第247話 鎧袖一触
◆◇◆◇◆◇
防衛塔の屋上から大きく跳躍しながら、敵味方の視線を集めるために強化系スキルを発動させた。
【
更に【
更に敵に逃げられないように、破壊された転移阻害結界よりも強固な転移阻害結界を【結界術】にて広域に多重展開する。
【無限宝庫】から〈
夜闇にも輝く白色の斬撃波の直撃を受けたリビングアーマーの集団が破壊され、その余波は直撃した個体以上の数の周りのリビングアーマー達にもダメージを与えていった。
強制的に作った空白地帯に降り立つと、間髪を入れず【神薙斬り】を追加発動させたアルヴドラを左から右へと大きく振り抜く。
【王牙斬り】の効果と合わさり白色の魔力光が入り混じった長く巨大な黒い斬撃が、濁流の如く迫っていたリビングアーマーの軍団を弧を描くように薙ぎ払っていく。
長く伸びた黒白色の斬撃がリビングアーマーの軍団を刈り取っていくのは、我ながら中々に痛快な光景だ。
城壁の上やその周辺にいた個体などを除いた数百体ものリビングアーマーが、ただの一撃で壊滅したことに戦場が一瞬だけ静寂に包まれる。
そんな静けさを気にすることなく敵陣の後方へと進撃を開始した。
俺に続いて即座に動き出したのは、【神薙斬り】の射程範囲外にいたリビングアーマー達だ。
リビングアーマー系は元より自我が薄いタイプの魔物であるため、衝撃な事態によって心身が硬直するようなことは殆どない。
そんな魔物がほんの一瞬とはいえ動きを止めたのは、数百体もの同族が瞬殺されたからだろう。
[スキル【重装快走】を獲得しました]
[スキル【金属補正】を獲得しました]
ガシャガシャと金属同士が接触する音を立てながらリビングアーマーが接近してくるのを感知しながら、【無限宝庫】に収納してある全ての〈血騎結晶〉を取り出す。
現出と同時に指先サイズの紅色の結晶体を解放し、二メートル近いサイズの紅色の騎士である〈血濡れの紅騎士〉へと姿を変えていく。
総勢三百体を超える
「奴が現れました!」
「分かっている。使うぞ!」
「はっ!」
【地獄耳】がまだ距離のある敵陣内での二人の八錬英雄の会話を拾った。
その直後、前方に形成された大型の術式陣の上に巨大なリビングアーマーが複数体顕現した。
〈
そんな全長十五メートルサイズの巨大リビングアーマーが十体現れたが、どうやらこの十体は本命の前の前座でしかないらしい。
実際に、この十体を上回る魔力を内包した術式陣が更に後方に形成されているのが確認できた。
巨大リビングアーマーを時間稼ぎに使って、時間をかけてより強力な個体を生成しようとしているようだ。
また、八錬英雄達自身の魔力だけでは足りないのか、襲撃部隊内にいる魔法使い達の一部が二人に魔力を供給しているのも見える。
俺からしたら大した量ではないが、自分の魔物顕現スキルの魔力消費量から推測するに、相手方はかなり強力な個体を生成しようとしていることが分かった。
魔王の能力由来のモノとは消費量は異なるだろうが、そこまで大きくは離れてはいないはずだ。
「A、いや、Sランクぐらいかな?」
巨大リビングアーマーの大剣の振り下ろしをアルヴドラで正面から迎え討つ。
地面を蹴って跳び上がった勢いを乗せて大剣を両断すると、返す刃で袈裟懸けに巨大リビングアーマー本体も斬り裂いた。
「まずは一体」
瞬時に【
距離の近い二体は光翅弾を全身に受けて倒れたが、残る二体は即座に盾を構えて威力を減衰させた。
瞬殺こそ出来なかったが、大ダメージを受けたことで二体の動きは鈍っているので追撃は後回しだ。
「これで三、そして六」
最初に斬り捨てた巨大リビングアーマーの背後にいた三体の同種を視界に納めると、【
分解・吸収の力である解奪能力を出力強化した上で行使したことにより、三体の巨大リビングアーマーの上半身が一瞬で崩壊した。
魔力粒子へと霧散した三体分の上半身の魔力を吸収すると、その魔力を背中から生える光翼へと送り込む。
送り込んだ魔力を使って一対の光翼を巨大な光の双腕へと変化させると、背後に回り込んでいた二体の巨大リビングアーマーを【地災獣王の覇剛撃】を発動した状態の光の巨腕による拳打で粉砕した。
「八、そして十体」
最後に、【黄金災翼の神翅弾】を盾で受けて動きを止めていた二体に向かって【神星煌武】の光炎を放ち、その巨体を隠すほどの盾ごと焼き滅ぼしてトドメを刺した。
[スキル【巨鎧戦殻】を獲得しました]
[スキル【殺戮の心得】を獲得しました]
[スキル【巨身駆動】を獲得しました]
大したスキルは手に入らなかったが新規スキルであることには変わりない。
どこで使う機会があるかは分からないが、持ってさえいれば役立ってくれることもあるだろう。
「さて、本命のご登場か」
三体の巨大リビングアーマーの下半身が倒れた際に発生した土埃が晴れると、既に術式陣は消え去っており、術式陣があった場所には二体の騎士甲冑姿の魔物が佇んでいた。
鑑定によると〈
その後方ではハンノス王国の襲撃部隊が撤退を開始しているのが見える。
八錬英雄の二人は胸元を抑えており、錬装剣を握る手は鋼色の謎の結晶体に覆われていた。
【
先ほどまでは異常が無かったことから、目の前の二体を生み出したのが原因だろう。
夜襲前にこの強力なソードファミリアを生成してこなかった理由も、事前に生成したら自分達が行動不能になることが分かっていたからかもしれないな。
