第218話 一次試験後の夜
◆◇◆◇◆◇
「ーーやっぱり、Sランク冒険者が相手では力不足か」
ヴァルハラクラン加入試験の一次試験が実施された日の夜。
アルヴァアインにある屋敷の自室のベッドの上で、【
前回の巨塔遠征時に、〈
双華クランがヴァルハラクランへと吸収合併されるという内容なのだが、傍から見たら救出の対価に吸収合併を要求したようにしか見えないため、本当に合併を望むならクラン試験に合格してから来てくれとだけ告げ、その時は話を終わらせた。
その後、商会本店から双華クランのメンバー全員がクラン試験の参加登録をしにきたことを聞き、彼女達が本気だということが分かった。
メアとシア曰く、アンブラムアポストルとの遭遇戦は、Sランクが二人いようとも命が脅かされる可能性があることと、世の中には理不尽なほどに圧倒的な力を持つ者がいることを再確認する機会になったらしい。
そういった経緯から、命を助けられた恩を返したい、俺の庇護下に入りたい、などといった幾つかの理由からクラン合併を求めてきた。
双華クランのメンバー全員が、試験用ダンジョンを踏破して一次試験を合格したことからも、彼女達の実力は疑いようがない。
彼女達がヴァルハラクランに加わることになれば、Sランクが二人も増えるので戦力は大幅に上がることになるだろう。
一次試験の合格者は、双華クランの者達も含めてダンジョンを踏破して合格したのが五十一名。
途中脱落者の中から敗者復活な合格認定にしたのが五十名なので、合計で百一名が二次試験に進んだことになる。
受験者の数が十分の一以下にまで減ったことを厳しいとみるか甘いとみるかは人それぞれだろうが、概ね予想通りの結果に終わった。
「……チケットスキルの成果を除けば、な」
レンタルスキルのサービス開始時から実装されている新体系のスキルである〈
このチケットスキルは、既存のスキル体系である他のレンタルスキル群とは違い、発動すると該当チケットスキルに定められた使用回数が消費されていき、使用回数がゼロになるとレンタルしたチケットスキルは消滅するようになっている。
この使い捨て仕様は一見するとデメリットのように思えるが、他のレンタルスキルは使用回数に制限は無い代わりに使用できる期間が決まっている一方で、チケットスキルは使用回数が一回でも残っていれば、いつまでもレンタルしたままでいることが可能だ。
加えて、チケットスキルには高ポイントを要求されるものの、総じて強力な効果なものしかないので、一概に優劣は付けることはできないだろう。
そんな強力な効果を持つチケットスキルの一つとして、レンタルスキルに近々追加される予定のスキルが、下僕召喚系チケットスキルである【
チケットスキルも他のレンタルスキル同様に、グレードは下から順に星無し、星一、星二と続いて、最後の星五までの六段階存在する。
最高グレードである星五のチケットスキルは、消費されるポイントもかなり高額だ。
なので、星五チケットスキルには相応の性能があって然るべきなのだが、今日の一次試験では微妙に不満が残る結果になってしまった。
相手が相性の悪い力を持つSランクとはいえ、もう少し善戦してほしかったのが正直なところだ。
「んー、やっぱり星五のチケットスキルなんだから、もう少し強くするべきか? 見た目の変化がほぼないのも地味だよな……」
星五チケットスキル【
強さに関しては、星三の戦霊騎士でBランク下位の冒険者相当、星四でBランク上位相当、そして星五でAランク下位に相当する
レンタルスキルという自我のない無生物の枠組みに当て嵌まる戦霊騎士は、自我と命がある一つの存在であるSランク相当のシルキーとは使用されている技術や術式が全く違う。
そのため、現状では戦霊騎士の強さはこの程度が限界なのだが、他に使える術式でも手に入ったら性能を向上させられるかもしれない。
「そういえばアレがあったか」
アンブラムアポストル討伐時に手に入れたボス宝箱内のアイテムの中に使えそう能力があったことを思い出した。
アレの術式なら性能的にも外見的にも星五の戦霊騎士を強化できそうだ。
後回しにしていて能力を剥奪するのを忘れていたが、他のアイテムと一緒に複製品だけは既に作ってある。
また忘れてしまわないうちに複製品から能力を剥奪しておくとしよう。
[アイテム〈
[スキル【守護の光背】を獲得しました]
[スキル【破壊の光背】を獲得しました]
