第28話
「ですから申し上げました。セイル殿下のご影響だと」
「もしかしてセイルが可愛がっているからと学園側が目を瞑った?」
信じられないと問うと頷かれ唖然とした。
そこは目を瞑る場面ではないだろうと声を大にして言いたい。
「セイル殿下にはどんな傷も与えないこと。密かにご意思を通し守り抜くこと。これは先の陛下からのご遺言です。それ故に通ってしまったようです。ヘイゼル家の者を学園に入学させるという前代未聞の事態が」
「事情は大体わかった」
頭も胃も痛いが彼女が優哉の身近にいる理由はわかった。
すべて優哉の我儘のせいだと。
「なんとかしてセイルの傍から引き離せないか? ミリアージュ・ヘイゼルを。このまま近くには置いてはおけない。セイルは王となる身なのだから」
「わかっています。大臣たちにバレれば進退問題となることは」
「わかっていたら何故もっと早く行動に移さなかった? もしセイルが彼女を選んだりしたらっ!」
ただの幼馴染。
ただの妹代わりならまだいい。
弟が王となれば自然と付き合いもなくなる。
そうすれば彼女が幼馴染だったとしても、その存在が弟の身を脅かすことはなかっただろう。
だが、彼女は弟に好意を寄せている。
そのことで苦悩するほど弟も気にしている。
これが表沙汰になるのだけは、なんとしても防ぎたかった。
進退問題と言っても跡継ぎが弟しかいない今、王位から退けられるという事態にはならないだろう。
だが、彼女の存在は弟の身を縛りかねない。
強制的な婚姻。
望まない治世。
そんな事態を招きかねない。
ヘイゼル家の者と付き合っていた。
その事実が弟にとっての命取り。
弟の治世に影響するだけのものわ彼女は秘めていた。
「わたしも引き離すことは考えました。ですがセイル殿下もこの問題だけは強情でいらっしゃって」
「確かに幼馴染として、とても大事にしていたからな。引き裂けばやはり恨まれるだろうか?」
「例え恨まれたとしても、やらなければならないでしょう。この問題は放置しておけば、絶対にセイル殿下の身を危うくするでしょうから」
「事情も説明せずに引き裂けば、おそらく恨まれるだろう。だが、できるならセイルには詳しくは言いたくない」
「そうですね。今となっては王家の禁句ですから」
事の起こりを話さなければ、何故彼女を近付けてはいけないのか、おそらく優哉には理解できない。
しかしその話をすることそのものを現在は禁じられている。
アルバート・ヘイゼル卿は王家の呪いとまで言われているのだ。
呪われた過去を掘り返すことを周囲は認めない。
何故なら王家の血筋に関わってくるからだ。
セイルの最初で最後の我儘は、王家の秘密に関わってくる。
だから、この問題だけはセイルの我儘を認められない。
例え彼女と引き裂くことで恨まれても憎まれても。
「第二王子とヘイゼル卿の末裔が関わるなんて、これもヘイゼル卿の呪いだろうか」
「ある意味でそうかもしれませんね」
苦い口調で言った言葉を肯定され、ジェイクは深々とため息をついた。
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