記録No.2.5 相棒としての不安

教官は「また明日な」と言って去っていった。

私はすかさず、


「…ディー、今日一緒に寝たい」

「おう、急だな?」

「…だめ?…」

「ダメじゃないが〜…理由ぐらい聞いてもいいか?」


ディーは微妙に困っている。

まぁ、 私が困らせるような発言をしたわけだけど。

…理由はただ1つ。


「…明日本部から通達みたいなの来るんでしょ?」

「そうだな」


ディーはふむ、と頷いた。

私は無言でディーに抱き着いた。


「…それで明日からパイロットです、みたいなのがあったら、怖いから…これが理由」

「な〜るほど、まぁ気持ちはわからんでもねぇな」

「でしょ?」


ディーは納得してくれているみたいだ。

ひとまず安心。


「なんせシャロは俺以外ろくに話せないもんな」

「…むぅ…」


半笑いで言ってきた。

意地が悪い。

でも次のセリフで、私の気持ちがふわっと舞った。


「まぁ、俺はシャロから離れる気は毛頭ないから、安心しとけ」


そう言ってディーは頭を撫でてくれた。


「!…うん!」


我ながらなんというか…軽く依存してるんじゃないかとうたがえる。

私からディーが居なくなったら…もちろん嫌なのだが、自分がどうなるのか不安である。

そうしてディーの胸に飛び込んだまま頬擦りをしていると、


「…シャロ、風呂入ってきたいんだが〜、いいか?」

「…ん〜…うん、後からで我慢する、私も入んなきゃだし」

「おう、じゃ、部屋行くか」

「うん!」


そうして二人並んで部屋に服を取りに行った。




「っかぁ〜堪んねぇ〜…」


ディーはまた風呂上がりに爪楊枝を噛んでいた。

私も前噛ませてもらったけど、即刻吐き出してしまった。

本人は爽快感がどうとか言ってたけど、あれは爽快感じゃなくてもはや新手の拷問だと思う…


「…普通風呂上がりなら牛乳とかじゃないの?」

「人それぞれさ、確かに牛乳も美味いが、俺はこいつの方が好みなんだよ」

「…あたまおかしい」

「すごい純粋な罵倒…そういうシャロこそ、いっつもフルーツ牛乳って、飽きないのかよ?」

「至高の飲み物だから飽きない、ディーには分けないよ〜」


「ふふん」と私は胸を張った。

ディーはそんな私を見て、


「…ちょっとは膨らんだか?」

「っ///……この変態っ!!」

「あべしっ…」


全力でディーの頭を叩いた。

私は怒って、さっさと牛乳を飲んでその場から去ろうとした。

でも、私の手に一回り以上大きい手が着いてきた。


「…部屋先戻ってるなら、これ要るだろ?」


渡されたのはディーの部屋の鍵だった。


「…ありがと」

「あ、ベットの裏探るとかいうベターなことしてもなんもねぇからな?」

「小説とかの読みすぎだよ」

「過去のシャロの方が…」

「…言ったら口聞かないから」

「OKわかった、あとでな」


そう言ってディーは格納庫に向かって行った。

ちなみに今の私たちの姿は戦闘服だ。

ここは戦場ではないと言えど、やはり近いのでいつ敵が来るかわからないのである。


「…ディーと離れたくないな〜…」


私はのんびりとした足取りで部屋へ向かった。

その後、間抜けな私はディーの部屋へ入ってベットに寝っ転がったまでは良かったのだが、匂いやら雰囲気やらで安心してしまった私はそのまま寝落ちて、ディーがいつ戻ってきたのか分からず、気づけば朝となっていた。

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