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境界線」への応援コメント


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     誰しも、思春期の失敗は多かれ少なかれあるものではないかと思います。特に中高生の頃は、学校や教室という逃げ場がない空間の中でストレスを感じ続けている人が多いので、独特の緊張感や切迫感があります。閉鎖的な空間から卒業し解放された大人の立場では、どうしてあんなこと言ってしまったんだろう、どうしてあんなに意地を張っていたんだろう、と思うことも多いはずで、本作ではその辺りの、学生たちの不器用さが生々しく描かれているように思います。
     僕は本作を最後まで拝読した上でこの感想を書いているのですが、改めて読み返してみると、2人が仲違いしたきっかけはなかなかひどいですね。そんなこと言ったら機嫌を損ねて当然だよ、と思ってしまいます。とはいえ、文字になっているせいで余計にひどく見えている側面もあると思いますし、本人としては軽い気持ちで言っただけで、いつもの冗談や軽口とそこまで変わらない、どうして相手が機嫌を損ねているか分からない、といった具合なのでしょうね。思春期の少年少女って結構そんなものかもしれません。

     さて、余計なお世話かもしれませんが、本作を読む中で文章についていくつか気になったことがあったので、以下に書かせていただきたいと思います。今後の執筆活動の参考にしていただければ幸いです。
     原文から1文あるいは2文を引用した後、→「 」で僕なりの修正案を書き、下に解説を付けます。便宜上、修正案と呼んでいますが、別に「俺様の言う通りに書き直せ」とかそういうことではなく、「こういう書き方もあると思ったのですが、どうでしょうか」くらいのものです。解説も同じです。僕は別に日本語や言語学の専門家ではないので、偉そうには「これはこう直すべきです」とは言えないのですが、修正案を出しておきながら何の根拠も挙げないのでは誤解が生じる恐れがあるので、念のために「解説」を書いただけです。分かり切った話を書いている場合もあると思いますが、意思疎通に万全を期すためであり、他意はありませんので、ご容赦いただければと思います。
     修正案の提示には感覚的なもの、我ながら神経質だと思うものもありますので、あまり気にしすぎないでください。このコメント自体に誤字脱字があったらすみません。

    「僕は何も悪いことはしてない…悪いのはあっちだろ」
    →「僕は何も悪いことはしてない……悪いのはあっちだろ」
     小説を書くときは一般的に、段落の最初に1文字分の空白を作るというルールがあります。また、三点リーダー「…」は2つ以上繋げて、「……」のように用いるというルールがあります。これらのルールは意図的に無視している人も多いようで、彼ら彼女らはどうやらWeb小説をマンガやブログの延長と考えているようです。ですが、ルールを破って稚拙な印象を与えてしまうことはあっても、ルールを守って損をすることはありません。この小説もこれらのルールに沿うように書き直せ、とは言いませんが、今後小説を書く際にはこれらのルールに沿った書き方をすることをご検討いただければと思います。

    「数日前突然突き放された友人だったやつがいる」
    →「数日前に突然、友人から距離を置かれた」
     「数日前突然」でも間違いではありませんが、文字にすると漢字が連続して少し読みにくいので、修正案では「数日前に突然」とし、「、」を打ちました。
     「突き放す」という言葉にはたしかに「距離を置く」、「冷たくする」などの意味がありますが、作品序盤でいきなり「突き放された」と書くと、文脈が分からず唐突な印象になるので、もう少し分かりやすい慣用句の方が良いと思います。
     原文で「友人だったやつ」となっている意図は理解できますが、この時点では友人関係の破綻からまだ数日しか経っていないので、修正案では希望を残すために単に「友人」としました。

    「なんでだろうか」
    →「なんでだろう」あるいは「どうしてだろう」
     「なんで」は話し言葉のくだけた表現、「だろうか」は書き言葉のやや畏まった表現なので、そのままつなげることには違和感があります。この作品の地の文は登場人物の一人称による語りで、あまり畏まった表現は不自然なので、修正案では「なんでだろう」、「どうしてだろう」としています。

