第260話 錬剣の魔王 前編
◆◇◆◇◆◇
「ーーまずは耐性を確認しようか。『
取り出したままの〈
中心の〈錬剣の魔王〉を拘束する立体型魔法陣が構築され、その中心部へと発動砲塔を向けた魔法陣が全部で三十六個形成。
更に、その三十六個の魔法陣の位置に追加で二つの魔法陣が追加されたことで、元々の魔法陣と合わせて三つの魔法陣が三角形の陣形を取り一つになった。
計三十六個の三重魔法陣の術式構成が基本六属性特有のモノへと六個ずつ均等に変化すると、各属性の攻撃魔法がランダムで放たれていく。
光と闇を除いた四属性については、それぞれの派生属性の攻撃魔法も行使されている。
だが、復活中に行使した『
単一属性の攻撃魔法以外にも複数の属性を組み合わせた複合魔法も行使されていたが、それらも単一属性の時と結果は変わらなかった。
とはいえ、威力が減衰しても無効化されるほどではないため、数の暴力の前に確実にダメージが蓄積されていた。
「炎、水、風、土、光、闇、爆裂、氷、雷、重力にそこまでの差は無さそうだな」
「◼️◼️ーー◼️」
数多の攻撃魔法をその身に受けていた〈錬剣の魔王〉が、全身から大小様々のサイズの魔剣を生み出すと、周囲の攻撃魔法に向かって射出してきた。
その数えきれない数の魔剣が直撃した攻撃魔法が、属性や事象の種類に問わず触れた瞬間に消滅、または削られていく。
下級や中級といった低ランクの攻撃魔法は一撃で消滅していたが、上級、戦術級と上がっていくに連れて長く保っていた。
戦術級ほどの魔法強度と魔力密度ならば、十全とまではいかないが魔法効力を残した上で直撃するまで保っているようだ。
あとは、氷塊や岩といった純粋な質量攻撃系の魔法に関しても、物理的な耐久性がある分だけ多少はマシらしい。
「……〈破魔〉、いやこの特効具合は〈滅魔〉レベルの対魔法効果だな」
良くも悪くも、各種魔法が〈錬剣の魔王〉にどの程度効果を発揮できるかは分かった。
『封滅の六芒星魔陣』も消滅したのとある程度の検証も済んだので、今は使わない三天魔導宝杖を【無限宝庫】へと収納しておく。
それにしても観客が多い。
どうやら〈星戦〉の定められた
アークディア帝国は当然として、エリュシュ神教国、賢塔国セジウム、エドラーン幻遊国、ロンダルヴィア帝国、ファロン龍煌国、レンブレン商業連邦と有名どころばかりが、何かしらの遠隔視手段で覗き見をしているみたいだ。
また、それぞれの国から伸びてきている遠隔視は一つではないことから、一個人レベルでも覗き見られているらしい。
国家単位でこれだけいるなら、個人ではそれ以上の数がいるのは当然のことだろうな。
最後に勇者と魔王の星戦が行われたのが百年以上も前だから、この注目度の高さも当然か。
『
流石に個別で遮断することは出来ないからな……まぁ、宣伝効果は抜群だから構わないか。
勇者として魔王と戦うことを決めた時から予測できたことなので、俺の力が晒されるのは今更だ。
それでもエクスカリバーの存在と【
欲を言えば、それ以外の力も出来る限り秘匿したいところだ。
「まぁ、出し惜しみして負けたら笑えないから
ユニークスキル【
魔王へと向けたエディステラの切っ先から、虹色の光が混じった黄金の雷が幾重にも放たれていく。
まだだ。この程度では終わらせない。
「〈
【強欲君主の大罪竜鎧】の〈貪喰竜翼〉を大罪竜鎧共々顕現させてから【
黄金に染まった貪喰の翅を弾丸として魔王に一斉掃射する。
【
虹金色の雷が魔王の巨体を貫くと金属の身体の内外を灼いていく。
雷の猛威に晒されている身体に着弾した貪喰翅弾は、その黄金色の
「◼️◼️◼️◼️ーーーッ!?」
「分かりやすい悲鳴だな……それが次の手か」
魔王の身体から周囲の地面へと魔力が放たれると、魔王の魔力に侵された大地が金属に変質していく。
鋼色の大地と化した地面から次々と大小様々のリビングアーマー種が生まれてくる。
凄まじい速度で生成されていくリビングアーマー種の強さは、大体AランクとSランク相当の魔物ぐらいだろう。
