第18話 本部長は最後の指令を下す
「な、なんだあれは……」
僕が光る裸の人間に目を凝らしていると、突然、「きゃっ」と言う声と共に璃々砂が墜落するのが見えた。
「危ない!」
僕が叫ぶのとほぼ同時に、それまで俯せになって地面に伏していたボリスがむくりと起き上がり、風のような速さで移動したかと思うと璃々砂の身体を受け止めた。
「ふう、ありがとボリス。まずまずの早さだったわ」
何事もなかったかのように地面に降り立った璃々砂がボリスをねぎらうと、ばたばたと足音がして善行と用心棒たちが車に駆けこむのが見えた。
「……くそっ、星屑どもに邪魔さえされなければ、お前たちの命乞いが見られた物を」
善行は憎々し気に捨て台詞を吐くと、これ見よがしにタイヤを軋ませてその場から立ち去った。
「――なんだか締まらない終わり方だけど、とりあえずこっち側に被害がなくて良かったわ」
悪者と共に謎の生き物も消えた路上で、璃々砂がせいせいしたように言った。
「あの光る人間みたいな生き物、なんでしょうね」
僕が何気なく疑問を口にすると、璃々砂は「何となく覚えがあるわね。……ボリス、『来訪者図鑑』は持ってる?」
「はい。最近、オンライン版を作った人がいるようですが見ますか?」
「見るわ」
「……来訪者図鑑?」
ボリスからタブレットを手渡され、操作を始めた璃々砂を見ながら僕は首をかしげた。
――図鑑だか何だか知らないけど、さっきの「光る人間」について書いてる人がいるってこと?
僕が覗きこみたいのをこらえてじっと待っていると突然、璃々砂が「あった!これに間違いないわ」と叫んだ。
「何があったんだい?」
「事件を解くカギよ。これで最後の検証さえできれば全ての謎が説明できるわ」
「なんだいその、最後の検証ってのは」
「真相を知る唯一の存在……『消えた星屑王子』の居場所を突き止めることよ」
「消えた王子?……クイズみたいな言い方はよしてくれ」
僕が呆れてタブレットを覗きこもうとすると、璃々砂はさっとボリスの手に戻して「先に解答を見るのはフェアじゃないわ」と言った。
「真相がわかってるなら教えてくれ。これ以上、勿体つけられたらたまったもんじゃない」
「それもそうね。……じゃあ、代わりに最後のミッションを伝えるわ」
「最後のミッション?」
僕が首をかしげると、璃々砂は腕を組んで「そうよ。これからある人の張り込みをするの。うまく行けば明日には真相がわかるはず」と言った。
「張り込みだって?……やれやれ、これからってことはつまり休みなしか」
トラックの荷台を目で示す璃々砂に、僕はためをつくことでささやかな抵抗を試みた。
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