記録No.2 再戦の誓い
「あらよっと…」
《このっ!このっ!》
あの隙のない永仁が…いや、今も隙は全くないのだが、なんというか動きがよく読める。
だが、きついのは何ら変わらない。
《このっ!…ん?》
「ふぃ〜…きっつ…」
ようやく一息つけた、何故か分からないが。
その後、頭が何故かを理解した時、
《貴様!その機体!その声!二度と忘れんからな!》
「俺を忘れないのは苦労するんじゃねぇか?…なんせ名無しだしな…はぁ…」
《今度会う時は覚悟しておれ!》
「またバグってんぞ〜」
《うるさいわ!散れ!》
散々言ってやつは戦艦に戻って行った。
そして戦艦もそそくさとこの空域から去った。
「…一件落着、か…管制室、こちらディーコン…敵艦の撤退を確認…」
「こちら管制室、こちらでも確認した、貴機の撤退を許可する」
「はぁ…了解、帰投する」
胸ポケットから、替えの爪楊枝を取りだし、噛んだ。
口の中に爽やかなミントの香りが充満し、突き抜けるような爽快感を感じる。
「堪んねぇ〜…」
1人堪能しつつ、格納庫へ入った。
すると、
「よくやったな!!」
「敵エースとタイマンだろ?ほんとよくやるよ!」
などと、整備クルーと教官達が拍手で迎えてくれた。
なぜ拍手等されるのか分からないので、俺じゃないかもしれないからスルーさした。
あと何か…見覚えの無い人間も尊敬の眼差しをこの機体に送っていた。
「…誰だあいつ?」
機体はコンベアーに揺られて格納場所へと入った。
俺はハッチを開けて外に出た。
今回は特に何も無く出れた。
「ディーっ!」
「のわっ、と…どうしたんだよ、飛び込んでくるなんて」
シャロが勢いよく胸に飛び込んできた。
身長差的にもハグに適切なのでお互いどこかをぶつけるなんてことも特になかった。
ただシャロが可愛いだけである。
「よくやったな、ディーク」
「教官…なんかみんな騒がしいですけどなんかあったんすか?」
教官が頭を撫でてきたが…俺には心当たりがない。
あとシャロが頭を擦りつけてくる、超可愛い。
「はぁ…30機撃破、戦艦を相手取ってウォール発生装置も全破壊、オマケにエースとタイマン張って生還してきた、これが表すこととはなんだと思う?」
30機撃破は相手が微妙に油断していただけだと思うし、戦艦を相手取るのはチャフや閃光弾のおかげで、あのエース…女だしな。
果たして表すこととは何なのか?
「…なんです?」
「はぁ…じゃあ聞くが、お前の憧れは誰だ?」
「フライヤーです」
「そうだな、そのフライヤーはどんな戦い方してる?」
「1機で50機を撃破したり、戦艦を堕としたり、エースを仕留めるまでには行きませんが、2、3機を1人で相手しています」
「まぁあいつはバケモンだしな…で、お前の今回の戦績と照らし合わせてみろ?」
「…」
何となく自分の中で合点がいった。
つまり…
「…エースには及ばずとも、かなりの働きということですか?」
「及ぶけどな十分。まぁ、謙虚なのはお前のいい所だ、そのままでいてくれよ」
教官がまたわしゃわしゃと頭を撫でてきた。
それに対抗するようにシャロのハグが強くなる。
対抗する意味がどれだけあるのかは不明だ。
「…さっき聞いた話なんだが、この件について、本部も対応を悩んでいるらしい」
「えっ…」
「そんな困った顔をするな、お前は悪くない、むしろこりゃ凄いことなんだ、誇っていいレベルでな」
教官は真面目な顔で俺に伝えてきた。
俺は褒められるという経験ある方では無いので、かなりたじろいだ。
そんな俺を見て、教官は笑いながら
「お前もこういうところは子供だなぁ、何歳だっけ?」
「俺もシャロも19ですよ、子供扱いは…いや、微妙な歳ですね」
「そうやって客観的に見る視野を持ち合わせてるのは、子供らしくないな」
「子供らしくなくて結構です、それで、本部の通達的なものはいつ届くのですか?」
俺は何気なく聞いたが、教官の顔が深刻なものになった。
「あ〜、それなんだが…多分明日には、色々届くと思うんだよな」
その教官の言葉に、2人して、
「「明日!?」」
声を出して驚いた。
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