第290話 毒を屠る刃災
◆◇◆◇◆◇
さて、マルベムが歓喜の声を上げている隙に、エンジュから獲得したばかりのスキルを使った融合を実行しておこう。
[スキルを融合します]
[【強欲王の支配手】+【万象の手】+【質量操作】+【物質操作】+【干渉ノ穂先】=【強欲神の虚空権手】]
[【業炎魔法】+【溟海魔法】+【天嵐魔法】+【大地魔法】+【煌天魔法】+【死冥魔法】+【爆撃魔法】+【氷獄魔法】+【雷霆魔法】+【星動魔法】+【幽影魔法】+【次元魔法】+【理力魔法】+【樹界魔法】+【混沌魔法】=【始源魔法】]
[特殊条件〈始源魔法保有〉〈大賢者保有〉などが達成されました]
[ジョブスキル【
[保有スキルの
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
おお、なんか沢山ランクアップしたな。
ただ、ランクアップしたのは嬉しいが、おかげで今の融合で余裕ができたキャパシティの殆どが埋まってしまった。
まぁ、特殊なマスタークラスが一つと、魔法系のキングクラスが六つも増えたのだから当然か。
「戻れ、アトラス」
俺からの命令を受けたアトラスが元いた〈強欲の神座〉の空間へと帰還していった。
近くにいたアトラスが一瞬で消えたことに気付いたマルベムが、嗤い声を上げるのを止めて周囲を警戒しているのが見える。
じきにアトラスが送還されたということに気付くだろうから、その前に六大精霊達とアモラとルーラも送還しておこう。
「大丈夫なのか、ご主人?」
「ああ。アレは生きたまま捕える必要はないからな。普通に殲滅するだけなら、お前達の力を借りるまでもない」
代表して尋ねてきた
「オイラ達それぞれよりは強いみたいけど……逆に言えば、その程度とも言えるか」
「確かに、今のサラマンダー達なら全員で挑めば勝ち目はあるだろうな。だから、心配する必要はない」
「みたいだな。それじゃあ、今の形態も解くぜ」
星冠形態を構成していた力が霧散し、六大精霊達がマスコットキャラ感のある省エネ形態へと戻った。
その大きな力の変化に気付いたマルベムが上空にいる俺達を見上げてくる。
「……手駒ヲ退カセルトハ、余裕ノツモリカァ、勇者ヨ?」
「そのつもりだが? 真の魔王の復活ならまだしも、魔王の残骸風情には俺のみの力で十分だからな。まぁ、もっとも、今のオマエが俺に全力を出させることができるか疑問だがな」
「ギャハハハハッ、人間風情ガ随分ト吠エルジャナイカ……ガァッ!!」
俺の言葉を嗤ったマルベムがブレスを放ってきた。
閃光の如き鋭いブレスの射線上に白騎士達を移動させて盾にしたが、三体合わせても十秒も耐えられなかった。
流石は龍のブレスだ、と思いながら発動させた【天鎧災翼の巨牙城郭】で受け止めると、その間にアモラとルーラの精霊同化状態を解除する。
「「ピピィッ!」」
「やる気に満ち溢れているところ悪いんだが、アモラとルーラも送還するからな」
「「ピィッ!?」」
「近いうちにまた戦う機会はあるから、今回は譲ってくれ」
「「ピィー……」」
『話はついたみたいだし、オイラ達は戻るよ』
「ああ、ご苦労様」
ちぇー、みたいに鳴く二羽の頭を撫でてから、六大精霊達と共に二羽も送還した。
その直後に【天鎧災翼の巨牙城郭】による半透明の複合鎧型障壁がブレスに破られた。
貫通してきたブレスを難なく回避すると、改めてマルベムの動きを注視する。
「魔王であって魔王でない、か。経験を積ませるには都合が良いな」
【無限宝庫】から〈
「神器ノ刀ヲ納メルトハ、舐メヤガッテ!!」
度重なる【挑発】に怒髪天を衝くマルベムの肉体が変化するのを眺めつつ、エンジュから手に入れた【背水精進】を活かすために【
【背水精進】の効果を簡単に言うと、自らに不利な状況であればあるほど獲得経験値が増加する成長系スキルだ。
経験上、真の復活でない今のマルベムを倒しても経験値が得られるはずなので、【背水精進】の試しがてら獲得経験値を増やしてみることにした。
とはいえ、細かく封印を分けるのは面倒なので、大雑把にこの戦闘とその直後で使用する計五つのユニークスキルのみを残して、それら以外のユニークスキルは全て封印する。
【萬神封ずる奈落の鎖】による能力封印を解除するには多少時間がかかるので、即座に使うことは出来なくなるが、そうでなくては【背水精進】は効果を発揮しないだろう。
