第5話 徒花の制騎士
男は、ジグムント・フィリアという。
薄い金色の長髪を垂らした
数多の敵を
「ふつくしい……」
そう呟いてしまうほどに、綺麗なモノを見た。
血に汚れた鎧。
燃えるような赤い髪。
目の前に転がる花の死体に目もくれず、『次の敵は?』と
そして何よりも、彼女は『騎士』だった。
「すごいな……」
魔術で飛行し、上空から
「掛かって来い! 私は逃げも隠れもしないぞ!!」
少し高い声。
まだ成人してもいないのだろうか。
その騎士は多対一で怯まず、あまつさえ老兵を助けている。
「…………」
その姿は、正しく騎士だった。
「私は……どうだろうか」
答える者はいない。
別働隊を
自らの杖を握る手を見る。
「ははッ、震えてる」
戦場は、いつまでも怖くて。臭くて。汚くて。慣れる事なんてありはしない。言われるがままに、手を汚す自分は決して騎士とは呼べない。
「でも……」
寝物語に聞いた騎士に憧れた。
人を救い、
そんな騎士が目の前にいる。仲間だったであろう奴らは卑怯な手を使い、彼を殺そうとしているのに、自分はただ見ているだけ……
「団長、戻りました」
任務を終えた部下が戻って来る。
「あぁ……」
『団長』。
自分には相応しくない称号だと気付いた時には、もう動き出していた。
「咲き誇れ!!」
簡略化した魔術の詠唱。
人体を苗床とし、その命を花に返るジグムントの魔術。
母から貰った命以外の唯一のモノ。
あの騎士と話してみたい。
そう思えば、
*
「まぁ、その騎士殿が女性だとは思いませんでしたよ」
ジグが案内するままに、彼の寝泊まりする建物へ行っている。空中庭園の直下にあるらしく、清王陛下への挨拶のあと
彼の求婚の理由を聞くことができたワケだが……私を正しく騎士だと思ったから、か。
「悪い気はしない……けどさ」
「え、何て言いました?」
「何でもない!」
顔がにやけそうになるのを必死に
「あの……ジグムント様」
「なんか急によそよそしくなってる?!」
清王にあって、あることに気付いてしまったのだ。
「もしかして、清王様の親戚だったり?」
「まぁ、息子ですけども」
「王子じゃん!!!!」
名前に国名が入ってたからもしやとは思ってたけれども。
「でも血が繋がってるだけで、あるのはイデア制騎士団の指揮権限だけですよ?」
「そ、そうなの?」
それだけでもあのチート騎士団動かせるなら、充分な気がするが……
「着きました。ここが私の家です」
目の前に現れたこの世界で一般的な木造の平屋住宅。
「あ、ちゃんと部屋は二つあるんでご心配なく」
「……ありがと」
この国に来てから感じている違和感。
私はそれを
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