光の扉
バブみ道日丿宮組
お題:未来の黒板 制限時間:15分
光の扉
光の扉が開いた時、世界中にいた悪魔たちが次々と吸い込まれていった。
かつて神々が封じた悪魔だからこそ同じ封印をされるというのだろう。
「じゃぁ、お別れだね」
無表情で肩越しに彼女は振り返った。
自分もその扉の中に入るべくしてゆっくりと歩き出そうとしたので、
「ま、待ってよ、ほ、他に方法だってあるんじゃないの?」
僕はその手を掴む以外の引き止め方ができなかった。
ひんやりとした冷たい感触が彼女から伝わってくる。まるで血の通ってない生き物の身体を触るような違和感がした。
「……もう時間がないの。触ったからわかるよね? もう前の私じゃないの。こうなったのも元々は偶然に偶然扉が開いてしまったから」
それにと彼女は俯く。
「ここに残っても私はただ迫害を受けるだけ。元の世界に戻るのが当然の報いよ」
強気の言葉に聞こえてくる彼女の声とは裏腹に身体は震えてた。
「……隠れて過ごすとか、名前を変えるとか色々あるじゃないか」
それこそ悪魔の血を引いた王女とあるなら、何か方法はないかと彼女と過ごした日々を思い出してみても、思い浮かぶ特殊な能力は浮かんでこなかった。
「ふふ、私は彼らとは違うの。半分だけしか血を引いてないからほとんどこっちの人間と変わらないの。それもわかってるでしょ?」
いつしか彼女は僕を抱きしめてた。
「仲間が犯した罪は向こうでお父さんに償いをさせる。そのためにも戻らないと、二度と扉が開かないようにもしないといけない」
悪魔は悪魔でしかなく、共存はできないと彼女は淡い水滴を目に貯める。
「君はこうなることがわかってて、こっちにきたの……?」
そんなことはない。でも、聞かずにはいられなかった。
「ううん。あなたとの出会いも偶然だったし、学校ってのも面白かったよ。こんなキレイな世界があるんだって知れたのだってはじめてだったよ」
だんだんと涙が僕自身も流れてるのに気づき、何を聞いてるんだと困惑した。彼女が悪いと僕までもが断罪する気なのか。過ごした日々を否定するのか。そんなことできるわけない。
「でも、よかった。こうやって、元には戻せないけど脅威は排除できるからーー」
そういって解き放たれた悪魔が消え、光の扉の光が少しずつ弱まってく。
「時間だね、さようなら」
そういって、彼女は僕から離れて扉の向こうへと歩いてった。
当然、彼女は僕が何をするかなんて知らなかっただろう。
僕もその扉の中に入るなんてね。
光の扉 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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