毒と薬は紙一重

 レッドが会議室に閉じ込められてしまったので厨房に向かった。コロンの狐耳を探していると、背後から声をかけられて空き部屋に誘導された。


「フフフ、その鞄の中身を覗いても?」


 ぼくは布でくるんだ卵を取り出した。コロンは細い目をギラギラさせてヨダレを垂らしている、ちょっと怖い。差し出すと、天井まで届く勢いで飛び上がった。コロンは約束の推理小説をくれた。エメラルドグリーンのリボンを巻いて、ぼくからのプレゼントっぽくしてくれていた。


「これが伝説の金の卵! キラキラ光ってまぶしいよ! 料理するからちょっと待っててね」


 バーンと部屋から出ていったコロンを、座って待つこと十分後。再びバーンと入ってきた彼女は何やら黄色いケーキを持ってきた。


「取ってきてくれてありがとう、すごく嬉しいよ。塩だけで味付けした金の卵のオムレツケーキ。一緒に食べようよ」


 感謝の言葉があたたかくて、ふわふわしたオムレツケーキをナイフとフォークで頂く。そういえばこれらの使い方もレッドに習ったんだ。


「トリィが無事で良かったよ」


 心配してくれる事が嬉しい。オムレツのふわふわした食感と甘さを堪能していたが、いつもお喋りなコロンが沈黙したので違和感を覚えた。

 切り分けられた四分の一を一緒に食べていたけど、自分の分を食べ終えた彼女が、残り全てを手づかみでガツガツとむさぼり始めた。妖怪の家系を思い出させる異様な姿だ。すごく怖い。


「はああああ、力がみなぎるよぉぉぉ! 今なら放置されっぱなしの宝物庫をぜーんぶキレイに掃除できるよぉ!」


 コロンはヒャッホウと絶叫しながら飛び出していった。ええ、残りのオムレツどうしよう。どう見ても異常な食材だ。困っていると警備のケルベロスが「コンニチワ異常ナイッスカ」と言ってきたので、試しに一口あげてみると──

 ムッキムキになって、二足歩行を始めた。


 作ってくれたコロンに申し訳ないと思いながら、怖いのでそっと厨房にお残し返却した。そうしたら、めざといネズミがサッとやっきて、もぐもぐ食べて、背中から羽を生やしてパタパタしだしたので、コック長に窓から勢いよく放り出された。

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