第9話
「
空中に水の球を生成する。
が、すぐに形が崩れ始め、制御を失いそのまま地面にバシャン、と落下する。
「はぁ……はぁ……」
『まだ魔力制御が不慣れだな』
「はい、すみません……」
隠れ家での特訓生活開始から1週間が経過した。だが……。
(想像以上にきつい………!)
クロノスは魔法はイメージ力が強ければ強いほど強固なものになるとか言っていたが、幼い頃に魔法に触れる機会がほぼなかったので、全く魔法のイメージがつかない。
僕がうーん、と唸っているとアーシャが「やっぱり…」と口を開く。
「クロノス様、魔法の適性は測った方がいいのでは?」
「…………へ?」
「パベル様はクロノス様のように全魔法を使える訳では無いのですよ。ちゃんと適正に合った魔法を鍛えないと」
しばし思考停止。
「クロノスさん」
『…なんだ』
「僕、あなたと違いますからね?普通の人間ですからね?」
『……すまない』
痛恨のミスに「時空」の魔王もさすがに申し訳なさそうにする。
「じゃあ、魔法の適性を測りましょう」
アーシャはそう言って右手をこちらに差し出す。掴めばいいのだろうか。
僕はその手を握った。
「■■■■■」
僕が聞いたことの無い言語で詠唱が行われる。すると、自身の体から3つの淡く輝く光の玉が出てきた。ひとつは赤色で、ひとつは黄色、そして、紫色。
『ほう、炎、闇、雷の3属性適性か。人間では珍しいじゃないか』
「あなたが僕の中に入ってるのも影響してる気がしますけど…普通の人間は何個の属性を持つのが普通なんですか?」
『基本的には1つだな。時折、王族で2属性持ちが生まれることがある。後、勇者は大抵2属性だ』
勇者は基本的には属性を2つ持っているのか。
まぁ、適性が勇者より多いのはありがたいことだが。
「道理で今まで水属性の魔法をやっても上手くできないわけですよ」
僕は納得したように頷く。
「じゃあ、やってみます」
目を閉じて、燃え上がる炎をイメージする。
もっと、もっとイメージを膨らませろ。
炎をそのまま攻撃にして空中に放出するんだ。
「っ………!」
手に魔力が集まるのを感じる。水属性の技を使う時より何倍も集めやすい。
「
炎の斬撃が自身の手から勢いよく生み出され、そのまま壁に設置された的を分断した。
「できた……!」
初めて魔法を使った喜びに、思わずガッツポーズをしてしまう。
「おめでとうございます、パベル様」
『まぁ、1回の失敗もなしに出来たのに関しては及第点だな。威力、魔力量共に蟻以下だが』
「全く、あなたは素直に褒めれないんですか」
苦笑いを浮かべる。だが、1歩前進だ。
この調子で、ほかの魔法も覚えて、強くなっていかないと。
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それから、半月が経過した。魔法のコツも掴み、勝つとまでは行かないが、アーシャともいい戦いができるようになってきた。
だが、それと同時に、ずっと体内にいるからだろうか。クロノスの影響も強く受け始め、色々体に変化が現れ始めた。髪は色が抜け、黒色から白色に。だが、身体能力は13歳とは思えないほどに上昇し、だいたい1回の踏み込みで10メトル進むほどになっていた。そして、性格も以前より強気になっていた。
「それでは参りますよ、パベル様」
「こい!」
声掛けと同時に上に踏み込む。先程いたところにはアーシャの使う武具「
「
すぐさま身体能力向上の魔法を発動。着地し、炎魔法をアーシャに向けて放つ。
だが、当然のごとく鎖で相殺され、反撃される。
「くっ……!」
かろうじて避けたが、体勢が崩れたところに攻撃が飛んでくる。
「
地面と平行に
「
ギリギリで技を発動させ、地面から吹き出した炎で武具の軌道をズラす。何とか体勢を立て直すと続けて攻撃を仕掛ける。
(今俺が出せる最大を……!)
片手に炎魔法、もう片手に闇魔法を発動させ、均等に混ぜ合わせる。そして、標準を絞って………。
「
凄まじい地鳴りと共に技が発動される。
だが。
「消えた……」
そこにアーシャの姿はなかった。だが、このパターンは……
「後ろっ!」
「残念、上ですよ」
ドゴォッ!と地面に叩きつけられた。
思わず「うぐっ!?」と呻き声が出てしまった。
「また私の勝ちですね」
「上からなんて聞いてない……」
今までずっと真後ろからだったのに、今回に限ってまさかの上からだった。わかったとしても体の反射で後ろを向いてしまう……。
『アーシャには勝てるようにはなるんだな』
「分かってるよ、そんなこと。でも魔法操作があれ以上出せないんだ」
『じゃあイメージ力が足りん』
「お前もはやアドバイスそれしかしてないよな」
「まぁまぁ、落ち着いてくださいパベル様」
俺がむっとしながら話すと、アーシャが止めに入ってくる。
「パベル様も十分強いです。魔王軍で私に対抗できるのはクロノス様くらいですから」
「それはそれですごいけど」
特訓を始めて既に半月。果たしてどれくらい強くなっているのだろうか。久しぶりに外に出てみたい、そんなことを思った。
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