c

 夢。雪原。猫が泳いでいる。

 空は限りなく青い。雪がどこからともなく落ちてくる。猫は雪の合間を縫う。猫には九つの命があり、今のところ永遠である。猫と旅をしている。どこから始まり、どこで終わるのか。たまに信号が見つかる。止まってみたりもした。やがて青になるだろうから。そう思うと本当になる気がする。なる。フードを深く被っている。手袋がなく、手をポケットに入れているが、冷たい気がして、時おり猫を抱く。何か喋っていた。特に意味はないのだろう。魚が落ちていたので分けて食べる。鱗が光っている。時が過ぎた。どれだけ過ぎたのか。空が青い。長い旅。何を置いてきたのか。それは裏表で、何を持ってきたのか。煙草があって、吸う。紫煙が昇り、雪になるのか。沢山の柱があって、それを順繰りに触った。猫は見向きもしない。ただ長い距離を歩くこと。ポケットには鍵があって、知っての通り、錆びている。錆。ざらついた、赤茶、必要のないセンテンス。縦穴があり、埋めていくものは何か。埋もれていくものは何か。穴というより柱の跡。後ろからブルドーザーが近づく。無人でしょう。雪を除けるというよりは、遊んでいる。駐車場はどこだろう。思考。思考は疲労を連れてくる。連なり、どこまでかはわからない。追って歩いたはずだ。今日はここまで辿り着いた。寝台、どこでもよい、仰向けになれること。そういえば猫。呼ぶと、いる。頼むから鳴いてほしい。空が青い。それに雪。目に入ってはたまらない。瞑ろうとするが、鼻先に触れるものは、しかし、祈りだ。雪は止まず、猫はどこまでも泳ぐ。目覚めは近い。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

非解決記録 saisei @saisay

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