最初は、オリエンテーリングなど、興味なかった。

「大自然を駆け抜けたときの、爽快感! あれがたまんないのよね!」

「そう、なのか……?」

 姉が楽しいと言ったから、始めた。

「一緒に、頑張ろうね!」

「……ああ」

 ただ、それだけだった。


「合同練習会……、ですか」

「はい! ぜひ、参加していただけませんか?」

 都立高校でオリエンテーリング部の部長をしている氷神に、お馴染みの一本の電話が入った。相手は隣県の公立校の、同部の部長だ。

「一緒に練習をすれば、お互いにもっと、スキルアップできると思うんです! ですから、ぜひ! お願いします!」

 このイベントは、発生率が非常に高い。今までの経験から、氷神はそう踏んでいた。そしてまさに、その通りだった。

「……分かりました。こちらとしても、ありがたい話です」

「本当ですか!? ありがとうございます!!」

 何度も聞いた、夢城という男の声。――そして、何度も見た、村雨の面。氷神はあくまで冷静を装いながら、心の中では苛立っていた。

「具体的なプランは、こちらで計画しますね! また後日、お電話します!」

「……はい、ありがとうございます」

 この前の世界では、この合同練習会のときに、村雨に接近することができなかった。その前は、夢城のことを八つ裂きにして、近場の海に放り投げた。……思い出すだけで、頭が痛くなる。この世界では、果たして、どのように立ち回るべきなのだろうか。

「それでは、失礼します!」

 夢城の受話器越しに、村雨の声が聞こえる。その瞬間、彼は危うく、スマホを叩きつけそうになった。


 ――今度こそ、息の根を止めてやる。


 彼は再び、そう誓った。村雨に殺された姉のことを、何度も何度も思いながら。

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コンタリングO 中田もな @Nakata-Mona

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