第3話 ギルドで見つけたAランクエディターとバトルすることになった話
冒険者の店に来た。わかりやすく言うとでかい酒場である。お酒を飲む他に、クエストと呼ばれる困りごとを受けたりギルドを編成できる。それと能力の鑑定も可能だ。
「能力の鑑定ですね、少々お待ちください」
この人は受付嬢。ギルドの管理や能力を鑑定してくれるらしい。あと可愛い。
「それではこちらの石に触れてください」
受付嬢はそう言いながら緑の石を取り出した。この石は有名なエディターが作成した【能力値を可視化する石】らしい。
早速触れてみた。するとわずかにビリッと電気が流れた。静電気みたいで少し痛い。
『氏名:エニー・マンデー エディター判定:○ エディット詳細:確率操作 Sランク 身体能力:Eランク 知性:Cランク 総合:Sランク』
「出ましたね......ってこれはとんでもない結果です!」
「そんなに凄いんですか?」
「凄いですよ、Sランクは現在2人しか確認されていないんですから!!」
なんか凄い結果らしい。確かに確率を操作できると聞くと凄そうだけど当事者からしたら実感が湧かない。
他の2名は以下の通り
『氏名:ロック・リー エディター判定:○ エディット詳細:結界展開 Bランク 身体能力:Cランク 知性:Bランク 総合:Bランク』
『氏名:エミリー・チラックス エディター判定:○ エディット詳細:無効化 Aランク 身体能力:Eランク 知性:Aランク 総合:Aランク』
地味に2人とも強力なエディット持ちだ。もしかして最強集団できちゃうのでは?
「あとお客様は既にギルドに所属されていらっしゃるでしょうか?」
「まだです」
「それでしたらギルドを設立してみてはいかがでしょうか?」
「そうします」
「お客様方は現在3名のメンバーがいますね。ギルドの登録には最低あと1名必要ですが募集をかけますか?」
「公募はしないけど、勧誘待ちの冒険者を参照したいです」
「承知しました。こちらが現在当店に登録している冒険者一覧です」
名前とスキルが書かれた紙を渡されたので、それを私たちは確認した。30名ほど登録されている。
勧誘待ちの冒険者が勧誘を受けるとギルドに参加することになる。参加している間は契約を結ぶことになるので、ギルドが冒険者に月額で費用を払う。
「とりあえず安い人3名ぐらい契約しちゃわない?」
そう口を開いたのはギャル......エミリーさん。曰くSランク冒険者からの勧誘を断る人はいないみたい。
「でもお金回収できるか不安で......」
「えーお姉さんSランっしょ? ヨユーで回収できるって!」
確かに推奨Aランク以上向けのクエスト一覧を見ると、1クエストで100万モカを余裕で稼げるっぽい。そんなにSランクって凄いのか。
「そうですよ、エミリーさんもAランクだしお姉さんが頑張ってくれれば美味しい調味料をたくさん買えます!」
うっ......そうロック君に言われるとやるしかないじゃないか......
