記録No.10 システムに隙無し
「射撃武装使用権限掌握、以降射撃は━』
「━わかった!わかった!ありがとよ!」
意気揚揚と5機相手にしているのはいいのだが…やはりというか無論というか、相手の練度が高い。
ドローンとかいうインチキ兵器のせいで射撃戦が思うようにできず、近距離ではあのエースとゴリラのような機体の苛烈な猛攻に手を焼いている。
まだだ、もっと撃たせろ…
《ふん、威勢の割に、余裕はなさそうじゃの?》
「へっ、ドローン20機、射撃型2機、オマケにエース『気取り』の近距離機体を、2機相手取ってんだぞ?それで倒せてないそちらは、どうなん、だッ!」
《じっくりといたぶるのが趣味での、あの女もそのように苦しんで死におったわ》
「へっ、母さんにゃ悪いが、まだ俺はあっちに行く予定は無いな!」
何度目だろうか、ブレードを振り下ろす。
無論容易に弾かれ、削られるのはこちらの刃。
今だドローン全機健在、射撃型はとんでもない弾幕を…止めた…おん?
《隊長!2機ともリロードに入ります!》
《分かった!早めに済ませよ!》
こいつぁいい情報だ。
というか、それを待っていた。
「システム!用意しとけよ!」
「万事完了している』
「さっすが!」
ガンッガンッと変わらず金属が弾き合う。
何とか射撃型を落とそうと射線を通すが。
《よそ見してると死ぬぞ!》
「誰もする余裕はねぇよ!」
このままでは、数少ない隙のうちの一つが消えてしまう。
一旦俺は考えつつ距離をとった。
「…システム、用意」
「機体行動予測、完了』
俺はシールドを背中のジョイントに繋ぎ合わせ、とある技の体制をとる。
相手のドローンがここぞとばかりに360度取り囲んできたが、むしろありがたい。
まぁたしかにこちらが待ち
「ふぅー…ッ!」
これでまずあのインチキ兵器を全てぶっ飛ばせるというものだ。
「せいぜい後悔しやがれ!母さん直伝!」
出力調整完了。
「『飛竜・雷光』ッ!!」
…よく母さんはこんな技を編み出した上に微妙な名前をつけたもんだ。
技自体はスラスタと手腕部の出力をガン上げして敵を翻弄、撃破する技だ。
燃料残量を省みないなら連続使用も可能だ。
ただそれをやると整備士共が悲鳴をあげるぞと母さんは言っていた。
「ドローン破壊、システムッ!」
「了解』
《早っ!?》
《ッ!!》
やはり相手は着いてこれていない。
無理もない、ドローン20機破壊するのに5秒しかかからなかったのだ。
ただ、あのエース野郎は反応してきている。
だが手遅れだ、もう射撃型は捉えた。
《ソジュ!アンカー!》
《分かったわ!》
「ッ!?まだなんかありやがったか!」
何か無線から聞こえたと同時に、左腕部に異常が発生した。
「状きょ━』
「━構うな!射撃続行!」
俺はシステムに命令を飛ばした。
ただ、音声認証機能があるとはいえ完全に聞くかは怪しいので、ちゃんとコンソールでコマンドを打っておく。
《ぐわっ!?》
《クソッ!避けきれん!》
やはり頼りになる。
二門の電磁砲は標準上に相手を捉え、残弾1発、最後の仕事を果たし、射撃型2機を中破させ撤退させた。
さて、問題は…
《でぇぇりゃぁぁぁぁあ!!!》
「っんぐぐ…」
俺の方だ。
このアンカー、なかなかに頑丈で、俺は物理的に振り回されている。
アンカーを切ろうにも周波ブレードは迎撃で忙しい。
そしてひたすらアンカーに体制を崩され、迎撃すら困難である。
「…このっ!」
「左腕部駆動系、最大出力稼働』
《なっ…パワー負けしたっ!?》
システムとは本当に偉大なもんである。
言ってもないのにすぐに俺のしたいことを先読みした。
左腕部を何とかこちらの制御下に取り返し、ブレードを逆手に構え、アンカーを切り裂いた。
《くっ…はぁ、はぁ…》
「はぁ……はぁ……」
双方疲れが出ているのか、3機と1機で睨み合っている。
横から朝日がさしてきた。
…待てよ?確か戦闘開始は5時過ぎ…
「……システム…あと何分残ってる?」
「…2分程』
と、右上に『130秒』のカウントダウンが始まった。
《しかし、隊長…》
《命令だ、先に戻れ》
相手はあのエース野郎以外撤退していた。
…出来れば逃がしたくないが、エースを背中に抱えながら2分以内に奴らを倒せるかと聞かれれば、無理と答える。
「…やるか…」
《…タイマンといこうでは無いか…》
奴は…ビームブレードなる物を出した。
こちらはまだそんなものは無いので、周波ブレードを両手に装備した。
そして、
「うりゃァァ!!!」
《ぬぉぉぉぉお!!》
朝日に照らされながら、2つの影が重なった。
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