突然キスしてきた美少女に責任を取らされそうです。
雨依
プロローグ
プロローグ上 突然の出来事
「沖田くーん♪」
どしっという衝撃と共にフワッと、良い香りが漂った。
「なに?島村さん。」
「んふふ……ごめんね?なんとなく。」
「さいですか。」
はぁ……と、ため息をつく。
高校二年生にもなって、よくもまあ……
「幼稚だな。」
「なにおう!?」
その言葉を発した瞬間、即背中から離れた島村さんは俺と臨戦体制をとった。
臨戦体制とは表現したが、体の小さい島村さんは小型犬の威嚇にしか見えず、かえって幼く見える。
ふふっと、笑いをこぼすと、諦めたように、ちぇっ、と、俺の隣にきた。
彼女は島村由良。焦茶の髪をセミロングにしており、緑色の鮮やかな瞳と相まって、より彼女の魅力を引き出している。
学校でも一二を争う美少女として認知されており、何度も何度も告白されるので、困るーと言っているところをよく見る。いちいちこちらをチラチラ見てくるので、モテない奴への自慢かと思うが。
「沖田くん。ぼーっとしすぎ。もう学校だよ?寝たらダメだよ?」
「わかってるけどさ。」
昨日は寝過ぎたせいか、全然頭が働かない。ぼーっとしていると、
「もー。しょうがないな。」
という声が聞こえた後、頬に柔らかい感触が伝わった。
「……え?」
「沖田くんにプレゼント!これで頑張るんだよ?」
じゃっ!といって駆けていく島村さん。
しかし、さっきの感触は確かに……唇だった。
「はぁ……何だったんだ?今日は。」
隣を見ると、いつものように友達とにこやかな表情で会話する島村さん。
そこには、全く朝のことを気にしているそぶりはない。
「おう、陽介!」
「あ、お前か。」
俺の名前を呼び捨てで呼んでくる、友人の厚木俊吉。
謎にイケメンで、運動もできるし、なんだか完璧超人のようだが、なぜか俺の友人でいてくれる優しい男だ。
「どうしたんだよ。朝っぱらから。」
「んあ?お前が浮かねー顔してたから煽りにきた。」
……優しい男だ!
「にしてもさ、本当にお前どうしたんだよ。」
「いや、寝過ぎた。」
「バカだろ」
ははっ!と笑う俊吉は憎ったらしいほど爽やかだ。
「いやー!お前のことだから、島村ちゃんにキスでもされたんかとおもったわ!」
「は?」
こいつ、まじか?やけに勘が鋭いなとは思ってたけど、こんなところで発揮しなくて良いから。
ふと、隣を見ると、髪の隙間から見える首筋が赤くなってるのが見える。
あ、聞こえたな。
俺は、きっと何も悪気はなく発しただろう笑顔の俊吉に、
「俊吉、時間だぞ。席もどれ」
……逃げた。戦略的撤退だ。
「そだな。お前、昼休みまでには体起こしとけよ。」
と言い残し、去っていく俊吉にを見つめていると、
「ね。沖田くん。」
と、鈴を転がすような声が響いた。
「どう?朝の。嬉しかった?」
朝のって、キスのこと?俺が答えられずにいると、
「ほっぺにしただけなのに大袈裟だなぁ。」
と、笑い、周囲をよーく見て、誰もこちらを向いていないことを確認すると、唇に唇を重ねてきた。
「……っぷは!うーん。これで沖田くんの眠気は飛んだかな?」
キス、された。視線を島村さんの方へ向けると、顔を赤くした彼女が囁いた。
「ファーストキス、なんだから、絶対責任取らせるからね。」
その日は全くもって何も集中できなかった。
しかし、それはきっと、真っ赤な顔で俯いている島村さんも同じだろう。
普段と変わらないと思っていたこの日が、どれだけ重要で、大きな1日になったかは、この時はまだ気づいてなかった。
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