第248話 神域権能級
◆◇◆◇◆◇
ブレイズ要塞への夜襲騒ぎから一夜が明け、地平線から顔を出した太陽が再び地平線へと沈んでいく時間帯になってからやっと暇ができた。
ここまで時間が掛かったのは、負傷者の治療だけでなく、破損した城壁の一部や防衛設備の修復などを手伝ったことが原因だ。
昨夜から働き詰めの重労働だったが、この身体は非常に丈夫なので肉体的疲労はそれほどでもない。
一方で精神的疲労はそれなりに感じているので、心身を癒すべく【
スーッと疲れが取れたのを確認すると、分身体をブレイズ要塞に置いて本体は異界にある固有領域〈強欲の神座〉へと移動した。
ここに移動したのは落ち着いた環境で【混源融合】を行うためだ。
今回の融合は、これまでのスキル合成や融合の中でも最大級の素材を投入することになる。
なので、まずは願掛けも兼ねて運命系の力を強化しておくことにした。
これまでの合成や融合の成果物に不都合なモノは無かったが、今回に限ってというパターンもあるので、使う素材的にも念は入れておきたい。
[スキルを融合します]
[【
この【財産と繁栄司る運命】と素材に使わなかった【天運招く黄金竜蛇】、そして【
「さて、三つとも発動させて準備もできたし、本命の融合をするか」
今回の融合目的は新たなスキルの獲得であり、使用する融合素材のメインは十個の魔権系ユニークスキルだが、これまでのスキル合成や融合とは異なり非物質であるスキル以外にもアイテムという物質も融合素材に使用する。
スキルとアイテムを融合させることができるのも、【強化合成】にはなかった【混源融合】の特徴だ。
使用するアイテムは、大陸オークションで落札した〈否災護陣の指環〉と【混源の大君主】の力で生成できる〈始原ノ泥〉だ。
指環に関しては各種スキルによる融合への導きだが、創造物に高い創造補正が掛かる〈始原ノ泥〉を使用することについてはなんとなくだ。
手のひらの上に指環と黒い泥を出現させると、脳裏で十個の魔権系ユニークスキルとそれ以外のスキルを選択してから【混源融合】を発動させた。
足元が黒く染まり、そこから伸びてきた黒い手が最初に指環と泥へと触れると、俺の身体にも無数の黒い手が群がり包み込んでいく。
やがて、黒い手が黒い卵殻のような形を形成する。
真っ暗になったなと思っていると、程なくして頑丈そうな殻が霧散し、黒い魔力粒子状となって俺の身体に吸収されていった。
[対象を融合します]
[【
[一部の条件を満たしていないため、対象ユニークスキルの能力が制限されます]
[
[偉業〈神域の異能を発現せし者〉を達成しました]
[称号〈神権発現者〉を取得しました]
[偉業〈神域の異能を創造せし者〉を達成しました]
[称号〈神権創造者〉を取得しました]
[特殊条件〈神権創造者〉〈強欲君主〉などが達成されました]
[ジョブスキル【
[ジョブスキル【
ふむ、予想通り上手くいったな。
新たに取得した称号から、先日取得した称号〈創造の勇者〉の時と同様に、前の異世界由来の神域権能級ユニークスキルは数に含まれておらず、【神魔権蒐星操典】が俺にとって初めての神域権能級ユニークスキルになるようだ。
結構キャパシティに余裕が出来たし……感覚的にもう一つもいけるか?
