第2話

 華麗に滑る萩ヶ丘はぎがおか睦美むつみさん。

 スキーインストラクターをしていたそうです。

 僕は、そんなに巧く滑ることが出来ません。

 雪の上でも、花びらの上でも、スキーであることに変わりなく、上手と下手は別れます。

 

 僕の良いところ。

 そんなことは、気にしません。

 楽しければ良いのです。


 華麗に滑る睦美さん。

 サラサラ長い黒髪が、風になびきます。

 シカ帽子の乗る長い黒髪を目標に、僕もヨレヨレ滑ります。


 桜の花びらスキー場。

 リフトは、もちろん春風リフト。

 春風が、二人掛けの椅子を三笠山の頂上まで、吹き上げます。


 僕と彼女は、二人で座り、はじめましてのご挨拶。

 彼女は、とっても優しく、美人。

 明るく笑う恋泥棒。

 僕の心が盗まれました。


 僕たちのスキー。

 桜並木の川沿いを見下ろす空の上。

 滑りました。

 たくさんの花びらが、コースに積もるフワフワコース。

 僕たちは、楽しく滑ります。


 僕は、何度も転げて、花びらまみれ。

 彼女は、笑い転げて、笑顔まみれ。


 コース終わりのリフトの乗り場。

 春風リフトに、並んで座ります。

 頂上までの楽しい時間。

 アドレス交換。


 僕の恋。

 一歩前進。


 南に向かって滑っていきました。

 山あり谷ありのツアーコース。

 春風リフトの乗り場では、シカさんたちに三笠みかさ焼きを頂きました。

 三笠焼きを食べながら、僕たちは再び頂上へ。

 頂上には、帯解おびとけさんと櫟本いちのもとさんの少しだけ年配カップル。

 優しい笑顔と枯れた滑り。

 無駄のないスキーがみんなの憧れ、少しだけ年配カップル。

 僕たちは情報交換。

 シカさんたちのサービス。

 南西コースには、パスタで出来たポン菓子が。

 南コースには三笠焼き。

 僕たちは、南西コースへ。

 帯解さんたちは、南コースを向いて。

 それぞれ滑っていきました。


 帰る途中の春風リフト。

 二人でひとつのお菓子の袋。

 ポン菓子を食べました。

 互いの手が触れます。


 ドキドキ!


 今夜の記念に、次のお休み、二人で食事に行きましょう。


 ドキドキ!


 彼女は笑顔で、頷きました。


 僕の恋。

 二歩前進。


 ドキドキ!

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