第4話 ここを仮拠点とする!

無残に破壊された城門の前まで近づいてはきたが人気はまったくない。それもそのはず衛兵だと思われるモノは吹き飛んだ門と一緒に転がっていた。


「ライラ、これは貴女の仕業なの?」


ラミィは首をふるふると左右に振っている。どうやら違うようだ。


じゃあ誰が……と地面に残された足跡と見ると干からびた血とともに巨大な鶏の足跡らしきものが残されている。


私の脳内状態変化アーカイブから予測できる生物か魔物であれば二体心当たりがある。『バジリスク』か『コカトリス』のどちらかである。


どっちも似たような見た目をしているけど共通の特徴として生物を石化させる能力を持っていたはず。


流石にこの町の中から居なくなっていると思うし警戒はしつつも城壁の中へ入ることにした。


ライラの引く幌馬車に揺られながら道端に残されていた元住民の石像を見ると全員が恐怖で歪んだ表情をしている。私の性癖的にはあまりそそられないなぁ等と思いながら進んでいるとこの町で一番大きそうな館の前に出た。


館をぐるりと囲む塀、荒らされてはいたが丁寧に整えられていたであろう庭、そして中心にそびえ立つ3階建てほどの大きな館がどんと構えていた。


どうやらここを収めていた貴族か伯爵の屋敷みたいだが人っ子一人見えないもぬけの殻、代わりにメイドや執事風の石像が数体転がってる。


「大きいわね。……そうだ皆石になっちゃってるし別に私が使っても怒られないでしょ」


ラミィと幌馬車を外に残して屋敷へ探索がてら中に入っていくと中にも石になったメイドや執事が転がっていた。


執務室は上層階に作られていそうと勝手な予想を立てておきまず探索といえば地下室、真っ先に地下へと伸びる通路もしくは階段を見つけ出すことにした。

あっさりと地下への階段は見つかり降りていくと地上部の屋敷よりも大きな地下室が私の目の前に広がっている。

色々な物品を保管しておくための倉庫ようで麦等の食糧やその他貿易をするための物品が保管してあったがほとんどが空である。


この広さならと、他の入り口を確認してみるとライラが通れそうな出入り口を見つけた。そこから外へでてライラを地下室まで案内する。


「ライラ、私はこの屋敷を探検するから石化した女性だけを集めてここに並べておいて。男の人は……ひとまず隅の方にでも集めておいてね」


こくり、と頷くと即座に幌馬車から先程積んできた石像を降ろし屋敷の外へ出払って行った。


「さぁ、石になっているかは解らないけどここの伯爵様に挨拶にでも行きましょうか」


ジョーク交じりに階段を登っていって3階にたどり着く。全部で部屋は六部屋あるようで全てを探索し終えるには時間こそ掛かるがライラが仕事を終えて戻ってくる頃には丁度いい時間になると思えた。


先ずは登って来た階段の一番近い部屋『リリィの部屋』と何故か読めるプレートがドアにあるため寝室と予想が付いた。室内にはドレッサーに隣部屋へとつながるドア、カーテン付きのベッド、そして窓際には石像が転がっていた。

近寄ってみるときらびやかとは言えないが上質な素材が使われたドレスを身に着けておりこの館の御令嬢リリィだと予想がつく。


「なんで石化してるのかしら……ってここの窓から広場が見えるのね」


ご令嬢の部屋からは屋敷の庭が一望できた。多分だけど庭に魔物が進入してきた騒ぎで窓から覗いたのが運の尽き、眼を合わせてしまったのだろう表情は呆気か驚きの表情をしていた。


これ以上は目ぼしそうな物も無さそうなので少々重かったがリリィの石像を引きずって後々利用するために廊下に出しておく。


隣の部屋は衣装部屋となっており、綺羅びやかなドレスからご令嬢様が着るの?と疑問が浮かぶメイド服や給仕用の服がしまわれていた。


さらにその隣も寝室のようで石像こそ無かったものの『リリアンの部屋』のプレートがあり石像こそ無かったもののご令嬢と思われる寝室があった。


この三部屋の他に伯爵夫妻の寝室その物置と特に面白みがない二部屋を探し終えようやく最後の部屋へとたどり着いた。


「さあてここが伯爵の執務室ね。どんなお宝があるのかしら」


金銀財宝、もしくは石像(興味なし)があると偏見を持ちながら扉を開けるとそこには金銀財宝どころか荒らされており何も見当たらない。


執務用の豪華そうな机は残っていたが書類等を収めていたであろう戸棚は引き出しが全て引き出さてて荒らされた様に何も残っては居なかった。


強盗にでもあったのかと思えるほどに荒れ果てていたが、この騒動がきっかけでこうなったとすれば私の推理の辻褄が合う。


「なるほどねぇ。自分自身の保身のことしか考えてない伯爵様だったのかしら。住民どころか自分の娘すら置いて逃げ出してんだクソ野郎ね」


思わず暴言がでてしまったが伯爵がこの場にいないことは好都合であった。主の居なくなった執務席のイスに腰を下ろす。


ふと考えるとここの主が居ない、つまりは私がここの屋敷を実質的に手に入れても誰も文句を言わないといっても過言では無いのである。


それに私は使役の呪文ヒプノバリスがある。


これを使って伯爵の娘、リリィお嬢様をゴーレムに仕立て私が代理で領地を運営すると言えばドリームアイランドの第一歩が踏み出せてしまう。


そうと決まればイスから立ち上がるとライラがいる地下室へと向かう。ライラは仕事を終えて石像のように佇んでいる(実際には石化しているのだが)だろうと思い鼻歌を歌いながら階段を降りていった。

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