいるし、ロータス卿が残した秘宝も多く存在している。例えばこれ」


「それは虹の剣!」


没収されていた虹の剣だ。


「ほれっ」


「ありがとうございます!」


「憲兵が持っていたからこっちで預かっておいた。大事にしなさい」


「うお〜虹ちゃん〜」


「ロータス卿の秘宝はどれも価値があるが、デフォルトでは制限がある」


「制限?」


「例えばその虹の剣はエディターでないと使えない上に適性が限られる。エニーさんは使いこなしているようだけど」


「私的には適性9割って感じですね。良い子ですけど稀に不発ミスるんですよ」


「その適性を解明することがエニーさんの使命だよ」


「私?」


「そう。既に虹の剣をほぼ使いこなしてるエニーさんなら他の秘宝の謎も解明できるでしょう」


「やってみないとわかりませんが、やってみます!」


「良い返事だねぇ」


秘宝か、触ってみないとわからない感はあるけど触る価値はありそう。もしかしたら私がこの世界に来た理由を知れるかもしれないし。


「あ、あとチャイ国となか良くしておけばイーグル共和国の牽制になって良いと思うってのもあるんだよね」


「そうなんですか?」


「イーグル共和国はエンチャント装備の生産国だけど、チャイ国からもっと良いものが手に入るようになれば良いことだし。モカ王国的にはチャイ国をもっと支援したいんだよね」


「エディターの地位向上のためにもエディターが3人もいるチャイ国は重要だよ。イーグル共和国はひとりだけだしモカ王国に友好的ではないしね」


—-------


というわけで私たちはチャイ国にいく事にした。馬車での移動になる。


「お腹空きました......」


「アンタのせいで大金失ったせいよ、甘んじて受け入れなさい」


「足りない分をキャロットさんが払ってくれただけでも良かったじゃないですか」


「キャロットさん......優しすぎる(ぐすん)」


ヒヒーンッ!!


雑談をしていると、突如馬が鳴き声をあげて止まった。


「うわっ!?」


慌てて先を見るとスライムが立ち塞がっていた。言うまでもなく魔物だ。


「この周辺は魔物が多いと聞きました。早いところ片付けましょう」


「わかった!」


子供ぐらいの大きさはある。色は緑でねっとりとした魔物だ。この個体はスライムにしては少し大きい。


「門よ開け......」


「!!!」


スライムは基本的に頭が悪いし動きも鈍いから、距離を取ればオーケー。


「偶然を呼び覚まし凍てつくエレメントを剣に宿せ! 氷結の刃!!」


「!!!!!!」


見事に私の剣が的中。氷属性を付与したからもちろんスライムは凍る。


「ロック君、やっちゃって!」


「わかった!」


控えていたロック君が前に颯爽と出る。


「はあっ!!!」


オーラをまとい、剣を振り下ろす。

凍ったスライムがロック君の剣によって粉砕された。てか威力良いな。そうか、剣にシールドを少し張っているんだな。それで威力がアップしていると。


「ど、どうですかね......?」


「めっちゃいいよ! 最高!」


「ありがとう!」


いやー魔物なんて私たちの敵じゃないね。悪魔熊クラスの魔物でなければヨユーって感じ。


「さーて再出発しますか」


「ちょっと待って!」


ん? どうしたんだろ。


「なんか来る!」


「えっ?」


ふと前を見るとかなりのスピード、馬ぐらいの速さで黒い生物がこちらに向かってきた。


「あれは何!?」


「シールド!!」


「ニャオオオオオオッ!!!」


「うわぁ!?」


「ロック君!?」


突如あわられた黒い生物に、ロック君は爪をたてられた。

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