なんでもおかず
前回、碧が家に遊びに来てせっかくだからとご飯を振る舞う事になった隼瀬達。といっても殆どメインは隼瀬が作るのだが。碧がお米を炊いで炊飯器のスイッチを入れ、その間に隼瀬が冬未に指示しながらおかずの準備を進める。
「はあちゃん、簡単にでよかって言うたつに味噌汁まで・・・・・・ごめんね、ありがとう」
「なんなん、ありあわせだけん。それに焼きそばとご飯だけじゃ足らんどだん(足りないでしょ)?」
「確かに・・・・・・てか焼きそばとご飯食ぶっと?」
「「え、食べんと?」」
「なんか別々ってイメージ」
へー珍しいねと顔を合わせる夫婦である。基本的に筆者も含め西日本の人間は焼きそばでもラーメンでもなんでもおかずにする傾向があるとは思うが、碧はその類ではないようだ。
「へー、じゃあ、あおちゃんがご飯もスピード(早炊)にしてくれたしもうすぐ炊けるけん、冬未、お皿とかお箸とか出しとって」
「はーい」
「はあちゃん、ふうちゃんは結構家事手伝ってくれると?」
「んねんね、今日はあおちゃん来とるし、しこつけとっだけよ」※しこつける(かっこつける)、省略してしこるという場合もあるが、他地域では口に出しづらい
と、その冬未が隼瀬の頭を掴む。
「誰がしこっとってや?」
「あ、おったつね」
「全部聞こえとったい。お皿出したけんね、焼きそば持ってこか」
「うん、ならあおちゃん、僕達持ってくっけん座っとってよかよ」
「あ、うん」
そして大皿に山盛りの海鮮焼きそばと、熱々の味噌汁、そして炊きたてのご飯がテーブルという名のコタツ兼用のちゃぶ台に乗せられ、3人一緒にいただきますして、山盛りの焼きそばもどんどん減っていく。
「はあちゃんさすが、料理上手いねえ」
「んねんね、今日は家にあったもんだけだけんね」
「謙遜してー、ふうちゃんは毎日はあちゃんの手料理だろ、よかなあ」
「よかでしょ、まあ妻の特権よ」
喋っている間にも箸は止まらず、あっという間に全部平らげた3人。性別問わず10代の食欲というものは底を知らない。
「ふぅ食べた食べた、あおちゃんも綺麗に食べてくれたね」
「だってかなり美味しかったし、じゃあそろそろお暇しようかね」
「なんね、もう帰ると?」
「帰るとってもう暗くなっとるし、二人の邪魔はできんたい。じゃ」
いくらなんでも新婚夫婦の家に泊まったりするのは気が引ける碧はそのまま帰ろうとするが、冬未と隼瀬は車で送っていくよと引き止める。
「そぎゃんしてもらわんちゃよか、まだバスで帰れるけん」
「なーんよかたい、あおちゃん家も分かっとるけん」
というわけで押し問答もめんどくさいと思った碧は素直に二人の厚意に甘えることにした。
車内
「え、はあちゃんが運転すっと?大丈夫?」
「あおちゃんどういう意味ね?!」
そう、碧は隼瀬が車の免許を取ってから方向音痴が改善されている事を知らないのだ。冬未がその事を伝えると、心底驚いた様子である。
「小さい頃からはあちゃん、よう迷子になっとったてねえ」
「なんでそぎゃんこつ覚えとっかなあ・・・・・・」
不満そうに言う隼瀬が、シフトミスして車がガクガク揺れて、どっちの意味でも本当に大丈夫かなと思う碧であったが、その後の彼は道を間違えることも無く、普通に運転して普通に家まで送ってくれ謎の感動を覚える。
「ありがと、はあちゃん、ふうちゃん」
「「いいえー、じゃあまた学校で」」
「ばいばーい」
碧を送り届けた後、助手席に座る冬未が何かソワソワして隼瀬が察する。
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