四月十二日

『ペシャリ』


昨日はとんでもない経験をした。

朝起きて、ニュースを見たが、宇宙人のことは何も言われてなかった。

きっと燃え尽きてしまったのだろう。


なんだか、今更になって気がかりになってきた。

もう忘れてしまおう。

他に楽しいことを考えることにしよう。


気を紛らわせるため、いつもよりも一時間も早く登校した。

校内にはだれもおらず嫌に静かだった。

私はトイレを済ませた後、図書館に向かった。


図書館の窓が開いていて、心地良い風が教室を駆け抜けていった。


「やぁ、君は虚儡 片小さんであるからして。今日はどんな本が必要なのだ?」


透明人間のペシャリがどこからともなく話しかけてきた。


「いや、今日は誰かとお話ししたくて……」


ペシャリは私を椅子に誘導して、まるまる一時間、一度も途切れることもなく喋り続けた。

彼の膨大な知識から数々のうんちくを引っ張り出して、私に聞かせた。

うんちくだけではなく、量子力学の問題点や、現象学が解き明かした人間の姿、犯罪心理に見る殺人鬼の心理など、難しい話を延々と喋った。


彼は数年前まである博士の助手をしていたが、彼は実験中の事故によって透明人間に変身してしまったらしい。

それを聞いたのは去年の春、入学してすぐのことであった。

なんともみょうちきりんな話だなと思うが、この世界は美しく歪んでいるのだから、いまさら何が起きても不思議ではない。


私は図書室を出て授業を受けた。

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