第14話 俺が特殊なのか?
◆◇◆◇◆◇
「そういえばカイルは長剣以外は使ったことあるのか?」
カイルとミリーをアルグラートへと連れて帰る道中、ふと気になってカイルに尋ねてみた。
「長剣以外だと大剣や大盾、短剣を使ったことはありますけど」
「長剣が一番合ってたのか?」
「いえ、一番無難な物を選んだだけです」
「ふむ」
となると、これは気付いていないのか?
「リオンさん、何か気になることでもあるんですか?」
「ん? ああ、いや、カイルは剣以外を使うのに抵抗はないのかな、って思ってね」
「抵抗ですか?」
ミリーからの疑問への答えを聞いたカイルが不思議そうに聞き返す。
「強くなるために槍とか弓とかを使うことについてだよ」
「どういうことですか」
「それについて答える前に、カイルは自分のユニークスキル【万夫不当】の能力はどこまで認識できているんだい?」
横合いから襲ってきたはぐれウルフを瞬殺して【
二人だけでアルグラートに帰らせるわけにもいかないため、小砦まで送り届けようと決めてからは、俺が先頭に立って襲撃してくる魔物に対処している。
当初は魔物が現れる度に過度に緊張していた二人だが、今では俺が瞬時に討伐していくことに慣れたからか、警戒はしても緊張し過ぎることなく落ち着いている。
「初めて使う武器でもすぐに扱えるようになって、大怪我をすると強くなる、ですかね」
「あー、そういう認識か。それはスキルの詳細を知っているからじゃなくて経験からか?」
「はい」
「ミリーも自分のユニークスキルの詳細については経験から?」
「私もそうです」
うーん。二人ともとなると、これがこの世界での普通みたいだな。
「普通のスキルについては?」
「そっちは習得した際に手足を動かすみたいに本能的にと言いますか、普通に理解できました。ユニークスキルはぼんやりと使い方が分かって、後は経験から判断しました」
カイルの言葉にミリーも首肯する。どうやらユニークスキルだけが例外らしい。
俺の場合は、ユニークスキルは前世由来のモノも今回の他者由来のモノも、未解放の能力を除けば初めから十全に把握できている。
正確に言えば、前世由来の三つのユニークスキルの詳細は転生の際にインストールされた知識に予めより詳細な情報が入っていたため違うのかもしれない。
だが、知識を確認する前から【
これはインストールされた知識でも、俺が取得している何れかのスキルの効果というわけでもないようだ。
おそらくだが、俺はユニークスキルとの親和力みたいな隠された能力値が高いのではないだろうか?
前の異世界の経験からか、前世持ちだからか、単純に俺自身の特性や才能なのかは分からないけど、これはユニークスキルを取得する際には大きなアドバンテージだ。
「そうなんだな。俺も二人のユニークスキルを取得して初めて知ったことだが、どうやら俺はユニークスキルを詳細に認識できるらしい」
「「えっ」」
「だから俺が認識している【万夫不当】の能力は微妙に違う。初めて使う武器もすぐに扱えるというのは合ってるが、更に付け加えると、『自分に適した武器を扱う時の疲労を大きく軽減し、その武器関連のジョブスキルの
「ほ、本当ですか⁉︎」
「ああ。あと、大怪我したら強くなるっていうのも正確に言葉にすると、『体力の三分の一を下回った時に自動的に発動し、受けるダメージを五割軽減し、全能力値を五割強化、そして各種状態異常耐性を強化する。また、敵の数が多ければ多いほど各種効果に更なる補正がかかる』、ってところだな。だからあんな状態でも剣を振るえていたし、立っていられたわけだ」
「……この効果は凄いんですかね?」
「凄いと思うぞ。そのユニークスキルが無かったらカイルは今ここにはいなかっただろうな」
此方の言葉が照れ臭いのか気恥ずかしいのか頬を掻くカイル。
