第10話 深く反省する話
少しづつ日が昇りはじめる。もう朝なのか。
結局一睡もできなかったし、今日は何もやる気が起きない。
「おは〜!!!」
う、うるさい......。エミリーの甲高い声が耳に響く。吐きそう。
「う、うるさ......」
「テンション低くね? アタシたちこれから出れるってのに!」
「え?」
何となんと急展開、この薄汚い地下牢から解放されるようだ。しかし何故解放されることになったのだろうか。
—-------
「なんで出れるようになったんだろ」
「それはイーグル共和国のおかげだな」
「キャロットさん!?」
上の階からキャロットさんがやってきた。ばっちりスーツだし何かあったのだろうか。
「イーグル共和国は我が国の西にある国家なんだけど、あの国は宗教国家でエディターの存在を重要視している」
「そうなんですか、こことかエディターの扱い酷いですけどね」
「それだよ」
「はい?」
「エディターの存在は聖書にも記されているんだけど、難解で解釈が別れている現状がある」
「そうなんですか」
「それゆえにエディターの扱いも異なる。もちろん戦略的に必要不可欠な人員であることはどの国でも理解しているから軍としては重要だけど」
「でもエディターの全員が戦闘できるわけじゃないですよね」
「そうそう、だから一般エディターの扱いに各国四苦八苦しているってわけさ」
「はぇ〜」
エディターという存在。謎が多いけど、どうやらよその国の人間もはっきりとはわかっていないみたいだ。
「で、イーグル共和国の首相が『モカ王国は冒涜的で重大な人権侵害を犯している』と発言を受けて君が解放されることになったわけ」
「なるほど、それで解放されたんですね。しかし政治って大変ですねぇ」
「はははっ」
内政干渉かぁ。まあそれで私は助かるんだし大賛成だけど......。
「でもでも、モカ王国の貴族たちは反発しなかったんですか?」
「もちろん良い気分ではないだろう。しかしイーグル共和国からエンチャント装備を輸入しているモカ王国にとっては無視できないことも確か」
「えーそれって、地味にモカ王国ってやばくないっすか?」
「火薬の生産数とか軍人の数とかは多いから、我が国が覇権国家なのは間違いではない」
「そうなんですかねぇ?」
「ただ、課題があるのも事実。最近は非貴族グループの政治家たちがこの辺りの問題に取り組んでいる」
「貴族ではないグループですか」
「まあアオのグループなんだけどね!」
この人可愛いな。
「キャロットアオ、アンタに聞きたいことがあるわ」
カーマインがキャロットさんに何か言いたげの様子。
「お、この娘は?」
「カーマインフレシャ、私のギルメンです」
「おー生意気そうで可愛い」
わろた。もしかしてキャロットさん性癖歪んでる疑惑あるな。
「なによ!!」
「もしかしてアオのこと嫌い?」
「貴族の支援をしてる奴なんて嫌いよ!」
そういえばカーマインはキャロットさんのことを勘違いか何かで嫌ってたような。
「アオはあくまで貴族の支援というより商売をしているだけなんだけどなぁ」
「それで貴族に武器を支援してたらダメでしょ」
「チッチッチ」
キャロットさんが、いやいや違いますよと言わんばかりに指を振る。
「?」
「貴族の配下である憲兵に渡してるのは制限付きの武器だよ。機能が限られたね」
「そんなことしてバレないの?」
「憲兵は国内組織、どうせやる気もないよ」
「それで儲けたお金はどうするのよ?」
「軍とかアオのギルドメンバーに渡しているよ。貴族以外の政治家にも支援したりね」
「そ、そうなの!?」
「あとアオが水面下で進めているクエストもある。魔王の側近についての調査だよ」
「魔王の側近!」
カーマインが興味ありげに反応する。
「おお、食いついてきた」
「私はルビー・フレシャの娘よ。私の知っていることは何でも話すから、代わりにキャロットアオも私に情報をよこしなさい!」
「普通にキャロットさんって呼んでほしいんだけど......まあいいや。年頃の娘だし大人ってうざいよね。アオもわかるよ」
キャロットさん......面白い大人だ......。
「良いけど、アオはこれから銀行に振り込みをしに行くんだけど」
「振り込み?」
「君たちを釈放するために5,000万モカを貴族に支払わないといけないのだよ」
「え、それは共和国の内政干渉で解決したのでは?」
「あくまでも刑の免除だけだよ。貴族らも一枚岩じゃないからね。あと普通に店の修理費は当然払わなくちゃでしょ?」
「ほんとっうにすいません!」
「良いよいいよ。まあ良い大人が煽られたからって隕石落とすのもどうかとは思うけど」
「それに関しては一ミリも反論できません!」
マジで申し訳ねぇ。ごめんなさい、キャロット様!
私もカーマインを馬鹿にできるレベルじゃないと改めて思った。みんなも行動には気をつけた方がいいぞ。
「それでこれからアタシたちはどうすればいいんですか〜?」
「そうだな。革命でも起こしてもらおうかな」
「えっ!?」
「アオ、首相になりたいんだよね」
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