怖いけど頑張るか。
「とりあえず適当な人2人と〜あと1人ぐらいは強い人欲しいっしょ」
「全体的に火力不足なので攻撃役が良いかと」
高火力の条件で探していると、一人気になる人を見つけた。
『氏名:(加盟後公開) エディター判定:○ エディット詳細:火炎魔法 Aランク 身体能力:Bランク 知性:Dランク 総合:Aランク』
エディターじゃん。まさか載っているとは。しかしこう強いと他のギルドに取られそうだけど、この人が掲載されてもう1年ぐらい経っている。
「この人はどうでしょうか?」
「強いけど全然情報ない上に月120万モカって高すぎない? 詐欺っしょ」
キャロットさんや軍所属の《ポポイ・エント》さんは既にギルド加盟済のため、この人は《カーマイン・フレシャ》さんかもしくは外国人ということになる。
「確かに高いけど、私は情報が欲しい。怪しいってなら私も十分その類に入るはず」
「お姉さんは確かに変人だけど怪しいって感じはしないってーの」
優しいなこのギャル。強者の余裕なのかもしれない。
「お姉さんの言う通り、僕たちは情報が必要だ。このAランクエディターを勧誘して情報を聞き出そう」
ん〜〜〜ロック君も優しい。しゅきぃ。
お姉さんがお金稼いで養ってあげるからねぇ〜〜〜♡
〜3日後〜
王都の公園に私たちは呼ばれた。手紙で、『某日の昼、公園に来い』とだけ書かれていたんだけど不安しかない。
予定時刻の10分後ぐらいに、スカーフを身に纏った女性がやってきた。私たちの方を向き、次のように言った。
「Sランクエディターのエニーはどいつ?」
「私です」
ここは素直に名乗りあげよう。
「アンタ、一緒に貴族を倒さない?」
えっどうゆうこと?? 貴族を? 事情がよくわからない。
「もちろんタダでとは言わないよ、クエストも受けるし極秘情報もあげる」
「すみません、そもそも君の名前って......」
ロック君が間に入って名前を尋ねる。まあそれが普通の反応だよなぁ。
「あっ......そうね、私は 《カーマイン・フレシャ》よ。よろしく......」
みたところ相当若い。そこのギャルよりひとつ下ぐらいだろうか。そしてロック君の前で照れるな。この女、男慣れしてないな。
「フレシャ家の人間? 元貴族じゃん」
「そうだけど今は違う、貴族呼びするのはやめなさい!」
「あれ、貴族嫌い系?」
「そうだ」
「アタシも貴族嫌いだけど、理由とかあんの? 私は扱いとかが酷いからそう思ってるけど」
「エミリー、アンタは食材市場で働く商人だったわね。そりゃ規制とかかけられたら嫌にもなるでしゃうね」
「あ、もしかしてカーマインさんも商人だったり?」
「いや商人じゃない。私が貴族を嫌う理由は嫌がらせの他に奴らが抱えている情報にある」
これは相当訳ありだ。本来ならあんまり関わりたくはないが、今は情報が欲しい。もっと詳しく聞きたい。
「あのー......」
「エニー、アンタは何故キャロットと絡む?」
「え、キャロットさん?」
「アイツは貴族と交流がある。貴族に武器を売り捌いて金儲けをしている。私は貴族本体と交流している者も嫌いだけど、アイツとの交流をやめたら私の仲間にしてもいいわよ」
話が飛躍してるなぁ。しかも上から目線だ。これは断った方が良いかな。
「嫌ですよ、別にキャロットさんは悪い人じゃないし。そもそも私は貴族に恨みとかないですから」
「なっ!」
私が断りを入れると、わかりやすくカーマインは怒りをあらわにした。ティ●ァールかよ。
「アンタ、貴族はエディターに対して税をかけたり行動制限を課したりしているのよ!」
「でもあなたも元貴族でしょう?」
「私はそもそも元貴族とはいえ正式に所属していたのは母の代まで。今フレシャ家は貴族グループを脱退している」
「どうでも良いですね(本当はよくない)」
「アンタ、侮辱するのも良い加減にして!!」
色んなことをペラペラ喋ってくれるのは、情報を欲する者としてはありがたいが正直会話としては成立していない。勧誘は断ろう。
「申し訳ないんですけど......私たちのグループに入るのにはちょっと向いていないのかなぁって」
「ぐぬぬ......」
お、食い下がらないのか?
「ええ〜、こんなカワイイ女の子勧誘しないなんてもったいないよ!!」
えー、エミリーが止めてくるの?
「そうかそうか、理解してくれるか!」
「ちょっとエミリー私は理解していないんだけど!」
「お姉さんだって結構怒ってんじゃん 落ち着いてって」
「くっ.....」
悔しいけど図星だ。私もあんまり沸点が高い方ではない。
「わかってくれるか、エミリー!」
「でも、お姉さんもロック君もまだ心配なところはあるっしょ?」
「心配大有りだけど」
「ロックくん、ここは闘技場でバトルさせちゃわない?」
「確かに良いかもしれません。お互いに手の内を明かしつつ、モヤモヤを解消してくれれば!」
どうやら、闘技場という場所が存在しているらしい。ギルドの交流戦でも使われる他、加入試験でも使われるようだ。
「良いわね、確かにSランクエディター様の実力は見てみたいわ」
う〜ん、怖いけど嫌ですなんて言い出せない雰囲気だし受けるしかないみたい。思いっきりボコられたら......。自分のエディットを信じるしかない。
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