ゴリライブ!サンシャイン!!

 今日は一日、休日だ。

 私は今日は動物園に行く。

 最寄りの駅に着き動物園の門を潜る。


 するとどこからか聞いた事のある曲が流れてくる。

 あの時のストリートミュージシャンだ!!

 かなりの人集りが出来ている。


 以前にも増して美しいメロディ、心地よいサウンド。

 風に乗って流れてくるその響きに誘われるように人集りの方へと走る!


 相変わらずコーラスが良い。


ウーーホーーーー♪


 絶妙なハモリ、最早その歌声は天使の声。


 時折、激しく流れる曲調には


ポコポコポコポコポコポコポコ!


 原始の打撃音。

 前にもまして心地よい。

 

 私は確信する。これを演奏するグループは必ずゴリラだ!


・・・


『やっぱりゴリラだった!!』



 ギター兼ヴォーカルが一人。ドラムが一人。

 そしてベース兼ゴリラがコーラスも担う。

 さらにゴリラ兼キーボードが音に厚みを持たせる。


『・・・ゴリラが増えている』


 フォーピースバンドになった様だ。


 ヴォーカルの歌声は相変わらず素晴らしい!

 透き通る美しい歌声には磨きがかかっていた。


『でも2匹のゴリラが気になる』


 ドラムのテクニックも上がっている。

 音に重みが増している。ドラミングにも決して負けないキレがある!


『でも2匹のドラミングには勝てない』


 4人の息はさらにシンクロする。

 まるで一つの生命のようだ。


『でも半分はゴリラだ』


 目と目を合わせる必要もない。心で共鳴しサウンドを響かせる。

 全てのサウンドが一つになる。


『でもセンターがゴリラだ』


 端っこでヴォーカルが歌っている。

 何故かベース兼ゴリラのコーラスがセンターにいる。

 度重なる疑問が湧き上がる。

 

『なぜゴリラがセンター?』


 演奏が鳴り止む。

 私はゴリラと目が合う。そして目の前までやって来る。

 スッと手を差し出される。そうか。私の事を覚えてくれていたのだろう。

 そして再び現れた私の事を歓迎してくれたのだ。

 変わらない神対応!!


『ゴリラでもいいや!』


 キーボードのゴリラも握手をしてくれる。

 やはり暖かい。あと、どうやら雌っぽい。

 やはり着ぐるみなんかではない。


『やはりゴリラだ!』


 その身にまとうオーラの様なものには強い野生を感じる。

 時折、独特のスメルを感じる。


『ゴリラだから仕方ない!』


 軽くお辞儀をして戻っていく。

 器用にペットボトルを開けて水を飲む。

 何処からかハンカチを取り出し綺麗に口を拭う。

 淑女だ・・・。


『ゴリラとは?』


 キーボードの音に併せてチューニングを行なっているようだ。

 お互い細かい指示を出し音のすり合わせをする。

 素晴らしい演奏だったのにまださっきの曲に納得が言っていない様だ。

 ゴリラを中心に残り二人のメンバーも加わり調整をしている。


『ゴリラすごい』


 そもそもコミュニケーションは取れるのだろうか?

 私は耳を澄まし彼らの会話を聞こうとする。

 

「ウッホ!ウホウホウホッ!!ウッウホ」


 その声はまさに・・・


『ゴリラだった』


 しかし、もうサイレンが鳴り響く事はない。


・・・


 なぜならここは動物園だから。


 暖かい風が吹く。ガッツリ混ざる獣臭。


 ふと、置かれた看板に目をやる。

 

『【ゴーリー・グレゴリー】メジャーデビュー決定!』


 私は衝撃を受けた!彼らは成し遂げたのだ。

 もう深夜にコソコソと演奏する必要はない。

 太陽の降り注ぐ動物園に彼らの演奏が響き渡る。

 その音は風に乗り流れていく。


 彼らの出す曲は間違いなく成功するだろう。

 その曲は世界中に広がっていく。

 

 彼らの姿が輝いている様に見えるのは太陽の光だけではない。


 きっと彼らの心が輝いているからなのだろう・・・。


『ゴリラでも・・・』


 残されたバンドのメンバーが叫ぶ。


「音楽シーンに名を残すわよー!」


 きっと彼らの名前は音楽史に刻まれるだろう。


『ゴリラだから』


「ドーム会場を満席に埋めてやるぜー!!」


 うん。それは無理♪


『ゴリラだから♪』



後にして知った事だが

キーボードの彼女の正式名称はゴリラゴリラディエリ。

彼と同じゴリラゴリラゴリラではなくゴリラゴリラゲリンベイでもない。

ましてゴリラゴリラグラウエリでもなかった。

ゴリラゴリラの中でも彼と同じニシゴリラの1亜種。

「クロスリバーゴリラ」と呼ばれニシローランドゴリラと比較すると、

口蓋が著しく小さく、頭蓋骨が小さく、頭蓋骨が短くなっているらしい・・・。

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