    「ただ一つ言えることは悪いことなどないことだ」
    →「ただ一つ言えるのは、僕に後ろ暗いことなどないということだ」
     「ただ一つ言えることは」は間違いではありませんが、この後、同じ1文の中に「こと」が2回出てくるので、くどくなるのを避けるなら「言えるのは」とした方が良いと思います。
     文脈で分からなくはないとはいえ、「悪いことなどない」だけではさすがに分かりにくいので、修正案では「僕に後ろ暗いことなどない」としました。

    「数日前の記憶をたどっても未だに気が付けない」
    →「最後に交わした会話を振り返っても、思い当たるようなことはない」
     この後に出てくる話を考えると、語り手もこの最後の会話の何かが日向さんの機嫌を損ねたことは察しているようなので、その意味で、「数日前の記憶」をたどる必要はありませんし、「数日前の記憶をたどっても」という言い方は不正確でもあると思います。
     ややこしく聞こえるかもしれませんが、「気が付けない」は気が付いている人の言い方です。たとえば、女性の恋心に気付かない主人公が自分で、「俺は彼女の恋心に気付けなかった」と書くと、「いや、気付いてるじゃん!」となりますね。

    「日向てさ、ゲームとかしないのかよ。新作出たってさ。」
    →「日向さ、あのゲームしないのかよ。新作出たってさ。」
     原文の「ゲームとかしないのかよ」という言い方は、相手(日向さん)がゲームをするか語り手が把握していない場合の言い方です。直後に日向さんが「しつこいな」と言っていますし、この後に出てくる話を考えても、語り手と日向さんはもっと前からゲームを共通の話題にしていたようなので、修正案ではゲームを具体的に限定して、「あのゲームしないのかよ」という表現にしました。

    「しつこいな。もう俺はゲームなんてやらないよ。ベースが最近はっまってさ楽しいよ。一緒にやらない。バンドとか。」
    →「しつこいな。俺はもうゲームなんてやらないよ。最近はベースにはまっててさ、楽しいよ。一緒にやらない、バンドとか?」
     話し言葉なので微妙ではありますが、語順を調整した方が自然な文章になると思います。

    「僕はいいよ。不器用だから器用でいいですね。あれだろう環境がいいんだろ。こちとりゃ騒音トラブルだよ。環境が良いとですね。こちとりゃアパートなんでね。相手が間違えてるよ。」
    →「僕はいいよ。君は器用でいいですね。環境にも恵まれていらっしゃる。こちとりゃアパートなんでね、楽器なんか弾いたら騒音トラブルだよ。誘う相手を間違えてるよ。」
     環境(家庭環境)が良いから器用、という言い分は分からなくはないですが、「騒音トラブルにならない家庭環境だから、君は器用になった」という話の繋げ方は、学生の会話にしても唐突すぎて不自然な印象です。修正案では、日向さんの器用さは器用さの話とし、「環境がいいんだろ」という話はそれとは別の話として並列することにしました。

    「すると一瞬黙り込んでいる日向がいた。しばらくしてようやく口を開いた」
    →「(すると)日向は黙り込んだ。ようやく口を開いたのは、しばらく経った後だった」あるいは「すると日向は一瞬黙り込んでから、口を開いた」
     もし日向さんが別の人と話しているところに主人公が通りかかったなら、「すると黙り込んでいる日向がいた」という表現でも良いのですが、そうではないこの状況では不必要に回りくどい表現になっています。
     修正案の( )は入れても入れなくてもよい文言という意味です。この箇所の場合、「すると」は入れても間違いではありませんが、僕の個人的な感覚としては、無くても理解するのに支障はありませんし、無い方がすっきりすると思います。
     原文の「一瞬」と「しばらくしてようやく」は相反する内容なので、どちらかを削り、その上で文のつながりを調整するのが良いでしょう。

    「と低い声で言われたので少し吃驚してた」
    →「あまりにも低い声(だったの)で、(少し)びっくりし(てしまっ)た」
     セリフの直前に日向さんが「口を開いた」という情報があるので、「と……言われた」と書くと、情報が重複してくどくなってしまいます。
     本作を読んでいると「少し」という表現が頻繁に出てきますが、文脈を考えると「少し」ではなさそうなことも少なくないので、意識して削ることを視野に入れていただければと思います。
     「吃驚」は間違いではありませんが、あまり一般的な書き方ではないと思います。ルビを振るか、ひらがなで書くのでないと、不必要に分かりにくくなるように思います。