すぐさま次の融合に必要だと思われる素材を用意すると、再度【混源融合】を行使した。
再び俺自身と全ての素材を内包した凄まじい存在感を放つ黒い卵が形成される。
やがて、先程と同じように卵が魔力粒子状に解け、その全てが俺の体内へと入ってきた。
[対象を融合します]
[【幽世の君主】+【
素材に使用したスキルが【神魔権蒐星操典】の時よりも少ないためキャパシティに空きは生まれず、逆に出来たばかりのキャパシティの空きの殆どが【冥府と死魂の巨神】によって埋まった。
リーゼロッテの【
大丈夫だと確信してはいたが、少し不安なのでアルヴァアインにいるリーゼロッテの所持スキルを【
「……良かった。ちゃんと元のスキルはあるみたいだ。それにしても、こっちのには使用制限は無いんだな」
【強欲神皇】と【
予想はついてるが特に困るわけでもないのと、【神魔権蒐星操典】の内包スキルで制限されているのは七個中二個だけなので放置でいいだろう。
視覚的にも確認するために、眼前に新たに取得した二つの神域権能級ユニークスキルとその内包スキルを表示してみた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
・【
【
・【
【
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どれもこれもヤバそうな響きの名前の内包スキルだが、その効果はスキル名に相応しいモノばかりだ……流石は神域の力と言うべきか。
取り敢えず、一つ一つ軽く確認してみよう。
まずは【神魔権蒐星操典】の【魔権顕現之書】だが、これは名前の通り魔権系ユニークスキルを使用するためのスキルだ。
キャパシティを圧迫せずに、この内包スキルの内部に保管された魔権系ユニークスキルを使用できるのが一番の利点だろう。
今は融合素材に使われた十個の魔権系ユニークスキルの力しか使えないが、新たに魔権系ユニークスキルを獲得次第この【魔権顕現之書】に自動的に統合されていく仕様らしい。
加えて、これまでは【強欲神皇】の強奪の力で他者から奪うしか入手手段は無かったが、固有特性〈魔権蒐集〉によって獲得は容易になったようだ。
他のスキルで詳細を調べたところによれば、魔権系ユニークスキルを所持している者を肉眼で直視するだけで魔権系ユニークスキルをコピーできるとのこと。
中々イカれた性能の固有特性だが、この肉眼の基準がどの程度なのかは不明だ。
本体よりも能力が劣る分身体の肉眼でも可能なのか、サングラスなど余計なフィルター越しでも可能なのか、など気になる点は多い。
まぁ、その検証については【魔権顕現之書】の他の力と含めて追々調べるとしよう。
【天悪顕現之書】に関しては、そのまま天使系と悪魔系を対象にした最高位の魔物顕現能力だ。
使った融合素材的にも順当な力の内包スキルなので特に触れることもない。
【星刻召喚之魔書】は魔法スキル系の内包スキルだ。
分類的には以前、幻主アイリーンからコピーすることとなった魔法スキル系内包スキル【
【黄金魔神の指環】は少し複雑だが、簡単に言えば特別な力を持つ黄金色の指環を顕現し装備する内包スキルということになる。
両手の全ての指に嵌められる数を顕現できるため同時に最大十個の指環が存在できるようだ。
十個全てを嵌めた時に最大効力を発揮するらしいが、これもまた検証はいずれ行うので今はこの辺にしておく。
【神殿創造主】は、融合素材に使ったユニークスキル【輝かしき天上の宮殿】の完全上位互換と思っておけばいいようだ。
【輝かしき天上の宮殿】で使えた力は変わらず使える上に強化されているので、これまで通り魔力を消費して建造物を創造することができる。
「【神魔権蒐星操典】はこんなところか。次は【冥府と死魂の巨神】だな」
まず、固有特性の〈死界冥主〉には即死確率と致死率の強化という効果があるらしい。
だが、基本的には〈死〉〈闇〉〈氷〉の三属性の強化と耐性を得る特性と思っておけばいいだろう。
ある意味では非常に分かりやすい効果を持つ特性だと言える。
【死喰魂滅】は、【幽世の君主】の【霊魂吸喰】の上位互換だ。
