プロローグ下 明日から大変だろうな……


俺と島村さんの交流は高校に入ってすぐに始まった。

彼女は可愛いと有名だったし、なによりはじめての席で隣同士になったのが大きかった。


彼女との交流は非常に楽しいもので、打てば響くと言わんばかりに即座に話題を面白く消化するところ見て、何度感心したかわからない。


当初はただの隣同士といった関係だった俺たちは、何度も何度も同じ席になったことにより、親しい友達といえるまでになった。

家に帰る時一緒に帰ったり、昼飯を一緒に食べたり、休日に一緒に遊びにいくこともあった。


「なのにどうしてこうなった……」


部屋の中で一人呟く。


今日この前まで……いやついさっきまで親しい友達だと、そう思っていた島村さんからされたキスは頭にこびりついてるが、もっと重要な部分があった。


「なんだよ、ファーストキスって……俺もだよ畜生……」


あの言葉が忘れられないのだ。責任を取られるというあの言葉が。

なんで俺?本当に意味がわからない。

俺は彼女のことが好きだと思っていても、恋愛的な好きとはまた違う感情だ。

彼女は俺のことが好きなのだろうか?

それはないはずだ。彼女は、学校でトップクラスでモテる。

俺のような男を好きになるはずなんてないだろう。よくよく考えれば、からかうためにしたと考えるのが妥当だろう。

しかし、そのためだけに学校であんなに顔を赤くしながらファーストキスをするようなことがあるだろうか。

彼女だって女の子だ。

ファーストキスは好きな人としたいだろうしな。


「あー!なんだよもう。」


混乱して、そう声を上げて、寝ようと布団を顔までかぶると、携帯が鳴った。通知の内容は俊吉からのメッセージで、


おあついですなー。いつから付き合ってたん?


というものだった。

俺は意味がわからず、


??どういうこと?


と、返信したが、


いやー。誤魔化しても無駄よ。お前島村とキスしてたじゃん。あんなに顔赤くして。


は?あいつ見てたの?


見てたな?

すまんがみえちった。でも大丈夫だぜ?俺以外は見てなかったっぽいから。


見られていたということです少し焦っていた俺だったが、そのメッセージを見て安心した。


見られていたとはいえ、見られたのが俊吉でよかった。

あいつはなんだかんだ口が硬いし、そうそう言いふらしたりするやつじゃないからな。


それでどうなんだよ。

べつに付き合ってないぞ

は?嘘だろ?キスしてたじゃん


はぁ……そうなるよなぁ。あんな学校の教室の中でキスなんかしたりするのはカップルくらいのもんだろう。


まあ……色々あったんだよ

そ、そうか……

ただ、付き合ったりとかはしてないから。

まあなんか……頑張れよ。


なぜか哀れみのメッセージが送られてきた。


 俊吉とのメッセージもひと段落して、さあ今度こそ寝ようと目を閉じて、今日を振り返った。

どっと疲れたなぁ。

数日分の疲れがあるような気がする。

ともかく、責任を取らせるというからには明日から何かしらしてくることは確実だろう。

明日からは何をされるか震えて警戒しなければならないと言うことか。

それでも、その明日からの生活が楽しく思えてしまうのは、きっと俺がおかしいからだと言うことはないはずだ。

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