    「まあ明日には機嫌が直るのだろうとと考えていたが話そうとするとどっかに言ってしまうとか違う教室に移動してしまうとか挙句の果てに隣の席なのに電車に隣に座る赤の他人のような扱いを受けている」
    →「まあ明日には機嫌が直るだろう(、)と考えていたが、話そうとするとどっかに行ってしまうとか、違う教室に移動してしまうとか、挙句の果てには、隣の席なのに、電車で隣に座っただけの赤の他人のような扱いを受ける」
     この1文に限ったことではありませんが、文や情報の区切りには、適度に「、」を入れないと読みにくくなります。
     「機嫌が直るのだろうとと」は「の」と「と」を省いて「機嫌が直るだろうと」で良いと思います。
     「どっかに言ってしまう」は変換ミス、正しくは「どっかに行ってしまう」ですね。
     「電車に隣に」は誤字で正しくは「電車で隣に」であるとして、「赤の他人」と好んで、または運命的に「電車で隣に座る」ことはないので、修正案では「電車で隣に座っただけの赤の他人」としました。

    「まさにアクリル板が何重にもありソーシャルディスタンスより遠い距離となっていた」
    →(「まさに」を削り)「アクリル板が何重にもあるソーシャルディスタンスより、距離が遠くなっていた」
     語り手と日向さんの間には実際にはアクリル板はないので、それをより分かりやすく書くのが良いと思います。

    「まるで今までの事ががなかったようになっている。なぜ過去を無かったようになってようになってしまったのだろうか」
    →「まるで今までの事がなかったかのように、僕たちの関係は様変わりしてしまった」
     「まるで今までの事ががなかったように」は「が」が余計、「まるで……かのように」は構文のようにしてワンセットで書いて、「まるで今までの事がなかったかのように」とするのが良いと思います。この部分と「過去を無かったようになってようになってしまった(→過去が無かった(かの)ようになってしまった)」は同じ情報なので、どちらかを削るべきでしょう。修正案では、これらの表現で結局何を言いたいのか明確にするために、「僕たちの関係は様変わりしてしまった」と書き足しました。

     最後に、僕なりに修正させていただいた第1話を以下に書いておきます。情報提示の具合やリズムをご確認いただければと思います。


    ――――
     僕は何も悪いことはしてない……悪いのはあっちだろ。

     数日前に突然、友人から距離を置かれた。どうしてだろう。ただ一つ言えるのは、僕に後ろ暗いことなどないということだ。最後に交わした会話を振り返っても、思い当たるようなことはない。

    「日向さ、あのゲームしないのかよ。新作出たってさ。」

    「しつこいな。俺はもうゲームなんてやらないよ。最近はベースにはまっててさ、楽しいよ。一緒にやらない、バンドとか?」

    「僕はいいよ。君は器用でいいですね。環境にも恵まれていらっしゃる。こちとりゃアパートなんでね、楽器なんか弾いたら騒音トラブルだよ。誘う相手を間違えてるよ。」

     日向は黙り込んだ。ようやく口を開いたのは、しばらく経った後だった。

    「もういい。」

     あまりにも低い声で、びっくりした。まあ明日には機嫌が直るだろう、と考えていたが、話そうとするとどっかに行ってしまうとか、違う教室に移動してしまうとか、挙句の果てには、隣の席なのに、電車で隣に座っただけの赤の他人のような扱いを受ける。アクリル板が何重にもあるソーシャルディスタンスより、距離が遠くなっていた。まるで今までの事がなかったかのように、僕たちの関係は様変わりしてしまった。
    ――――


     長文失礼しました。

    作者からの返信

    この度は私の作品を読んでいただきありがとうございました。若い時代にあることをテーマにして書いていました。些細な事で人との関係が崩れてしまうことを表現しました。
    また文章の指南をいただきありがとうございました。勉強になりこれからの創作活動に役に立つ知識が増えました。ありがとうございました。