浮いた存在
バブみ道日丿宮組
お題:理想的な君 制限時間:15分
浮いた存在
『自分のためにあたしはやってるの』と彼女はいつもいってくれる。
あれもこれもと、僕のデザイン力、イメージ力、精神力を高めるために様々な行為を試したり、場所を変えてみたりと、想像もつかない刺激をくれる。
破天荒な人生を送ってきたからできるんだよと自慢げに過去話を聞かされたけど、普通。ごく普通の庶民に過ぎない。
だから、これらは全部彼女自身の好意。僕への愛情表現……なのだろう。
「本当にこれ……いいイメージ湧くのかな」
モデルになってる彼女は僕がぼやくと不満そうに頬を膨らませた。
「もう! 学校の人気者を1人独占してその態度はちょっと傷ついちゃうなぁ」
「そ、そういう意味じゃないよ、ぼ、僕は魅力的な君も優しく気遣ってくれる君も好きだよ」
理想的な女性といえば、たぶん彼女みたいな存在だと思う。
「えへへ、そう言われるとあたしも照れちゃうかな」
なんたって、僕が恋人になってるからクラスで浮くぐらい。
『なんであんなミジンコみたいなやつにくっついたんだ』ってわざわざ聞こえる大きな声で話し合ってるのをよく耳にする。昼ごはんもずっと一緒だし、嫌な視線が飛んできても彼女は気にしない。
僕が気にしても、『事実は変えられない』って笑うだけ。
1回だけ、食堂で大声で『釣り合う、釣り合わないなんて誰が決めるの? 価値観は人それぞれなの? あんたたちは彼の絵の凄さをわかるの? わからないんでしょ? そこから感情を得ることもできないんでしょ?』
そう怒鳴ったことがある。そのおかげで多少は収まったといえば収まったかな。
同時に彼女は親友ぐらいしか友だちはいなくなったっていう。相変わらず男子には人気はあるみたいだけど、女子にも異端に見えたみたい。
「なら、いいじゃない。何憂鬱そうな顔してるの? 今更そんな顔したってあたしたちの関係はこれからも変わらないの。禁断の果実を食べたアダムとイヴみたいにね。どこまでもいくのよ」
笑う彼女は素敵だ。それこそ何枚描いたか覚えてない。
その絵画だけでいくつの賞を取れたかも覚えてないくらい。
「ほんと、僕と違っていろんな世界が見えるんだね」
「それはあなただって、一緒よ。あたしが今まで見たことのない世界をあなたの絵は見せてくれるもの」
にっこり笑う彼女はそういうと黙り込み、モデルを再開した。
浮いた存在 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
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