ダブルデート 1
「おいおい〜!おもしれーことしてたみたいじゃん?」
帰りになるなり即ニヤニヤした顔を隠そうともせずに近づいてきたのは、俊吉である。
「お前……ぶち殺すぞ?」
「なんかイチャイチャしてたって……ぷっ!」
「ぶっ殺す」
俺は腕を挙げて掴みかかった。すると、
「何してるの……。離したげてよ。隣が怖いの!」
「由良……」
俺は由良に言われた通りあいつを離してやった。もちろん本気で殴るつもりなんてなかったけどな。
……隣にいる音成奏が怖いわけではない。
奏は高校に入ってからなんだかんだ俺たちコンビの世話をしてくれていた美少女で、学校一の可愛さなら由良、学校一の綺麗さなら奏と言われることもある。
ただ、これは言われることもある。というだけで、実際は由良の方が男子人気は高いようだ。
由良は焦茶の髪にちまっこくて、姿もかわいいが強いが、奏は、黒髪ロングに由良とは違ってスタイルも良く、大和撫子といった風貌である。
性格は冷静で、クールと言った感じだ。
「奏。一緒に帰るか?」
「もちろん。……だって、俊吉も一緒なんでしょ?」
ニコッと笑うその顔は、まるで教室で見せるような冷酷とも言える表情と対極に位置するような自然で柔らかい笑みだ。
……まあ、つまり、こいつは懐に入れて仕舞えばとことん仲良くなるタイプの人間だったのだ。
俺も最初は苦労した。大体俊吉経由で知り合ったこともあり、比較的早く打ち解けることができたし、由良と奏が友達であり、そこ経由での話題にもなったことも要因の一つかもしれない。
「じゃ、帰ろうか。」
「久しぶりの3人ね」
「あー、そうだな。そうだ、奏!昼休みの聞いたか?」
俺たちが問答無用で歩き出すと、後ろから、
え?あれ?おーい!
という声が聞こえたが、俺たちは顔を見合わせたあと、あえてそれを気にすることなく歩き出した。
すると、明らかなほどマジで焦り出し、本当に行っちゃうの?みたいな仕草をしだしたので、ため息をついて、
「早く来いよ!置いてくぞー!」
と言うと、
「うん!」
と、走ってこちらへ向かってきた。
その辺で止まるかと思っていたが、由良は俺の腕を抱きしめるようにして止まった。少し拗ねたような顔になると、
「寂しかったんだからね。」
と、一言こぼした。
……反則だろ。俺はそれを聞いて顔が赤くなったのは言うまでもない。
「おやおや??奏さんや。これは、てぇてぇってやつじゃありませんかな?」
「私もそう思うわぁお爺さん。私もこんなことしたかったわぁ。」
突如、老人風の言葉で俺たちを煽るカップル。
「うっせ。お前らのが本当のカップルなんだからアツアツだろが。」
それを言うと、は?みたいな顔をして、二人で神妙に話し合い始めた。
そして少したち、結論が出たようだ。
「よし。お前ら。今から俺らのデートに付き合え。」
「大丈夫よ。周りにはダブルデートって思われるだろうからふつーな見た目の陽介でも浮かないわ。……多分。」
「流石に無理だわ」
問題の箇所はいくつかあるが、俺が由良と付き合ってるってしんじるやつがいるかよ。
「そんなの関係ないんだよ!オラっいくぞ!」
「こっちのダブルデートって言葉にトリップしてるのは私が引っ張ってくわ」
後ろを見ると、でへでへ言いながら残念な姿を晒している学校一の美少女様がいた。
でも、その姿もちょっと可愛く感じるのは、こいつがかわいいからだろう。
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