錬装剣越しに八錬英雄達が使った時とは異なり、生成速度以外にもリビングアーマー自体の質も高い。
低品質のアイテムと高品質のアイテムみたいに違うあたりは、本来の使い手故といったところか。
生み出されたリビングアーマー達は二手に分かれていた。
片方は〈錬剣の魔王〉の身体を侵す貪喰翅弾の群れを物理的に排除するために動き出した。
そして残るもう片方は、背中に新たに外付けされた翼のような二つの大剣の飛行能力を使って次々と飛翔してきた。
飛翔目的は当然、空を飛んでいる俺との戦闘のためだろう。
「過去の記録にある力よりも派手で強力だな。どうやらただ封印されていただけではないらしい」
飛翔してくる千を超える数の最上位リビングアーマーの群れに向かって【雷霆招来】を行使した。
更にユニークスキル【
それらに【星界の大君主】の【
[特殊条件〈魔鎧兵大量討伐〉〈魔鎧兵の天敵〉などが達成されました]
[スキル【魔鎧兵種殺し】を取得しました]
〈錬剣の魔王〉との一戦までに結構な数のリビングアーマーを倒してきたはずだが、種族特効系スキルを今頃になってやっと取得できた。
これまでに倒したリビングアーマーは、錬装剣に封じられた力を利用して生成された魔物達だ。
今になって取得できた理由として考えられるのは、おそらくこの辺りだろう。
「◼️◼️◼️ーー◼️◼️ー◼️」
空飛ぶ金属の群れを駆逐していると、魔王が耳障りな金属音声を発してきた。
その声に呼応するような地響きと共に、十数メートルサイズの巨大な魔剣が周辺の地面から幾つも生えてくる。
それらの巨大魔剣の剣身からオーラが発せられた瞬間、リビングアーマー達を蹂躙していた雷と嵐が消滅した。
「
【神薙斬り】を発動させると、周囲の巨大魔剣に向かってエディステラを振り抜く。
一撃で全ての巨大魔剣を叩き斬るが、その時には最上位リビングアーマー達が至近距離まで接近していた。
「舐めるなよ、魔王の玩具風情が」
数多の身体強化を受けている状態の身体性能を最大限に活かし、全力の斬撃を周囲に解き放つ。
数百体の最上位リビングアーマー達がそれぞれの武器を振るってくるよりも速い斬撃を数十、数百と刻み討ち滅ぼす。
有象無象を斬り払うと、再発動した【神薙斬り】で刀身のオーラを伸長させて〈錬剣の魔王〉へと振り下ろした。
だが、〈錬剣の魔王〉が振り上げてきた白剣によって斬撃が受け止められた。
先ほどの巨大魔剣とは違い、本気の斬撃を受けても白剣は斬られるどころか傷一つ付く様子はない。
明らかに普通の魔剣ではないため【
「◼️◼️◼️ーーッ!」
「チッ。対神器の剣とは、何でもアリだなッ!」
エディステラの巨大な黒い斬撃を受け止めた、〈錬剣の魔王〉が瞬時に自らの身体から生み出した禍々しくも美しい白剣に思わず悪態を吐いてしまう。
一体どこまでの種類の剣を作れるかは知らないが、ここまでに生み出した剣を見るに此方の力に対応した剣を生み出すには、多少時間が掛かっているように見えなくもない。
つまり、初見の一撃は普通に通じる可能性が高いということだ。
「結局のところ、一気に攻めろって意味だよな!」
ユニークスキル【
その左眼と【
[対象を融合します]
[〈黄金の眼望〉+〈複合魔眼〉+〈氷毒死泉〉=【
獲得した魔眼を左眼だけでなく右眼にも顕現させると、対神器の白剣を直視する。
瞬く間に白剣に
対神器能力を失ったどころか剣ですらなくなった白剣が叩き折れ、そのままの勢いで黒い斬撃が〈錬剣の魔王〉の巨体を袈裟懸けに斬り裂いていった。
「◼️◼️◼️◼️ーーッ、◼️◼️ーッ!?」
「〈重ねて死ね〉、【
背中の【
一つでも凶悪な破壊力を持つ神災音波が、〈錬剣の魔王〉のいる位置で八つ全ての神災音波が合成され、その破壊力は八倍以上に跳ね上がる。
その
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