第一章
からかわれ慣れてない島村さん
「とぅ!」
例の如くどすっと衝撃が走る。
「島村さん?」
「んー?なに?」
「毎日俺の背中にダメージを与えるのをやめようか」
「えー!?楽しいのに!?」
なぜかはわからないが、島村さんは毎日登校途中背中に飛びついてきたりぶつかってきたりする。
今日はぶつかる日だったようで、よろけて少し前へ行ってしまった。
「でも……嬉しいでしょ?」
「……」
ひ、否定できねぇ……
彼女は可愛い。もちろん可愛い女の子にこれだけされるのだから、嬉しいといえば嬉しい。
「うれしい……」
「へ!?」
突然顔を赤くして手で隠す島村さん。
「……どうしたの?」
俺が可愛いと思ったことに若干の敗北感を覚えながら尋ねると、
「私に抱きつかれて嬉しいって……いつもなら否定するのに……反則だよ……」
「反則もなんもないだろ?」
思った以上に恥ずかしがってるやら嬉しがってるやらしている島村さんに自虐心がそそられる。
「可愛いね島村さん。そんな君と通学できて幸せだな?」
「や、やめてぇ!しんじゃう!」
ははは!いっつも揶揄われてる方だからめっちゃ清々しいわ!
「君が恥ずかしがってる姿も可愛いよ」
「ぴゅう……」
「へ!?島村さん?」
調子に乗ってもう一回からかってみると、島村さんはオーバーヒートして前に倒れそうになった。
急いで支えて大丈夫が聞いてみると、
「や、やっぱり沖田くんだめだよぉ!は、恥ずかしいのと、嬉しいのが……!あばばばば」
混乱している島村さんのおでこにデコピンをして、あいてっ!という彼女に落ち着けよ。という。
「は!?そうそう!沖田くんは私を揶揄っちゃダメなの!しんじゃうんだから!」
「え!?死ぬの!?」
「私が!」
「そっちが!?」
未だに混乱している様子だが、とにかく揶揄ってほしくないというのは伝わった。
……でも!かわいいから続けます。
「へにゃへにゃになってかわいいね」
「へぁ!?」
もう一回俺が揶揄う言葉をかけると、ゆーっくりこちらにもたれかかるように倒れてきた。仕方ないので、抱っこして学校まで持って行った。自業自得とは言え、まあ多少きつかったな。
……にしても、昨日のこと、全く気にしてなかったなぁ。
俺だけか?気にしてたの。と思いつつ、抱っこしたまま教室に入り、島村さんを隣の席に置く。
「は!?学校!?」
かばっと起きた島村さんは周りを見渡すと、ここが学校であることを判断した。
「私は、何をしてた?」
こちらを向いて聞いてくる島村さん。
「俺に揶揄われてたのは覚えてる?」
「そ、それは!覚えてる。」
「したら倒れた。」
「倒れたの!?まじ!?」
「まじまじ。」
そりゃ驚くよなぁ。自分が揶揄われてたのは倒れる羽目になるとは。
俺も今日のついさっきまでは人ははあんな倒れ方しないと思ってたからな。
「で、で、でさ、どうやって運んでくれたの……?」
嫌な予感がすると言わんばかりに頬を引き攣らせながら聞いてくる島村さん。
「普通に。抱っこで。」
「抱っこ?何抱っこ?どんなの?」
なぜか詳細に知ろうとする彼女に、苦笑いしつつ答える。
「お姫様抱っこってやつだよ。」
「ああああー!」
俺が答えた瞬間、彼女はショックを受けていた。
「す、すまん。不快だったか?」
そ、そうだよな。普通付き合ってもない男にお姫様抱っこされたくないよな。ごめんという気持ちを込めてそう謝ると、
「ち、違うよ!お姫様抱っこで、この教室までって……恥ずかしすぎ!」
顔を真っ赤にして、恥ずかしいと呟く島村さんは、いつも以上に小さく見えて、なんだかとても可愛かった。
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