四月十一日
『隕石』
家の近くに隕石が落ちた。
反動で家の窓のほとんどが割れてしまった。
私は怒りに満ち満ちていた。
私は自転車を走らせて、隕石の落下地点を探した。
落下地点に到着すると、近くに自転車を止めた。
私のほかに隕石を見に来たものはいないようだった。
その頃には怒りというよりむしろ好奇心の方が勝っていた。
私は咄嗟に家から持ち出したナイフを見つめた。
歯が良く磨かれていて、反射した自分の顔に汗がついていた。
私は隕石に近づいた。
隕石の近づいていくと、人影が見えた。
気づいてないだけで、実は人がいたのかと思ったが、そこにいたのは宇宙人だった。
赤黒い体に数本の触手を持ち、触覚のような角が頭に二つほどついていた。
チャージマン研のジュラル星人に似ていた。
私は少しずつそのシルエットに近づいていくと、残り一メートル半ほどの距離に近づいた時、宇宙人は振り向いた。
宇宙人の触手の先には何かが握られており、それは銃のように見えた。
「*******」
宇宙人は何かを叫んだが、異星の言葉のようであった。
私の方に銃なものを向けている。
私の方に近づいてくる。
一歩
二歩
三歩
四歩
私との距離が残り五十センチになったとき、私は闘牛のごとく駆け出した。
宇宙人は、不意を突かれたようで、銃口から発せられた光線のようなものは、私の背後の木に当たったようだった。
私は宇宙人の腹部(?)辺りにナイフを刺し込みながら体当たりをした。
宇宙人は虹色の液体を吹き出しながら倒れ込んだ。
私はそのまま馬乗りになり、なんども宇宙人に刃を突き立てた。
宇宙人は銃のようなものを倒れた拍子に手放したようだった。
約30カ所ほどさした辺りで宇宙人は動かなくなった。真っ赤な一つ目を、見開いたまま。内臓は柔らかく、骨のようなものは見当たらなかった。
ポケットに入っていたカメラで自分を映すと、インスタにあげられている着色料てんこ盛りのソフトクリームみたいな姿になっているのが確認できた。
私は宇宙人を殺したのだ。
返り血がレインボーなので多少ポップにはなっているが、確かに私は宇宙人を残虐に殺したのだ。
しかし、人殺しをしたわけではない。宇宙人殺しに関する法律を聞いたこともない。
仮に私が殺した相手が人だとしても、正当防衛が成立するだろう。
人を殺してはいけない。
これは普遍的な事実に思えるが、例外は存在する。
他人の生命より自分を優先しなければいけない場面は存在する。
カルネアデスの船。
人を殺してはいけない理由を考えた。
同種で群れる性質である人間は殺しあうより協調しあう方が繁殖しやすいただそれだけの理由だった。
何やら、焦げ臭いにおいがした。
振り向くと先ほど光線が命中した木が炎上していた。
私はあわててその場を後にした。
数時間後、隕石が落ちた山ははげ山になっていた。
大規模な山火事になったようだ。
宇宙人の虹色の血はしばらくすると灰色になって、跡形もなく蒸発した。
私は持ち帰った銃のようなものをそっと押し入れにしまった。
明日は一限からなので、もう寝ようと思う。ぐーぐー。
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