やっぱ



2007年 6月 学校



いつものように蒸し暑い中でも教室で寄り添っている夫婦に、碧が声をかける。



「ねえ新婚さん、今日放課後二人の愛の巣に行っていい?」



「愛の巣て・・・・・・まあよかよ」



というわけであっという間に放課後となり、冬未と隼瀬は碧を連れて帰る。



「あおちゃんが家に来るの久しぶりね」



「そうね、3年生なって皆色々忙しいけんね」



「じゃあ今お茶入れるけん待っとって」



「はーい・・・・・・やっぱ記憶はもうないか」



隼瀬が離れた隙に、冬未に聞こえるよう呟く碧。



「やっぱ?」



「逆転世界のはあちゃんの意識が完全にこっちのはあちゃんに融合しとるごたんね」



「・・・・・・だったらあっちの世界の隼瀬は存在せんごつなったち事?」



「いや、抜け殻にはまた新しい意識が入って存在は維持できるよ」



「よう分からんわ・・・・・・」



「まあとにかく、はあちゃんの中であっちの世界の記憶が消えても問題はなかって事」



「ならよかった」



冬未と碧がそんな会話をしていると、お茶を持ってきた隼瀬が不思議そうに二人の顔を見る。



「冬未もあおちゃんも何話しよったん?」



「「べ、別になんもないよ」」



「んー?まあよかか、あおちゃんご飯食べてくど?何がよか?っても買い物行っとらんけんあんま何でんななかばってん」



「オムライス!」



碧が答える前に冬未が答える。



「冬未じゃなくてあおちゃんに聞いとっとたい。あんたはいつでん食べらるっでしょが」



「すんまっせん」



「ふうちゃんって案外はあちゃんの尻に敷かれるタイプなんか」



「敷いとるつもりなかばってんね、それであおちゃん、何にする?」



「うーん、まあいきなり来て申し訳ないくらいだし、簡単なもんでよかよ」



「簡単なもんか・・・・・・よし、じゃあ待っとってね」



「あ、してもらってばっかじゃあれだけん米くらいかしごうか」



「あおちゃん女の子なのにて言うたらあればってんできると?」



「うん、そんくらいはね」



「じゃあお願いしよか」



と、冬未が何か不機嫌そうに言う。



「私も何か手伝う」



「おお珍しか・・・・・・ならあおちゃんは米炊いでもろて、冬未は冷凍庫からシーフードミックス出して解凍して、野菜切っといて」



「「はーい」」



というわけで狭い台所で料理を開始する夫婦と幼なじみ。














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