[スキル【聖癒の光背】を獲得しました]
[スキル【
[アイテム〈
[スキル【光の導き】を獲得しました]
[スキル【金輝の欲手】を獲得しました]
[アイテム〈極光鍛えし祝福の聖盾〉から能力が剥奪されます]
[スキル【極光聖盾】を獲得しました]
[スキル【極光の祝福】を獲得しました]
[アイテム〈聖滅の免罪符〉から能力が剥奪されます]
[スキル【罪禍の矛】を獲得しました]
[スキル【罪禍の盾】を獲得しました]
[スキル【神聖耐性】を獲得しました]
[アイテム〈
[スキル【天浄の甘露】を獲得しました]
[スキル【天果の恵み】を獲得しました]
[アイテム〈
[スキル【不朽の波紋】を獲得しました]
アンブラムアポストルのボス宝箱に入っていた残りの戦利品は、その殆どが既に持っている能力の
そんな中に一つだけ
なので、そのアイテムからは能力は奪わず、そのまま【無限宝庫】に保管しておく。
星五戦霊騎士の強化材料として目を付けたアレーーアイテム〈天上に輝く三彩の光背〉の術式だが、狙い通り星五戦霊騎士の性能向上に役立てられそうだ。
まぁそれでも、強さはAランク下位相当から変化するほどではないのだが、見た目に特別感ができたので良しとしよう。
「お風呂空いたけど、なんだか散らかってるわね」
「どうやらアイテムから力を吸収していたみたいだな」
俺の部屋の隣にある小浴場に入っていたマルギットとシルヴィアが寝室にやってきた。
湯上がりで上気している二人の身体は仄かな赤みを帯びており、バスローブ姿なのもあって大変艶めかしい。
前回の迷宮探索から帰還してから間も無く、色々あって二人との仲も進展し、今では男女の関係になった。
初めの頃にはあった二人の羞恥心も、この一ヶ月間ほぼ毎晩一緒に過ごしたことによって随分と薄れてきたようで、目の前にいる二人はとても自然体だ……まぁ、今の俺の散らかし具合を見て呆れているのも一因なんだろうけど。
今夜はマルギットとシルヴィアの二人とは普通に寝るだけなので、二人に続いて風呂に入った後もナニもせずにベッドの上に寝転がった。
暫くすると、就寝準備を済ませたマルギットとシルヴィアも俺の両隣にやってきて横になった。
本体は明日の二次試験のためにこのまま休むが、同じ屋敷内にいる本体と変わらない外見の分身体達は今夜も変わらず忙しい。
リーゼロッテやエリン達の自室に一緒にいる分身体達から送られてくる色欲まみれな情報に引っ張られないようにしなければ……。
「星五の戦霊騎士を強化するって言ってたけど、今の段階で星五のレンタルスキルの利用者っているの?」
「いや、星四レンタルスキルが使えるミスリル会員は何人かいるけど、その上のオリハルコン会員はまだいないな」
「実際に使われるのはいつになるのかしらね」
「たしかにな」
オリハルコン会員になった先着数名限定の特典として、レンタルポイントを幾らか付与するようにすれば、店の売り上げが一気に上がりそうだ。
「悪い顔をしているわよ」
「そうかな?」
俺の右腕を枕にしているマルギットと話していると、俺の胴体に抱き付いているシルヴィアも質問をしてきた。
「ミスリルとオリハルコン会員の昇級条件にある商品購入総額っていくらだっけ?」
「ミスリル会員が購入総額一千万オウロ以上で年会費一万オウロ、オリハルコン会員が購入総額一億オウロ以上で年会費十万オウロだな。高ランクの魔導具を買っていればすぐさ」
「商会で売っている最高ランクの魔導具って
「ああ」
「遺物級の魔導具ですら一つあたり数百万オウロなのに、オリハルコン会員になるには一体幾つ買わないといけないんだろうな……」
「んー、三十から五十ぐらい?」
マルギットとシルヴィアの二人と就寝前の雑談に興じつつ、【並列思考】で新たに分割した思考で手に入れたスキルの力を確認し、他のスキルとの相性を吟味する。
密着している二人の美女からの
[スキルを合成します]
[【守護の光背】+【破壊の光背】+【聖癒の光背】+【光の導き】=【
[【
[【解奪の魔眼】+【掌握の魔眼】+【死幻王の瞳】+【財禍の魔眼】+【金輝の欲手】=【
[【
[【上位種の威厳】+【君臨する者】+【孤高の王者】=【帝王種の威厳】]
[【超成長】+【換骨奪胎】+【能力値増大】+【経験値増大】+【天果の恵み】=【超越成長】]
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