第200話 スキルとの相性
◆◇◆◇◆◇
第五十五エリア帯は中央エリアである第五十五エリアと四つの小エリアのみで構成されている。
そのため、中には小エリアを経由せずに中央エリアと隣接エリア帯が繋がっている場所もあった。
第四回探索の二日目に向かう第五十九エリアもそれにあたり、第五十五エリアとは直接繋がっている。
第五十九エリア帯は中央エリアの第五十九エリアのみであり、その全てが石製のブロック状の壁面で四方が構成された〈迷宮回廊〉となっているらしい。
中層から下層、深層にかけて地形が同じ迷宮回廊であるエリア帯同士が通路で繋がっている一方で、それぞれの各エリア帯は迷宮回廊ではない別のエリア帯とも通路で繋がっている。
なので、場所によっては他のエリア帯を経由してから迷宮回廊に入ったほうが目的地へとショートカットできる場合もある。
勿論、これは正確な迷宮回廊の地図があればの話であるため、未だ全貌が明らかになっていない迷宮回廊の情報は高値で取り扱われているそうだ。
そんな迷宮回廊の一つである第五十九エリアへと通じる通路だが、この通路は第五十九エリア帯のエリアボスの領域内に存在している。
つまり、第五十九エリアに行くにはこのエリアボスを倒す必要があった。
「何というか、金銭価値の高そうな岩蛇だな」
山の麓に空いた大穴の前に様々な鉱石が積まれた小山が見える。
その鉱石の山の正体は、様々な鉱物で構成された身体を持つ巨大な蛇系魔物であるエリアボス〈
サクスィスを構成する岩の身体は様々な鉱物を含有している。
その中には通常の金属や宝石だけでなく魔法金属や魔法宝石といった魔法鉱物も含まれていた。
魔法鉱物には非魔法鉱物とは異なり、高い耐久性以外にも魔法の力が宿っており、このサクスィスはそれらの力を活用することができるらしい。
リーゼロッテ達を今いる崖上に残して、俺一人でサクスィスの感知範囲内へと飛び降りる。
将来的にはエリン達五人だけでエリアボスを倒せるようになるのが理想だが、昨日準ボス級魔物を倒せるようになったばかりなので今は時期尚早だ。
リーゼロッテならば相性次第では一人でもエリアボスを狩れるだろうが、ここのエリアボスとの相性はあまり良くない。
ということで、時間効率の面からもサクスィスの相手は俺がすることになった。
「おっと」
「GORRRRUOOOOOッ!!」
サクスィスから少し離れたところに着地した瞬間、サクスィスの身体にある黄色の魔法宝石が発光すると地面から岩槍が大量に生えて襲ってきた。
即座に地面を蹴って宙に逃れると、【魔装具具現化】で具現化させた短剣型の魔剣をサクスィスへと投擲する。
ランクは低いものの、岩石特効の力を有する短剣は、サクスィスの岩の身体へと深々と突き刺さった。
岩の身体だから痛覚が無いのか、岩の外殻の下の身体に刃が届いていないからかは分からないが、サクスィスにダメージが入っている様子はない。
【火眼金睛】を発動させて両眼を金眼へと変えてサクスィスの岩の身体を見通す。
いずれかの魔法鉱物が発する力による妨害も突破してサクスィスの身体を調べたところ、岩の下にはちゃんと生身の肉体があることが分かった。
おそらく痛覚は普通にあるはずなので、単純に短剣の刃が通っていなかっただけのようだ。
身体を覆う岩の外殻は分厚く、短剣よりも剣身の長い長剣や大剣でも生身に到達するかは怪しい。
岩の外殻の厚さや耐久性といった物理的な強度以外にも、纏っている魔法鉱物によって高い魔法耐性も有しているため、高火力の攻撃魔法で岩の鎧を剥がすというのも大変そうだ。
「さすがは下層のエリアボスだ。デカさも厄介だし、本来ならば大人数で挑むべき相手なんだろうな」
突き刺さった俺の魔力製の短剣を【紅蓮爆葬】で爆発させる。
この爆発でも怯まなかったのを確認すると、両手の指の間に追加で具現化した八本の短剣を爆炎の中へと【射出】した。
多少ひび割れた岩の外殻に八本の短剣が突き刺さると同時に、それらの短剣も爆発させた。
「GORUOOOOOーーッ!?」
岩の外殻が剥げ、外殻下の生身を爆炎で焼かれたことでサクスィスが痛みに悲鳴をあげている。
空中に跳び上がっていた状態から宙を蹴ってサクスィスとの距離を詰める。
移動中に【
わざわざこれらのユニークスキルを使うのは、まだ手に入れてから日が浅く、それぞれの
エリアボスを倒すために使用することは良い経験になることだろう。
同様の理由から聖剣デュランダルではなく、武器は【鉄血の君主】の【
