記録No.1 模擬戦
『第99wave、開始。』
無機質な声がコクピット内に響く。
と同時に、ヘッドカメラモニターのマップに、赤点のフリップが津波のように増える。
対照的に青点のフリップは後方に一つだけ。
「…翼部機銃残弾80、メインブラスター付属大型機関銃残弾50…」
ポチポチ、ピチピチ…
右手でピアノの旋律を奏でるかのように、ホログラムのボードを叩く。
その視界端、微妙に年季が入ってしまっている手部がブラスターを上げ、
「報告:敵性メカバグ、射程圏内』
耳タコな機械音声が告げる。
見りゃわかるっての。
「はいはい報告どうも、」
「はい、は1回』
「へ〜い。」
呑気な会話をしつつも、手を操縦桿(そうじゅうかん)、足で出力調整器を踏んだり蹴ったりしながら、敵の弾幕を避ける。
傍から見れば針山のように見えるらしい。
ここで解説するが、俺の搭乗機は『スピード・スパイク』、空陸機動攻撃特化、スピード重視の軽装甲、実に危ない機体である。
それなりの実力がないと扱えない、これは体験談だ。
「んっ…んん…」
しかし、俺はこの機体が好きだ、どうしようもなく。
だからひたすら練習したし、乗りこなせるように癖も見抜き、細部まで
その成果が出たことで、この機体のプロと言っても良いようになって、この『訓練所』ではひたすらこの機体に乗っている。
そして、解説する際には絶対外すまいとしているのが、この場所で常に俺に着いてきてる…いや、着いてきてくれている人がいる。
「…ちょっと、敵にバレるの早すぎるよ」
俺の唯一無二の相棒だ。
解説の続きとして、俺と相棒の戦法を紹介しよう。
俺の戦法は、まず大体敵陣にカチコミ、突っ込み、掻き乱す。
そして被弾を避けつつ、機銃掃射や格闘技で仕留める、と言った戦法だ。
相棒の方は全くの逆で、超遠距離から高精度な狙撃を好む。
その上隠密だ、敵からすればこちらの方が恐ろしいだろう。
お互い真逆な戦法だが、相棒となっている。
…いや、むしろ真逆だからだろうか?
「うるっせぇなぁ、別に敵の弾にも当たんねぇし、そっちも楽に狙撃できて満足だろ?」
今は相棒に怒られたので抗議中だ。
で、なおかつ戦闘中だ。
「間違ってはないけど…危なかったよ、実践の時に」
「被弾しなかったからセーフだろ」
「少なくとも危険ではあるもん」
「…とほほ〜、相棒の信頼が薄い…」
「あ、いや、その…」
「冗談だよ、真に受けんな。」
「…堕とすよ?」
「冗談きついぜ勘弁して。」
とまぁ、なんの縁か分からないが、優秀な狙撃手がうちに居る。
あと実にいじりがいがある。※個人の感想です。
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