上位互換ではあるが、対象が悪人や犯罪者など悪性存在の魂に限定されている。
その代わり吸収効率が向上している上に自動回収機能まであるため上位互換という評価だ。
【氷毒死泉】は、〈氷〉〈毒〉〈死〉の三つの属性の力を生み出し支配する最高位の属性操作能力だ。
三属性を支配するだけでなく、これら三属性の武具顕現能力まで有しており、最大で
【死徒創生】はアンデッド系と死属性の魔物を対象にした最高位の魔物顕現能力だ。
【天悪顕現之書】と同様に融合素材的にも順当な力を持つに至った内包スキルだと言えるだろう。
【死泉に巣喰う龍蛇】は、融合素材に使った〈捕え喰う悪食の徒〉を生み出したユニークスキル【
同じニーズヘッグだが、死泉のニーズヘッグの方は〈暴食〉の力に加えて【氷毒死泉】の〈氷〉〈毒〉〈死〉の三つの力も扱うことができる。
元のニーズヘッグも使いどころが難しかったのに益々使い難くなってしまった。
まぁ、持っていればいずれ何処で役立ってくれることだろう。
【至高の冥獣】は、死と闇属性の巨大な猟犬型の魔獣〈ガルム〉を生み出す眷属顕現能力だ。
また、下位互換である二メートルほどのサイズの小型版の魔獣〈ヘルハウンド〉を顕現させることもできる。
どちらにも融合素材に使った眷属ゴーレムのヒルドルヴとゲリフレキの影響が窺える。
最後に【冥界顕現】と【氷界顕現】だが、それぞれ〈死と闇〉〈氷と霜〉の属性で世界を塗り替え侵蝕する領域顕現能力だ。
領域内では該当属性の力が超強化されるが、領域顕現中は大量の魔力を消費し続ける。
だが、顕現中に侵蝕された影響は能力を解除した後も世界に残るため、これらの使い道は色々ありそうだ。
「新たな二つの神域権能級ユニークスキルの総評としては、これまで以上に取り扱いには注意を払う必要がある超強大な力、といったところか」
手元に生み出した死属性、毒属性、氷属性の三つの伝説級の短剣を手慰みにジャグリングのように片手で弄びつつ結論を出した。
「これで感覚的にも今すぐ手が出せる融合案は出尽くしたかな」
他の融合案はまだ遠い感覚なので暫くはこのままだろう。
まぁ、あくまでも現状の所持スキルやアイテムでは……と注釈は必要だが。
今弄んでいる三つの短剣からも能力が手に入るが、既存のスキルと被っているので剥奪する必要性は極めて低い。
「ま、今後に期待ということで戻るか」
【亜空の君主】の【転移無法】で分身体がいる場所と一瞬で入れ替わる。
入れ替わった際に留守番代わりに使った分身体は解除した。
[◼️◼️◼️◼️より恩寵が与えられます]
[称号〈時間神の加護〉を獲得しました]
[◼️◼️◼️◼️より恩寵が与えられます]
[称号〈空間神の加護〉を獲得しました]
[◼️◼️◼️◼️より恩寵が与えられます]
[称号〈闇神の加護〉を獲得しました]
[◼️◼️◼️◼️より恩寵が与えられます]
[称号〈死神の加護〉を獲得しました]
異界から出てきたことで認識されたのか、新たな神の加護を大量に獲得した。
この加護の大盤振る舞いの原因が、手に入れたばかりの二つの神域権能級ユニークスキルにあるのは状況的にも間違いないだろう。
その後、分身体で行なっていた作業を引き継ぎつつ時間を潰していると、扉を叩く音が聞こえてきた。
「リオン、今大丈夫か?」
「どうした、シルヴィア?」
「侵攻していた軍から一報が届いたみたいだぞ」
「どこからだ?」
「アーベントロート家が率いる軍からだ。司令室付きの伝令から軽く聞いた限りだと吉報らしい。マルギットは先に詳細を確認に行かせた」
「そうか。これで残る未報告のところは、メイザルド伯のルヴェン要塞と貴族派のグロール要塞だけだな」
夜襲に使われたリビングアーマーの金属鎧をインゴットにする作業を中断すると、ブレイズ要塞の片隅に作った仮設作業小屋を出た。
引き続きドラウプニル商会の警備部門の者に作業小屋の警備を任せ、シルヴィアと一緒に要塞の司令室へと向かった。
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