ついでに手に入れたばかりの【始源魔法】も含めたマジックスキルもまとめて封印しとくか。
これだけ制限すれば、おそらくレベルアップできるだろう。
ブレスレットのように手首に巻き付く
それぞれの頭部からリンファの力を感じるので、エンジュが自らの身体に取り込んだ二つの金符をマルベムが更に吸収したようだ。
あと一つ金符と同化した
「忌マワシキ女狐ノ牙モ今ヤ我ノ物。コレヲ喰ラッテモ余裕デイラレルカッ!!」
マルベムの左右の頭部から放たれてきた【星喰ノ牙】の力を内包した二筋のブレスを、【
【神滅ノ終喰牙】のオーラとマルベムのブレスを受けてアルヴドラが軋んでいるが、この経験もアルヴドラの成長に繋がるはずだ。
「エエイッ! 何故我ガ毒ガ効カナイッ!?」
最初にブレスを撃った後から元の頭部の口からは、無色無臭の毒が吐き出されていた。
〈悪毒の魔王〉の称号を失ったとはいえ、死骸となってからも長きに渡って毒気を吐き出し続けていたことから、〈悪毒〉の力自体はあまり失っていないと思われる。
痺れを切らしたかのような今のマルベムの発言もそれを裏付けているが、ひょんなことから〈悪毒の魔王〉に由来した特別な毒を事前に摂取できる機会があった俺には耐性があるので全く効果がない。
戦闘中に初めて体験していたら
これも高められた幸運値のおかげかもしれないな。
左右の頭部が連射してくるブレスを捌いていると、中央の頭部から魔法を構築している気配を感じた。
〈悪毒の魔王〉マルベムが有していたユニークスキル【
目の前にいるのは本物のマルベムではないが、本物のマルベムの魂の残滓ではあるため、魂に付随するユニークスキルの力を使えてもおかしくはない。
そんなことを考えていると、ブレスを撃ちながら飛び上がったマルベムの周囲に数百もの魔法陣が展開された。
それと同時にマルベムの身体から肉片が剥がれ落ちると、その一つ一つが毒龍や毒蛇へと瞬く間に変化していく。
「死ニ晒セ、勇者ッ!!」
連射重視から威力重視となった二筋のブレスが放たれるとともに数百の魔法も発動する。
それらから数瞬遅れて、生成された毒龍と毒蛇の大群からも無数のブレスや魔法が放たれてきた。
「ーー〈錬剣〉。〈刻滅ノ剣〉」
神器〈
〈錬剣の魔王〉が有していた能力を再現し使用できるこの力を使って時間停止能力を持つ魔剣〈刻滅ノ剣〉を生み出し、その能力を発動させる。
俺以外の全てが止まった空間で、更なる力を行使した。
「ーー〈錬星〉。〈終喰ノ剣〉」
アルヴドラが纏う黒金色のオーラを素材にして、権能【錬星神域】で同色の擬似神剣〈終喰ノ剣〉を生み出した。
「これで準備は完了、っと」
魔剣〈刻滅ノ剣〉が崩壊して再び時間が動き出した瞬間、迫り来るブレスと魔法を前にして、擬似神剣〈終喰ノ剣〉を対価にスキルを発動する。
「ーー【
次の瞬間、目の前の空間の至るところから大小様々なサイズの〈終喰ノ剣〉が出現し、術者である俺以外の全てのモノを自動的に貫いていく。
まるで天災のように猛威を振るう無数の剣は、その刃でブレスを魔法を、毒龍を毒蛇を、そして
サイズを除けば、手の中で崩壊していく〈終喰ノ剣〉のランクや能力を完全にコピーした擬似神剣達によって目に映る全てのモノが一方的に屠られていく様は、まさに
対価に使った武器を失う以外にも、味方にも被害を及ぼす類いのスキルであるという理由からこれまで使わなかったが、その判断は正しかった。
手に入れた時にテストした時とは違って、今の俺ならある程度は標的を絞れるようだが、確実ではないので今後も味方がいる状況では使わないだろう。
今回も闇の結界内という視界が制限された閉鎖空間でなかったら何処まで刃が届いていたのやら……。
対軍スキル、いや、俺が考えている使い方が実現できるならば、対
「まぁ、何はともあれ、爽快ではあったな」
崩壊した擬似神剣の最後の一欠片を振り払うと、目の前の景色を埋め尽くしていた無数の擬似神剣が一瞬で消滅した。
まるで幻のように全ての擬似神剣が消えた後には、毒龍と毒蛇の死骸の山と、瀕死状態のマルベムが倒れ伏していた。
あれだけ斬り刻まれてもまだ再生しようとしているので、時間が経てばまた動けるようになりそうだ。
取り込んだリンファの力が凄いのか、エンジュの式神化の術が凄かったのか、単にマルベムの生命力が強いのか……全部かな?