「取り敢えずーー」
鋭く振るわれてきた剣刃を【天瞬歩法】で回避する。
一瞬で距離を詰めてきた二体のソードファミリアは攻撃を回避した俺へと手を向けると、空中に数々の魔剣を生み出して射出してきた。
何処かで見たなと、自分も使う攻撃方法を使ってきたことにデジャブを感じつつアルヴドラで斬り払っていく。
「取り敢えず追手を差し向けるか」
【無限宝庫】ではなく体内に納めて俺の血と魔力を吸収させている十三体の血騎士のうち九体を解放し、逃げようとしている襲撃部隊を追撃させることにした。
二体のソードファミリアに【君主の星圧】を発動させて周りの魔剣共々動きを封じると、体外に九体の血騎士を解放する。
血の煙の形で解放した九体はすぐさま騎士の姿で再構成された。
俺の血と魔力をたっぷりと吸っていた九体の姿は、他の血騎士達とは異なり体色は紅色ではなく黒色になっている。
同じ血騎士でも通常の血騎士が〈
黒血騎士は今の【勇聖竜血】やそれ以前の【真聖竜血】の影響を受けて鎧の形状も竜を彷彿とさせるデザインをしている。
俺の戦闘技能もある程度は扱えるようだし、追手に差し向ける戦力としては十分だろう。
ユニークスキル【
転移阻害結界の効果範囲内だが、【
【君主の星圧】による重圧を抜け出してきたソードファミリア達に対して、巨腕から光翼へと戻して【黄金災翼の神翅弾】で弾幕を張った。
Sランク魔物相当の眷属種と言えど、【黄金災翼の神翅弾】の光翅弾を完全に無効化することは出来ないらしく、光翅弾を斬り払い続ける魔剣が瞬く間にボロボロになっていた。
「ま、すぐに挿げ替えられるんだが」
ソードファミリアはボロボロになった魔剣を投げ捨てると瞬時に新しい魔剣を生み出し、再び光翅弾を斬り払いながら接近してくる。
〈錬剣〉関連の魔物というだけあって一連の動きが非常にスムーズだ。
【黄金の眼望】の解奪能力を行使してみるが、即座に持ち替えた対魔眼能力の魔剣を振るって魔眼能力の干渉を破却されてしまった。
「……近接戦がベストみたいだな」
数度の攻防で最適解を結論付けると、手に入れて間もない【武神の悟り】を発動する。
スキルの補助を受けて意識が戦闘一色に切り替えられる。
続けて【
剣魔を冠する名に偽りはなく、ソードファミリア達は〈剣聖〉に迫る技量を以て俺を迎え討ってくる。
〈魔剣殺し〉〈対人特効〉〈光喰〉など俺に対抗する力を内包した魔剣による剣撃の嵐を先読みしていく。
そのため、最適な剣術スタイルは柔剣。
最小限の動き、最低限の力のみを駆使して相手の魔剣の刃を受け流していく。
感情の希薄なソードファミリア達の驚愕が伝わってくるが、それらを無視して一振りの魔剣で二振りの魔剣の攻撃を無力化し続ける。
状況の打開のために炎や雷、闇に氷といった属性能力も魔剣で行使してくるが、それらの攻撃も剣撃と同じように受け流していく。
やがて、一分にも満たない攻防の果てに一体のソードファミリアが隙を見せた。
【王牙斬り】だけでは攻撃力に不安があるので、月の満ち欠けに応じて追加で攻撃力が超強化される【
瞬時に【天を蝕む黒月の刃】を発動させると、ソードファミリアの魔剣の柄を握る両手を柄ごと斬り裂き、そのまま流れるように全身を割断していった。
まだ死んだわけではないが行動不能にはしたので、バラバラになった一体に背を向けて残る一体へと肉迫する。
二体から一体へとなったことで剣撃の数も減少し、次は十秒足らずで二体目のソードファミリアを破壊した。
最後に【戦神ノ偽眼】で見抜いた
[スキル【鎧装歩法】を獲得しました]
[スキル【剣魔の攻陣】を獲得しました]
[スキル【剣魔の防陣】を獲得しました]
[スキル【魔剣顕現】を獲得しました]
[スキル【魔剣の心得】を獲得しました]
[スキル【魔剣支配】を獲得しました]
うーむ。まさに魔剣の扱いに長けたリビングアーマーって感じの獲得スキルだな。
六個の新規スキルを獲得した以外にも、数多のリビングアーマーと二体のソードファミリアを倒したことで、アルヴドラの基本能力【吸極進化】によって第二能力【
悪魔特効は無くなったが、重厚な鎧や頑強な肉体への特効へと変化しているので実質的に上位互換能力だと言えるだろう。
【武神の悟り】などの各種スキルを解除して一息ついていると追加の通知が届いた。
[ユニークスキル【
どうやら黒血騎士達が八錬英雄の第三席を倒したようだ。
【
部隊を率いていた八錬英雄を倒したなら残りも任せても大丈夫だろう。
「これでおそらく素材が揃ったが……まぁ、落ち着いてからだな」
【
この場で衝動的に融合は行わず、素材が素材なので再度吟味してから行うとしよう。
背後の城壁では、残りのリビングアーマー達を掃討すべく近衛騎士達も要塞から出てきた。
襲撃部隊が撤退しているのと、見るからに強敵なリビングアーマーが俺に倒されたのを確認したから護衛役である近衛騎士を投入したのだろう。
「あっちも任せていいし、俺は周りの魔剣の残骸でも拾っておくか」
【
その後、ブレイズ要塞への夜襲が終息したのは近衛騎士が参戦してから三十分が経ってからだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます