四月七日
ガラクタ商店街の中を歩いていた。
伝記カレーの前を通り過ぎた時のことだった。
その時、首に何かが絡みついた。そのせいで大変息苦しかった。
その何かをひっつかんでみてみると、それはただ漠然とした不安であった。
漠然とした不安は、譫言のように将来の不安についてこぼしていた。
私はその不安の出所を探すために、不安のしっぽの先を探しに出かけた。
スマホの充電コードを手繰り寄せるように、本体にたどり着けるのではないかと思ったのだ。
スナックマミレを通り過ぎたあたりで右に曲がる。
マミレと何かしらの建物の隙間に不安は続いていた。
私はどうにかそこに入り込んで、不安の正体を掴むと、それは何とも言えない姿をしていた。
肌色で小さくて、冷たくて、顔のようなくぼみがあるが、それは顔としての機能をほとんど失っているように見えた。
私はついに漠然とした不安の正体を掴んだのだ!
しかし、だからと言って何かあるわけでもなく、私はそれを川に流した。
特に理由はないが、しいて言えばどことなく腹の立つ出来事だったからだ。
今日も今日とて虚しいばかりだ。
講義が終わる五分前に私はこっそり教室を抜け出した。
こうしないとブラックバスに間に合わないのだ。
今日は少し訪ねたい人があったのだ。
猫電車を途中で降りて、しばらく歩いていくと、尾車美緒がいた。
「やぁ、大学の帰りですか?」
びちょは私に尋ねた。私は首を縦に振った。
「今日はどう?大漁?」
私が訪ねるとびちょは体を震わして笑った。
びちょの体はスライムのような液状なので、面白いくらい良く揺れる。
「今日もハマチくんがほとんど連れて行ってしまいました。まぁ、釣ったところで川に返すだけなので、こちらとしては問題ないのですが」
びちょはサラリーマンだった時の名残で、どことなく他人行儀な敬語で話す癖がある。
私も最初は嫌だったが、敬語を治すより先に私の方がすっかり慣れてしまった。
「いつもすまないね。ハマチにも何かお礼をするように言っておくよ」
「いやいや、いいんですよ。彼、とても律儀で礼儀正しいんです。この間もほら」
びちょは私にルアーを見せた。ボカドの終音クミをかたどったルアーだった。
ハマチはびちょとソロの趣味を勘違いしているらしい。
まぁ喜んでくれているのなら、いいのだが。
びちょとしばらく話して帰宅した。
猫電車から見えた桜がとても美しかったので、明日からも頑張れそうだ。
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