「グゥッ、ガアッ、何者ナノダ、貴様ハ……ッ!?」
「一応勇者だが?」
自分でも俺のことを〈勇者〉と呼んでいたのに何を言ってるのやら。
手に持っていたアルヴドラを手放すと、【強欲神の虚空権手】の念動力を使ってアルヴドラを加速させ、マルベムの身体のとある一点を貫かせた。
龍の肉体を貫く音以外にも、最後の方に何かが割れたような音が僅かに聞こえた。
「やっと見つけた。オマエという死した存在を成り立たせているのは依代があってのこと。黒龍剣は
「オ、オノレ……」
〈
「そして、〈悪毒の魔王〉に由来する依代らしきアイテムは二つあった。これら二つを破壊したら、どうなると思う?」
「死ネェッ!!」
マルベムの三つの顎が開かれ、横合いから俺を噛み砕こうとしてきた。
【星喰ノ牙】の力を宿らせた牙は怖いので、近付かないでもらおうか。
「ーー
【煌血の大君主】の力で支配したマルベムの血を巨大な複数の血の長槍と化し、それらで三つの頭部を貫いてマルベムをその場へと縫い留める。
あと数メートルの距離で止まっている龍牙には視線を向けず、納刀状態のエディステラを鞘から神速で抜き放ち、マルベムの体内に隠れていた球体形態の〈
「ガッ、ア……」
最後の依代を破壊したことによる断末魔の悲鳴や絶叫などはない。
直前までの喧しさが嘘のような静かさで、マルベムは再び生命活動を停止させた。
[スキル【暴虐ノ風】を獲得しました]
[スキル【悪意の侵言】を獲得しました]
[スキル【風霊の王】を獲得しました]
[スキル【魔王の偽魂石】を獲得しました]
[スキル【龍王因子】を獲得しました]
[スキル【毒入りの聖杯】を獲得しました]
[神器〈
[討伐対象から財物が
[アイテム〈
狙い通りマルベムの討伐で基礎レベルが上がったことを喜びつつ、数少ない戦利品の確認を簡単に済ませる。
それから【
その最中、マルベムの死骸の中から、自らの力や記憶が奪われないように封印処理が施されたエンジュの魂を発掘できた。
エンジュの魂を【死喰魂滅】の応用で一先ず保管すると、俺が斬り裂いた〈魔龍王の毒幕衣〉の中にあった彼の肉体も回収する。
「えっと……あったあった。やっぱり刀も一緒の場所か」
内側から脱出しようとしたのか、球体形態の〈魔龍王の毒幕衣〉に探していた伝説級の刀が突き刺さっているのを発見した。
ただ、どういう作用の結果なのか、この刀と刀に同化していたリンファの力、そしてマルベムの力の三つが一つに混ざっており、元々あった刀の銘が消え去った上で、擬似神刀の状態で固定化されていた。
「ふむ。このままだと能力はマトモに使えないか。ちゃんとした材料と融合させれば本物の神刀になりそうだな」
実用性はさておき、神刀の二刀流が実現できるかもしれないので、この無銘の擬似神刀は必ず完成させるとしよう。
龍の体内から取り出したことを考えると、完成した神刀は〈アメノムラクモ〉という銘でも付けるか……いや、語感的には〈アメノハバキリ〉や〈カムド〉の方が良い気もするな。
まぁ、完成した際に自動的に名前が付く可能性もあるので、全く別の名前かもしれないが。
「完成品の能力次第かな。ん? これは、黒龍剣の力を吸収したのか?」
【強欲神の虚空権手】で手元に引き寄せたアルヴドラの存在感が増していたので確認したところ、等級が伝説級下位から中位へと上がっていた。
新たに【嵐龍霊装】という第四能力が増えており、黒龍剣こと〈荒れ狂う黒煌の龍剣〉の能力である【狂風魔刃】【黒鱗龍体】【身蝕風禍】【風龍煌誕】【禍い侵す龍の風爪】を統合したような力らしい。
期待していたマルベムのユニークスキルの力は得られなかったが、間接的に種族の力ーーマルベムは風龍系の龍だーーは得られたので良しとしよう。
「さて、黒龍剣を壊してしまったわけだが……こうして材料はあるし、友好の証がてら新たな黒龍剣でも作ってやるかな?」
今後の龍煌国との折衝に思いを馳せつつ、旧都へと戻る前にマルベムの死骸を【
最後に残った毒龍と毒蛇の死骸の山については、称号〈黄金の魔女〉の
マジックスキルは一括で封印中だが、〈黄金〉の魔法は称号由来なので使用可能だ。
女性体での使用ではないので消費魔力量はかなり増えているが、【
「『
足元から展開された黄金の魔法陣が毒龍と毒蛇の死骸の山を魔力粒子へと分解して魔法陣に吸収していく。
死骸だけでなく四散した血肉も含めた全てが魔力粒子となって吸収されると、黄金色の魔法陣が虹色に明滅する。
脳裏に浮かぶ〈蒐獲可能物一覧表〉の中から蒐獲物を選ぶと、手元に選択したアイテムが創造された。
「コレは
武闘大会の会場に残している
どうやら自分自身の【星喰ノ牙】を使って、奪われた自らの力で構築された封印術を徐々に削っているみたいだ。
破壊する場所を間違えると手痛いカウンターが発動する仕組みなのだが、実際にその強引な方法で解けようとしているのだから理不尽だな……。
【
【
封印解除してもすぐには使えないので、それなら【星羅万象】で地道にやった方が早い。
旧都に戻ったらまた暫くは忙しくなりそうだが、得られる利益も大きいので頑張るとしよう。
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