第2話 ナーガには勝てなかったよ……

「……私死んだかもしれない」


 半身が蛇、もう半分は人型をしたナーガと思われる生物が近づいてきていた。


 じりじりと熊と対面した時のように後ろに下がりながら思考を巡らせる。


(落ち着いて私……生き物、熊と生態が似てるなら眼を合わせ続けて後ろに下がれば逃げられるはず……)


 眼をそらさぬようにジリジリと下がり視界から見えなくなったところで全力で走って遠ざかるのが最善と考えていた私は致命的なミスを犯していたことを忘れていた。


(あれ?ナーガ系の魔物が石化させる方法ってたしか……)


 そう考えが浮かんだ時には時すでに遅し、ナーガの黄金色をした蛇眼が怪しい光を放った。


 しまったと思い眼を隠すが時既に遅し、私はその光をしっかりと見てしまったのだ。


 あぁ、私の下半身はもう石に変わってそのうち全身が石へと変わってしまう。


 私はそんなに容姿がイイ方ではないと自覚しているので石化した後は砕かれる。


 そう考えると残された時間は短い……と思っていたが不思議そうに身体を触ってみる。


「あれ?あれれ?私石になってないやったー!」


 喜んでいるのもつかの間なぜと不思議そうな顔をしていたナーガが驚きの表情を見せ私めがけて突進して来る。


 力づくで何とかとしてくるが私は間一髪のところで交わす。


(危ないなぁ……毎日筋トレしてなきゃ避けられなかったわ)


 だが回避ばかりでは体力が削られるし何より逃げることができない。


 持久力で逃げ出そうにも


 何とかして攻めに転じて逃げを打ちたいが突進をしてくるナーガに対して有効な手立てを思いつかないでいた。


 そして私はナーガの正面突進だけを意識しすぎていたせいでナーガに尻尾があることをすっかり失念しており、突進を交わしたと思っていたが横から尻尾の薙ぎ払いが飛んできた。


 これを回避することのができず私は派手に吹っ飛ばされて木に叩きつけられる。


 薙ぎ払いの時に眼鏡も吹き飛んで道に転がっていた。


 骨は繋がっているみたいだけど全身から痛みを感じ意識が飛びそうになる。


「痛ったぁ……あっ」


 ふらつく頭を抑えながら顔を上げる。


 目の前にいはナーガがおり笑顔を浮かべながら身体の動かせない私の顎をくい持ち上げる。


 整った顔が近く黄色の魅力的な蛇眼から眼が離せずじっと見つめ返してしまっていると再びその眼が光り今度こそ避けることは出来なかった。


 足のつま先から感覚が痺れるような感覚が広がっていく。


 全身の痛みが痺れと代わり残すは首から上だけとなる。


「んーっっ……んーっ…………」


 しまいには声すらも出せなくなっていた。


 嫌だ石になって死にたくない。


 私の姿こそ確認は出来ないけどもう生身の部位は無く大部分が無機質な灰色に染まっていることだろう。 


 そう考えると私の頬から自然と涙が流れているが痺れは止まらない。


 ……私がコレクションにしていた娘たちも同じような気持ちだったのかな。


 今更後悔しても遅いと思うが短く楽しかった人生だと振り返る。


 私の最後の記憶はナーガが何かに驚いた表情をみせた所で途切れ私の意識は闇へと沈んでいった。

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