記録No.3 先輩付き合い
「…何故俺だけ?」
あの不良共は全員怯えながら帰っていった。
あの野郎共ッ!!
「聞かずとも分かる、と私は思いますが」
そう言って目の前の女は構えをとった。
もう嫌という程見た構えだ。
「…久しぶりの再会なのにこれかよ、リズ…」
「私はなんの違和感もありませんが?」
「はいはい、行くぞっ!」
俺も構えを取り、殴りかかった。
軽めのジャブ、それをリズ、本名リーゼロッテ・フェンはわざと腹筋で受け、カウンターに顔を狙った右、スレスレで避けて肘を顔に入れた、が左腕で受けられ、リズの前蹴りをくらった。
「相変わらずのパワーだ事…」
「怠ることはしていませんから、そういうあなたこそ、腕が落ちたのでは?」
「俺が女に本気出せないこと知っといて、そんなこと言うなよ…」
俺は中段蹴りを打ち、リズは掴もうとし、俺はそれを狙っていたため、体をねじり逆足を当てた。
「いてっ…」
「…素の声は可愛いのになぁ…」
「…ガキィ💢…」
「ホグアッ!?」
腹に素晴らしい衝撃が走った。
しかもこれは内臓に響くタイプ…
「でめぇ…」
俺がうずくまりながら呻くと、平然とした顔で、
「人を煽るからこうなるのです、機体でもやり合いたいところですが…シャロが寂しがっている気がするので、案内してください?」
薄く笑いながら、艶のある白髪を垂らし、見下げてきた。
その姿はさながら女王である。
「…仰せのままに…」
俺はのっそりと立ち上がった。
「んふふ、変わりませんねぇ」
女王は満足そうに笑っている。
俺は呆れて、
「そうかもな、とりあえず行くぞ」
素っ気なく返すと、
「…上官、しかも歳上に、その言葉遣いはどうなんですか?」
上目遣いで睨んできた。
俺は溜息をつき、
「元々俺の方が年上と勘違いしてたチビが随分な物言いだぜ、全く…」
「…あの時はディークの方が背が高かっただけです、今も高いですけど…歳は私の方が3つ上です、その上私の階級は『少佐』ですよ、候補生とはちがうんです」
ふんっ、と誰かと同じような威張り方をして、そっぽを向いて歩き出した。
こいつのプロフィールをチョロっと話そう。
さっき本名を言った通り、リーゼロッテ・フェン、つまりシャロの姉ちゃんだ、それと俺と幼なじみだ。
昔はこんなに固い口調も性格もしていなかったのだが、戦争の影響で色々と変わってしまった人だ。
「ところで、何用でこんなとこに?」
さっき自慢げに言ってた通り、リズは少佐だ、実力もある。
本来は前線でバリバリ戦闘中のはずだが…
「派遣されたんですよ、ここらで敵エースが出てきたらしく、今回は運良くとある候補生が撃退してくれたって話ですが…なんでも、その候補生は
リズは感心した顔で「すごいですよねぇ〜、候補生の段階でエースと張り合えるって…」と続けた。
…どうしたものか、まぁ行ったところで信じないと思うので、俺は、
「機会があれば、是非手合わせ願いたいね〜、まぁ、人脈の都合上、そんな機会無ぇだろうけどなぁ」
素知らぬ顔で話を合わせた。
「操縦技術はそこそこあるのに、もったいないですよねぇ…」
「好きで避けてるわけじゃねぇよ…」
リズは苦笑いしていた。
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