カウント
ツヨシ
第1話
山の細道を歩いていた時のことだ。
突然聞こえた。
「五」
若い女の声で、すぐ近くで聞こえたのだ。
驚き慌てふためき、必死の目で周りを見た。
しかし女どころか誰一人いない。
気のせいかと思い直し歩いていると、また聞こえた。
「四」
はっきりと同じ声で。
立ち止まり、再び周りを何度も見る。
しかし誰もいない。
戸惑いつつも歩き出すと、しばらくしてまた聞こえた。
「三」
もう一度狂ったように周りを見たが、やはり誰もいない。
近くの木の影から言ったのかとも思ったが、声はすぐ近く、耳元で聞こえたのだ。
――こんな道、さっさと通り過ぎてしまおう。
俺はそう考え、歩みは自然と早くなった。
そこで聞こえてきた。
「二」
俺は周りを見わたすこともなく、走り出した。
息が上がり、喘ぎだしたところに女の声が聞こえた。
「一」
俺は立ち止まった。
そして考えた。
次は間違いなくゼロだ。
そして女がゼロと言った時、一体何が起きると言うのか。
そう考えると背筋が思わずぞわっとした。
俺は今来た道を引き返した。
するとそれ以降はなにも聞こえなくなった。
終
カウント ツヨシ @kunkunkonkon
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