第20話 隕石使いのもぐり弟子
「……どうだね、条件を呑むのか呑まないのか。言っておくが即答以外は、なしだ」
「――わかりました」
「ようし、いい心がけだ。ではこいつに表示されている『
大曲は樹脂ケースをバッグにしまうと、ペン付きのタブレットを能島の間につき出した。
まずいぞと僕は思った。このままあの得体の知れない契約書にサインしてしまったら、能島さんは奴らの言いなりだ。何とかして回避させないと――
こうなったら力づくで阻止するしかない、僕が腹を括ったその時だった。
「――だめっ!」
突然、能島を制する声が聞こえたかと思うと、僕が腰を浮かせるより一瞬早く璃々砂が立ちあがった。
「ん……誰だ?」
「その契約フォームににサインしちゃ駄目。サインしちゃうと宇宙消滅の日まで有効になるわ」
威嚇のつもりか璃々砂は懐中電灯の光を大曲に向け、仁王立ちになって言い放った。
――僕には懐中電灯をつけるなって言っておきながら、自分は堂々とつけてるんじゃないか。
飛びだすタイミングを失った僕は、大曲と璃々砂のやり取りを野次馬のように遠巻きにして見守った。
「あなた『プラネタリーノ』の手下ね?他の星の人を脅すのはほどほどにしないと、この星にいられなくなるわよ」
「ふん、そうか。お前がボスの言っていた「わずらわしい小娘」だな?……面白い、この俺を止めることができるかな?」
大曲が薄笑いを浮かべながら取り出した物を目の当たりにした途端、璃々砂の顔から不敵な表情が拭われるように消え失せた。
「……隕石!そっか、他の『来訪者』にちょっかいだすだけじゃなく隕石泥棒までやっていたのね。これはいよいよ「
「――できるものならやってみろ!」
大曲がひと声吠えて拳を突き出すと、拳から放たれた青白い火花が璃々砂に向かって襲い掛かった。
「そのくらいこっちだって出せるわ!」
璃々砂が広げた両手を前に出すと、璃々砂から放たれた火花と大曲の火花とが空中で激突し雷鳴のような音をとどろかせた。
「ふふん、さすがは、このあたりで名をとどろかす『メテオラ様』だな。……だが、隕石使いはあんた一人じゃないんだ!」
大曲が叫ぶと衝撃波のような見えない何かが地面を削って走り、璃々砂を直撃した。
「――きゃあっ」
ふっ飛ばされた璃々砂の小さな身体は空中できりもみすると、地面の上でバウンドした。
「くく、余計なことに首を突っ込むからこういう事になるんだ。気の毒だがしばらくの間、お家でおとなしくしていてもらおう」
大曲が非情な口調でそう告げ、横たわっている璃々砂に向けて手を伸ばそうとしたその時だった。突然、大曲の挙動が石のように固まったかと思うと、足元のバッグが開いて中から樹脂ケースが姿を覗かせた。
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