お前らがおかしいだけだから!
「ふんふんふふーん♪」
隣で朝っぱらから上機嫌に鼻歌を歌っているのは、由良である。
「お前……朝から元気だなぁ」
「だっていつもより早く合流できたもーん」
「……そっか」
そう直接言われるとこちらもなんだか恥ずかしくなる。
今日は珍しくいつもよりの早めに合流して登校しているので、普段途中まで一人で登校している俺としても、暇がつぶれていい感じだ。
「そういえば陽介くん。今日体力テストだね!」
「……は?」
聞きたくない言葉が聞こえてきた気がした。
「体力テスト?まじ?」
「まじ。」
どっちがいいか競おうね!なんて言っている由良に、男子には勝てんだろと。その体の小ささじゃ勝てんだろうと言いたかった。が、
「競ったら俺が負けるじゃん」
「あはははははっ!」
そう。こいつは運動神経抜群で、俺はやばい。正確的には一部だけいける。それ以外ダメみたいな感じだけど。
「あんなの無理だろ。なんでみんなあんな速く走れるんだ?」
「んー。気合だよ気合!」
そうちからこぶを作ってみせる由良。できてないが。
「お前のその体のどっからそんなエネルギーが出てんだよ……」
「わー!聞こえない!私が体ちっさいなんて認めないよ!」
「いやちっさい。」
ただでさえ大きくない体を縮こまらせて、耳を塞ぐ仕草をする由良。やっぱりかわいいな。
「由良はかわいいなぁ」
「な、なに!?いじり!?ちっちゃくてかわいいって!?」
顔を赤くしてポカポカと叩いてくるが、全く痛くない。日頃から俊吉と冗談で殴り合ってるからな。
……まあ本気で殴られたら痛いと思うけど。
うー……と、唸って拗ねてしまった由良の機嫌を直そうと飴をあげてみると、子供扱いしてー!とさらに拗ねてしまった。
でも、そこできっちり貰えるもんは貰っていく精神はしっかりと発動していて、微笑ましくなった。
「もういい!体力テストでボコボコにするんだから!」
その日の放課後、俺は3人に笑われることとなった。
「キャハハハハ!お前結局島村ちゃんに負けたの!?」
「ふん!私を煽るからそうなるの!」
「由良……気合い入ってたから……」
俊吉と由良はこちらを煽るような表情、奏は若干落ち込んだ表情だった。
じゃあ結果はどうなったのかだが、この四人の中なら、俺がダントツの最下位だった。
例の如くめちゃくちゃな記録を残した俊吉は、女子からすごいすごいと持て囃され、例の如く声をかけられまくったらしい。……イケメンは大変だな。
そして、奏。奏は、女子としてはあり得ないほどの高スコアを叩き出した。50メートルは6秒台だったらしいし、それはもう大層な活躍だったそうだ。そして、なぜこんなに落ち込んでいるかと言うと、絶対女子の中じゃ一位で、俊吉と一位コンビになれると思ったのに、女子の一位が他にいたからだ。
由良。由良は、男子をも上回るような超超ハイスコアで、全てにおいて経験者すら圧倒する活躍を見せ、奏を上回り、一位に君臨したのだ。
その活躍と言ったら筆舌し難いもので、とにかく、気合いの乗りが全く違ったのだ。
全てが終わった後、まだ着替える間も無く俺に抱きついてきて、
「やったー!ボコボコにできたー!」
と喜ぶ由良にすごく微妙な気持ちになりながらも褒めていると、俊吉に朝のことを知られ大笑いされているところだ。
でも!言わせてほしい!
「お前らがおかしいだけだから!」
これが真理だ。
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