ダメージが半減され、全能力値が五割増した状態だったから出血多量でも生命力がギリギリ尽きなかったんだろうな。
「あ、あの。私の能力はどうなんでしょうか。他人を回復させる能力はあるみたいなんですけど、使ったら凄く衰弱してしまって動けなくなるんです。後は強化能力があることが分かってるんですけど……」
「ミリーの【
周囲に魔物がいないのを確認してからメモ用紙に能力の詳細を書いていく。
書き終わったメモ用紙をミリーに渡すと、【異空間収納庫】から槍やハルバードなど剣以外の武器を取り出して少し扱ってみる。
最後に剣を振るってから、自分が感じた感覚を思い返してみたところ、どうやら俺は剣が一番で槍が二番目に適性があるらしい。
他の武器も適性が無いわけじゃないけど槍ほどじゃないし、剣はそれ以上に隔たりがある。
まぁ、ジョブスキル【
「カイルも軽く使ってみるといい。適性があるやつを扱うと繋がっている感覚があるはずだ。その繋がっている感覚が強ければ強いほど適性がある」
「はい!」
嬉しそうに武器各種を試していくカイルを尻目にミリーの方に向き直ると、何だか難しそうな顔をしていた。
「分かり難かったか?」
「あ、いえ。私がこれらの能力を使えていたらカイルの腕が斬り落とされることはなかったんだろうな、って」
「まぁ、確かにな。光の鎧は使えるか?」
「その、使い方が……」
「ああ、任意発動系は発動方法に慣れない間は内包スキル名を唱えるといい。魔法と一緒だな。俺に使っていいぞ」
「なるほど。ありがとうございます。では……【
体力と耐久値が強化されたのを感じる。だが、光の鎧は発現していない。
「ちょっと俺もミリーに使ってみていいか?」
「はい。お願いします」
「【守護の聖鎧】」
ミリーの身体が淡く光が宿ると数秒で掻き消えた。【情報賢能】で視た限りちゃんと効果は持続しているようだ。
自分自身にも使用してから腕に剣を振り下ろしてみると、光の壁が現れて砕けたことによって攻撃を無効化された。
ちゃんと『一度のみの攻撃無効化能力』が発動したことを確認できたので説明しようと顔を上げると、ミリーが固まっていた。
どうやらいきなり自分の腕を切り落とそうとしたのにビックリしたようだ。
「……ゴホン。光の鎧は通常時の魔力消費量より五割増やさないと駄目みたいだ。魔力を渡すからもう一度やってみよう」
「は、はい!」
【救恤】の内包スキル【
その後、何度も試して【救恤】の扱い方を練習した結果、ミリーは自らのユニークスキルの理解度が増し、全ての能力を扱えるようになった。
現時点ではできることは少ないが、自分自身のレベルが上がればそれだけ強力になるユニークスキルなので頑張ってもらいたいものだ。
カイルは一番適性のあった槍に変更するとのこと。
槍を新しく買うそうだが、せっかくだから試しに使った槍をそのままプレゼントしたら喜んでくれた。
質が良いとはいえ、盗賊団から得た大量にある戦利品の一つだし、二人への能力指導含めてユニークスキルを得られたことに対する礼だから惜しくはない。
「お、砦が見えたな。じゃあ、この辺りで大丈夫か。今度から気をつけるんだぞ」
「はい。リオンさん、色々ありがとうございました」
「お世話になりました」
「ああ。俺も色々と得る物があった時間だったよ。魔水を見つけることがあったら教えて貰った薬師に届けるよ」
「何から何まですいません。魔水の報酬はちゃんと支払わせてもらいます」
「俺も魔水とやらに興味があるし、ついでだから気にするな。報酬に関してはギルドを通して連絡してくれ。それじゃあ真っ直ぐ帰るんだぞ」
しきりに頭を下げる二人に軽く手を振ってから再び大森林の中へと戻っていった。
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