岩の外殻よりも柔らかい身を大剣の刃が斬り裂くとともに、その剣身から爆発的な勢いで放出された血色のオーラが巨大な刃となってサクスィスの身体を突き進んでいく。
露出している身に対して斜めから刺し入れられた血色の巨刃は、意思を持つ猟犬のようにサクスィスの体内を上から下へと斬り裂いていった。
「GORU、GORRUOOAAAAAーーッ!?」
身体の内側から全身を斬り裂かれていく痛みは、想像するだけでも痛々しい。
外側からが難しいならば内側を狙うというシンプルな攻撃方法だが、普通ならば口内を狙うのだろう。
【紅蓮爆葬】で岩の外殻が剥げなかったらそうするつもりだったが、無事に剥げたので難易度は大きく下がった。
だが、体内をズタズタに斬り裂かれてもサクスィスは未だ健在だ。
怒気に染まった瞳で此方を睨み付けるついでに魔眼能力を行使してきたので、念のため身を隠せるほどに大きい血禍の大剣を盾にして防ぐ。
大剣の表面に魔眼が干渉してくるのを感じながら、サクスィスの体内にオーラとして散らばっている俺の魔力を【紅蓮爆葬】で爆発させる。
閉所である体内で一気に膨れ上がった爆発力は、サクスィスの頑丈な皮膚や外殻すらも内側から引き裂き、その巨大な蛇体を爆散させてしまった。
「いてっ、思ったよりも火力があったな……ああ、
爆発で飛んできた石が当たった側頭部を掻きながら、【鉄血の君主】の【君主権限】で雨のように降るサクスィスの血液に干渉し、大剣に吸わせていく。
ゴリュッとや、ギュゴッとも聞こえる異音を鳴らしながら大剣に吸われたサクスィスの血は、エネルギーへと変換されると大剣を構成する俺の血へと取り込まれ、その血質と俺の能力値を向上させた。
血肉を取り込み喰らい、力に変えていることから、俺が持つ〈暴食〉の力である【
自由自在に生み出せる血製の武器も、使用する血の質に左右されるため、スキルの性質上から血の中に特殊な因子や力が宿る【真聖竜血】や【
【魔装具具現化】で具現化できる武器は
使い過ぎると貧血になるため多用は出来ないが、〈血喰い〉の能力と合わせて中々に使い勝手が良い。
いずれは、
[スキル【宝鉱完備】を獲得しました]
[スキル【金化の魔眼】を獲得しました]
[スキル【宝化の魔眼】を獲得しました]
[スキル【宝鎧鉱殻】を獲得しました]
[スキル【財宝の番人】を獲得しました]
[スキル【魔鉱の支配者】を獲得しました]
[一定条件が達成されました]
[ユニークスキル【
[特殊条件〈神聖内包〉〈尽きぬ欲望〉などが達成されました]
[最上位権能による干渉が確認されました]
[ユニークスキル【愛欲】は特殊なランクアップが可能です]
[対価を支払う必要があります]
[【精気吸喰】【祈祷】【布教】【寵愛】【森艶王香】【欲望王の誘惑】【淫蕩の艶戯】【人体理解】と大量の魔力を対価として支払い、ユニークスキル【
[ユニークスキル【愛し欲す色堕の聖主】にランクアップしますか?]
[同意が確認されました]
[対価を支払いランクアップします]
[ユニークスキル【愛欲】はユニークスキル【愛し欲す色堕の聖主】にランクアップしました]
エリアボスであるサクスィスを倒したことでレベルアップを果たし、ユニークスキル【愛欲】がランクアップした。
ランクアップまでもう少しかかるかと思ったが、レベルアップして多少キャパシティに余裕ができたのと、特殊なランクアップによって八つものスキルを対価にし、その分だけキャパシティが空いたことが理由のようだ。
内包する能力的に、干渉してきた最上位権能は【
つまり、【愛し欲す色堕の聖主】との相性もまた最高というわけだ。
「これでレベルは九十三か。春までにもう一つレベルが上げられるかどうかってところか」
別に差し迫った理由があるわけではないので、レベル上げのために必死になるつもりはないが、これまでのペースとこれからの予定を考えると一レベルは上がりそうな気がする。
ロンダルヴィア帝国にいる
これから向かう第五十九エリアの迷宮回廊にいる敵に【愛し欲す色堕の聖主】が通じるかは分からないが、通じるようなら熟練度上げが捗りそうだ。
エリン達のレベル上げをメインにするつもりだが、端のほうで新規スキルの検証も行うとしよう。
近日中にサービスを開始するスキルレンタル業も含めて、ますます忙しくなりそうだ。
出現していたボス宝箱を回収し、リーゼロッテ達にも下りてくるように手を振って指示を出しながら、今後の予定にあったいくつかの計画を修正するのだった。
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