島村さんがかわいそうだわ
「うー!今日は酷い目にあった!」
昼休みになり、一緒に弁当を食べようと二人で適当な場所に腰掛けると、島村さんはそう零した。
「どうしたの?」
白々しく俺がそういうと、
「沖田くんのせいだよ!」
と、ムキー!とこちらを威嚇するように見つめてくる。
まるで本当に小動物のようで、思わず頬が吊り上がる。
「可愛いな。」
「うがー!まだ言うか!」
今朝の苦労の原因ともなった言葉に顔を赤くしながらと食ってかかる島村さん。
「にしてもさ、君モテるでしょ?」
「うん、そりゃ君に比べればね」
「うっさい」
一言余計なんだよこの島村さんが!
「ったくさ。もっと褒められるの慣れてんじゃないの?」
「そりゃ、褒められることもたくさんあるけどさ……」
もごもごとはっきりしない態度の島村さんは、むーっと、口をつぐみ、ゆっくりと開いた。
「よく知らない人に言われるのと、仲良いって思ってる男の子に言われるのじゃ違うの!しかも!可愛いなんて!」
若干拗ね気味に言ったその言葉に俺が思った感想は、やっぱり可愛いじゃないか。と言うことだった。
でも、それを言った瞬間蹴られてしまったので、今度からは機を見ながら揶揄ってやろうと思う。
放課後になり、みんなも帰り、自分も帰ろうと席を立った時、いつもの癖で島村さんの方を見た。
すると、手でごめんというように手をあわせられたので、何かしら用事があるのだろうと一人で帰ろうと靴箱へ向かうと、
「おう。陽介。」
「ああ。俊吉か。」
俊吉から声をかけられた。
「一緒に帰ろうぜ。」
「珍しいな。」
「うっせ。彼女が今日は別のやつと帰るんだよ」
俺たちはそれこそ友達になった時は一緒に帰ったりもしていたのだが、俊吉には愛する彼女が出来、俺にも島村さんという友達ができたため、あまり一緒に帰るということはしなくなっていた。
「おめーこそ彼女は?」
「彼女じゃねーよ。島村さんな。」
揶揄うように言ってくる俊吉。
「ほら後ろみてみろ。」
「あ、あー。なんつーか、大変なんだな。」
そこには、何人かの女子に引っ張るかのように連れてこられている島村さんがいた。
きっとこれから女子会?というやつだろう。
「まあさ、彼女の都合がつかなかったもの同士久し振りに帰ろうぜ!」
「そうだな。」
「そう言えばさ、今日の朝なんで島村を抱っこしてきたん?」
「ん……そりゃな?可愛い可愛い島村さんを褒めてあげたらああなった。」
は?と言いたげな表情の俊吉。
「島村さんの耳元で可愛いとか言いまくった」
「あはははは!」
俺が事情を説明した瞬間傑作だと言わんばかりに大笑いする俊吉。
「お前、お前!ぷっくく……それでも付き合ってないのかよ……」
笑いながら馬鹿なことを聞いてくる俊吉に、
「んなことありえるかよ。島村さんは仮にも学校一の美少女と言われてんだから俺なんかも釣り合うかよ。」
と、冷静に返してやると、
「お前さぁ……ほんと、島村さんがかわいそうだわ」
と、めちゃめちゃ飽きられた後、
「ま、お前らしいけどな!」
「どういうことやねん」
なぜか馬鹿にされた。
解せぬ。
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