祝
「改めまして、隼瀬さんと結婚させてください」
在学中の入籍を遂に決めた3月末、冬未と隼瀬は改めて挨拶に隼瀬の実家を訪れていた。が、これまでにも説明してきたようにそもそも二人は許嫁として両家とも考えており、これはただ冬未の義理のようなものであったが。
「冬未ちゃん、そんな頭下げんちゃよかたい」
美香も困惑しつつ、隼瀬と冬未の顔をそれぞれ見て言葉を紡ぐ。
「隼瀬が冬未ちゃんと出会ってから仲良なってって、いつかこの日は来っとだろねって思とった。隼瀬は私達の可愛い息子から、冬未ちゃんの可愛いお婿さんにいつか・・・・・・って、そのいつかのもう来たつねえ」
この世界の母親にとっての息子という存在は筆者達の世界で言う父親にとっての娘のようなもので、その結婚というのはやはり特別な思いがあり、いつになく慎ましく冬未に寄り添う隼瀬の顔を感慨深げに見る。そして、色んな思いが詰まった一言を冬未に伝える。
「うちの息子をよろしくお願いします」
「はい!」
力強く自信満々に返事をする冬未。まあ挨拶に来るまでもなく、冬未の両親と隼瀬の両親は彼女らの友人達と結託してとある計画を進めていたのだが、二人はこの時点ではまだ知らない。
2007年4月下旬 日曜日 学校
正門前に到着した冬未と隼瀬を咲良と充希が出迎え、控え室の教室へ案内する。まあ二人とも少し前になぜか衣装が完璧に用意されていてそれっぽい写真を撮ったり、補習でもないのに日曜日に学校へ呼び出されている時点である程度予想はしていたが、やはりこういうサプライズは嬉しいものである。して、親友達の介添えでそれぞれ着替え、いよいよ本番だ。
「新郎の入場です」
充希のアナウンスの後、美香とバージンロードを歩いてくる純白のドレス姿の隼瀬を冬未は感慨深げに見つめる。して、咲良が神母として二人に愛の誓いを確認する。本当この人なんでもやるな。
「健やかなる時も病める時も互いを支え、守り、愛し抜く事を誓いますか?」
「誓います」「誓います」
誓いのキスをして、冬未が事前に用意していた指輪を交換した二人に、祝福の拍手があがる。そして式の後の結婚披露宴、隼瀬がお色直しに行っている間、暁美が冬未の前に行って深々と頭を下げて告げる。
「これから弟を、隼瀬をお願いします」
それだけの短い言葉、これでいよいよ本気で隼瀬を冬未に託すという決意の言葉を冬未もしっかり受け止め、戻って来た隼瀬の手をしっかりと握るのであった。
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