第6話 移住者は小さな顔役に挨拶する
「そうかあ、やっぱスカスカだったか。見るからにお化け屋敷だったもんね、あの小屋」
僕たちの新社屋から車で数分のところにある、木立の中の古民家――ライブ喫茶『
「いやあ、意外と住んでみたら快適なんじゃないかって気がしますけどね、お嬢さん。とにかく素敵な物件を紹介してくれて感謝してます」
門馬の言葉を聞いて僕は口をあんぐりさせた。なんてこった、あのあばら家を僕たちに紹介したのは、この隕石お嬢様だったのか。
「あの建物を使わせてもらえれば、私たちも来訪者たちを最前線で迎え撃つことができるわ。ここが捜査本部なら、あの建物はさしづめ交番ってとこかしらね」
ご機嫌を取りにかかっているのか、門馬は少女のよくわからないたとえにもうんうんと笑顔で頷き返していた。
「あのう……ひょっとして、最初から僕らにあの建物を整備させてるつもりで紹介しました?」
僕がおずおずと疑問を口にすると、璃々砂は「人聞きの悪いこと言わないで。あなたたちならきっと気に入ると思ったから好意で紹介させてもらったの。……まあ、綺麗になったら時々、使わせてもらいにうかがうかもしれないけど」としれっと言い放った。
「いいですね、ぜひいらしてください。互いに手を携え合ってこの地域を盛り上げて行きましょう」
おいパピィ、わけの分からん意気投合をするんじゃない。
「――まあ、俺たちはここじゃ新参者だからね。ひとつお手柔らかにお願いしますよ、お嬢様」
雨宮が冗談めかして言うと、璃々砂は「大丈夫よ、いくら地球人以外の住人が多いとは言っても、いきなり手足をもいだりはしないから安心して」と至って真面目な顔で答えた。
「地球人以外……」
僕は以前、璃々砂が言っていた「自分の中には死んだやくざの父親と隕石に乗ってやってきた宇宙人が入っている」という説明を思いだした。
「とりあえず、このあたりのごろつきにはあまり「おいた」をしないよう、私が良く言い聞かせておくわ」
僕が璃々砂の話を半信半疑のまま聞き流そうとした、その時だった。突然、入り口のドアに取りつけられている鈴が鳴って、小柄な初老男性が店内に姿を見せた。
「あら
「うん、ちょっと周りがごたごたしちまって、仕事にならなくてさ。言わば緊急避難だよ」
棟形とか言う初老男性は一気に吐き出すと、短く刈った胡麻塩頭を撫でながらカウンターの椅子にどっかりと腰を据えた。
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